研究課題/領域番号 |
21H01886
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分32010:基礎物理化学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
渡邊 一也 京都大学, 理学研究科, 教授 (30300718)
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研究分担者 |
安池 智一 放送大学, 教養学部, 教授 (10419856)
奥山 弘 京都大学, 理学研究科, 准教授 (60312253)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2023年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2021年度: 7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
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キーワード | ポラリトン / 表面分光 / 時間分解分光 / 局在プラズモン / 強結合 / グラフェン / 銀 / インジウム |
研究開始時の研究の概要 |
輻射場と分子の電子励起状態が強く結合した状態を実現することで,分子の電子励起状態ダイナミクスを系統的に変調する新しい学理を構築する.特に,表面科学的分析手法と超高速分光を併用し,超高真空下の微視的構造がよく規定された表面で二次元物質と金属薄膜の複合による新規な多極子表面プラズモン場を構築し,そこに光機能性有機分子を配置することで,強結合状態形成の微視的機構とその励起状態ダイナミクスに与える影響を明らかにする.
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研究実績の概要 |
今年度は以下の点について成果を挙げた. 1)グラフェン上に担持した銀ナノ粒子の局在プラズモンとフラーレン分子の強結合観測 前年度までに確立した超高真空下の銀ナノ粒子作製と近紫外域プラズモン共鳴の観測に対して,種々の有機分子(テトラセン,フラーレン,ポルフィセン)の共吸着による光学応答の変化を調べた.走査トンネル顕微鏡による実空間観測により,銀粒子はグラフェンの欠陥サイトにトラップされて成長することがわかった.また,特にフラーレンを吸着させた場合のスペクトル変化について,新たに成分分解を試みることで,主に4つの成分にピーク分裂していることを見出した.フラーレンの3つの電子遷移と銀の局在プラズモンの結合を考慮したモデルハミルトニアンによる解析を行い,フラーレンの蒸着量の増加に伴う,ポラリトン状態のエネルギー変化を理論予測し,実験で得られたスペクトル変化を良く説明できることを示した.これらの成果を論文としてまとめ,現在英文学術誌に投稿中である. 2)インジウムナノ粒子のプラズモン応答と強結合 超高真空下で真空紫外領域の光学反射スペクトル計測を行うシステムを新たに構築し,これを用いてロジウム単結晶表面に作成した高品質グラフェン上にインジウムを蒸着し,形成されたナノ粒子による局在プラズモン応答を観測した.7eV付近に強い吸収を示す応答が得られ,時間依存密度汎関数法による計算と比較することで,インジウム粒子の局在プラズモン応答であると結論した.走査トンネル顕微鏡による観測で,インジウム粒子はグラフェンのモアレ構造が乱れたひずみの多い領域にトラップされていることがわかった.また,作製したインジウム粒子に,ベンゼンや水分子を共吸着させることによる光学応答の変化を観測し,分子と局在プラズモンの遷移双極子間の結合を考慮したモデル計算によりよく説明できることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
近紫外領域および真空紫外領域において,超高真空下でプラズモン-分子の強結合を実現する新たな系を見出しており,順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,今年度新たに見出した,グラフェンと強く結合する遷移金属原子を種として先に蒸着させ,その周囲に目的のインジウムや銀などを追加で吸着させることで,グラフェンのテラスに均一に分布したクラスターを作製する技術を確立する.また,新たに赤外振動分光測定を行うことで,超強結合条件下にある分子の基底状態のポテンシャル変調の検出を目指す.
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