研究課題/領域番号 |
21H01926
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分33020:有機合成化学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
久保田 浩司 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (60824828)
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研究分担者 |
SIDOROV PAVEL 北海道大学, 化学反応創成研究拠点, 准教授 (30867619)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2021年度: 9,880千円 (直接経費: 7,600千円、間接経費: 2,280千円)
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キーワード | メカノケミストリー / クロスカップリング / 固体反応 / ボールミル / データ科学 / メカノケミカル合成 / ナノグラフェン / 不溶性化合物 |
研究開始時の研究の概要 |
現代の有機合成化学では、基質を溶解させて合成反応を実施する必要があるため、必然的に適用可能な基質は、溶解性の良い単純な構造の分子群に限られてきた。しかし、近年求められている最先端有機機能性材料、発光材料や電子・ホール輸送材料の多くは、大きなπ共役骨格を有するものが多く、出発原料や合成中間体の低い溶解性がその開発を妨げてきた。本研究では、本研究代表者らが独自に開発した固体クロスカップリング反応と「加熱ボールミル法」を駆使することで、「溶解性問題」という100年近く続いた有機合成化学のボトルネックを解決する革新的な固体有機合成化学の確立を目指す。
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研究実績の概要 |
従来の有機合成では、有機溶媒を用いて溶液の状態で行うことが一般的である。しかし、この方法では溶媒に溶けない化合物は原理的に扱うことができない。本研究では、不溶性化合物は有機反応に用いることができない、という有機合成化学のボトルネックを解決する革新的固体有機合成を確立し、未踏のケミカルスペースを切り拓くことを目的とする。具体的には、ボールミルという粉砕機を用いるメカノケミカル法を活用することで、様々な不溶性基質の固体有機化学反応を検討する。研究期間の二年目にあたる本年度では、固体状態で進行するパラジウム触媒を用いたホウ素化反応(Beilstein J. Org. Chem. 2022, 18, 855.)、有機カルシウム試薬のメカノケミカル合成とクロスカップリングへの応用(Angew. Chem. Int. Ed. 2022, 61, e202207118.)、有機マンガン試薬のメカノケミカル合成と有機合成反応への応用(Chem. Sci. 2023, 14, 499.)、固体状態で進行する開環型フッ素化(Synlett 2023, Just Accepted.)、ポリマー添加による固体クロスカップリングの加速効果の発見(Faraday Discuss. 2023, 241, 104.)および固体クロスカップリング反応に特化したオリジナル触媒の開発に成功した(J. Am. Chem. Soc 2022, 13, 430.)。これらの反応は、幅広い固体基質に適用可能であり、特に難溶性化合物との反応も効率良く進行した。今後は、これらの反応を活用およびさらなる新反応を開発することで、溶液系では合成できない新しい機能性材料の合成へと展開していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題の目的である不溶性化合物の自在分子変換の達成に向けて、その基盤となる反応開発に成功したため。1. Beilstein J. Org. Chem. 2022, 18, 855.; 2. Angew. Chem. Int. Ed. 2022, 61, e202207118.; 3. Chem. Sci. 2023, 14, 499.; 4. Synlett 2023, Just Accepted.; 5.Faraday Discuss. 2023, 241, 104.; 6. J. Am. Chem. Soc 2022, 13, 430.)
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今後の研究の推進方策 |
本年度の成果に引き続き、メカノケミカル合成法を駆使した固体反応開発を推し進める。特に、メカノケミカル反応において高活性を示す「メカノ専用金属触媒」の開発に成功したため、その配位子ライブラリーを構築することで、多数の有用な有機合成反応を、有機溶媒を用いない環境調和型物質生産プロセスへと転換させることを中心に検討する。初めてのメカノ専用触媒は、ビアリールタイプのホスフィン配位子にポリマー鎖を導入していた。そこで他のホスフィン配位子、例えばトリアルキルホスフィン配位子への拡充を行う予定である。電子豊富で嵩高いトリアルキルホスフィン配位子は、遷移金属触媒を用いたクロスカップリング反応において非常に有効であり、反応性の低い基質に対しても反応を行うことができる。特にパラジウム触媒を用いたCNクロスカップリングを、メカノ専用トリアルキルホスフィン配位子を用いて行うことができれば、有機材料に含まれる有用な機能性材料化合物を、環境負荷を抑えて効率よく合成することが可能になる。また、NHC配位子は強い電子供与能を有しており、ホスフィン配位子よりも強く金属種に配位することが知られている。特に、NHC配位子はニッケル触媒系と相性がよく、パラジウム触媒を用いた反応では実現が難しい、炭素-酸素結合の開裂反応に対して高活性を示すことが知られている。この炭素-酸素結合の開裂反応は、リグニンの分解に応用される重要な反応である。PEG鎖を有するNHC配位子を用いたメカノ専用ニッケル触媒系を構築することで、バイオマス資源のメカノケミカル分解反応の開発を検討する。
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