研究課題/領域番号 |
21H01944
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分33020:有機合成化学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
垣内 史敏 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (70252591)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2022年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2021年度: 7,410千円 (直接経費: 5,700千円、間接経費: 1,710千円)
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キーワード | ロジウム触媒 / キノリノラト配位子 / 末端アルキン / Fischer型カルベン / 炭素-炭素結合生成 / キノリノラトロジウム触媒 / アミノカルベン錯体 / ビニリデン錯体 |
研究開始時の研究の概要 |
末端アルキンと求核剤としてアミンやアルコールを用いるカップリングによりFischer型ロジウムカルベン錯体を発生させ、それらが他のアルキンやアルケンなどと反応することで、新形式の炭素-炭素結合生成が進行する新合成手法を開発する。特に、複数のアルキンが関与するジエン類の選択的に合成する新手法の開発を行う。本反応において求核剤としてアミンを用いた場合には、ジエナミン構造を持つアミン類の新規合成法となる。一方、アルコールを用いた場合には対応するアルケニルエーテル類の合成することができる。本研究で開発を目指す反応は、電子豊富な共役ジエン構造を持つアミンならびにエーテルを合成する新規手法となり得る。
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研究実績の概要 |
末端アルキンと求核剤としてアミンやアルコールを用いるカップリングによりFischer型ロジウムカルベン錯体を発生させ、それらが他のアルキンやアルケンなどと反応することで、新形式の炭素-炭素結合生成が進行する新合成手法の開発を検討した。 【課題1】「末端アルキンと求核剤とのカップリング反応の開発」では、キノリノラトロジウム(1,5-シクロオクタジエン)錯体((Q)Rh(cod))とP(4-CF3C6H4)3を触媒に用いて末端アルキン2分子と第二級アミン1分子との反応で生成した共役ジエナミンを合成する手法を開発した。この反応では、DMA溶媒とCsFを用いることが反応を円滑に進行させるために有効であることを見出した。 【課題2】「末端アルキンと内部アルキン、求核剤とのカップリング反応の開発」では、課題1での知見を基にして、末端アルキンと内部アルキン、第二級アミンの3成分カップリングを効率的に進行させる触媒系の開発を検討した。その結果、(Q)Rh(cod)/P(4-CF3C6H4)3触媒存在下、DMSO中、DBUを添加剤に用いると、目的の反応が効率的に進行することを見出した。 【課題3】「1,n-ジインと求核剤との反応による環状エナミンの合成法の開発」では。末端アルキン部位と内部アルキン部位を分子内にもつ基質を使うことで、環状ジエナミン骨格をもつ化合物へと変換する手法を開発した。この反応では、ホスフィンを添加するのではなく、キノリノラート部位にホスフィンを導入した錯体を触媒に用いることで、カップリング反応が効率的かつ選択的に進行することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
末端アルキンと第二級アミンとの反応を検討していた際、末端アルキン2分子が第二級アミンとカップリングする反応が進行することを見出した。この反応では、末端アルキン1分子と第二級アミン1分子との反応が併発する可能性が高く、反応における生成物の選択性を向上させることが重要な因子であった。様々な反応条件を検討することで、((Q)Rh(cod))を触媒に用い、電子供与能があまり高くないP(4-CF3C6H4)3を添加剤に用いることで目的の反応の選択性を向上できることが明らかになった(課題1)。次に、異なる2種のアルキンと第二級アミンをカップリングさせる反応への展開を図った。課題1で適用した条件で反応を検討した場合、目的の3成分カップリング反応が選択性良く進行する場合と、選択性ならびに反応性が極端に低下する場合があった。反応の再現性が低い原因について研究期間を2022年9月まで延長することで、再現性良く進行する反応系の確立を目指した。反応の再現性が低下する原因についての検討で、反応条件下では途中で発生する鍵中間体の安定性が低いことが問題である可能性が考えられた。そのため、反応系の極性等を考慮した条件検討を多方面から行うことで、最終的には溶媒と塩基の種類を変更すると再現性良く目的の反応を進行させることが可能となった。さらに、その途上で得た知見を基にして、分子内の2つのアルキン部分と第二級アミンを反応させる系の開発も初期条件を確定することができた。当該年度の目的を達成したものの、その時期が半年程度遅くなったことから、研究計画の進捗がやや遅れている考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに見出した知見を活用することで、課題内容のすべてを達成できていない【課題2】「末端アルキンと内部アルキン、求核剤とのカップリング反応の開発」において、内部アルキンに代えてアルケンを用いる反応を検討し、多様な様式のエナミンを中性条件下、入手容易な化合物を用いて達成する手法への展開を図る。【課題3】「1,n-ジインと求核剤との反応による環状エナミンの合成法の開発」においては、両方のアルキン部位が末端アルキンであるジインへと展開することで、ジアミノカルベン種を発生させ、これらカルベン同士のカップリング反応を進行させることで、環状構造を持つエンジアミン類を簡便に合成する手法の開発を目指す。さらに、新しい課題として【課題4】「末端アルキン、1,n-ジイン、求核剤との反応によるシクロペンタジエン類合成法の開発」の検討に着手する。これまでの検討により、末端アルキンと第二級アミンとの反応で触媒的にアミノカルベン錯体を発生させることができた。子の化学種をジインで捕捉することで二環式構造を持つシクロペンタジエニルアミン類の合成法を開発する。 これまでの検討課題のうち、三成分カップリング反応に関わる課題の最終評価を行う中で、除去が困難な副生成物が生成と生成物のジエンアミンの安定性が低いことが判明した。そのため、計画を見直し、三成分カップリング反応条件の検討をやり直して実施する計画を追加することにした。さらに、加水分解を抑制できる条件で三成分カップリング生成物を単離できる方法の探索を追加して実施する計画である。 これらの検討を通して、これまでほとんど研究が行わなれていなかったために、基本的な性質や反応性が不明であるキノリノラトロジウム錯体についての知見を集積する。その後、それら情報を基にして、既存の錯体では達成が困難な分子変換を含む有機合成手法の開発を目指す。
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