研究課題/領域番号 |
21H01962
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34020:分析化学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
間 久直 大阪大学, 大学院工学研究科, 准教授 (70437375)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2022年度: 6,630千円 (直接経費: 5,100千円、間接経費: 1,530千円)
2021年度: 8,060千円 (直接経費: 6,200千円、間接経費: 1,860千円)
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キーワード | 単一細胞解析 / 薬剤 / 質量分析イメージング / レーザー脱離エレクトロスプレーイオン化 / ナノ粒子 |
研究開始時の研究の概要 |
レーザーイオン化を用いた質量分析イメージングは様々な分子の分布画像を非染色で同時に測定できる技術であり、創薬などへの応用が期待されているが、空間分解能が10~100 μmで細胞スケールでの観察は困難であった。レーザーの集光径を1 μm以下に小さくすると共に、気化させた試料にエレクトロスプレーで電荷を付与することで検出感度を数桁向上させ、医薬品業界における新薬や新規投薬デバイス開発の高効率化を狙う。
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研究実績の概要 |
医学や生物学などにおいて、従来の生体組織単位で平均化された解析では知ることができなかった現象を調べる手法として「単一細胞解析(single-cell analysis)」の重要性が示されている。レーザーイオン化を用いた質量分析イメージング (mass spectrometry imaging; MSI) は生体内の様々な分子の分布画像を非染色で同時に測定できる技術であり、創薬などへの応用が期待されているが、空間分解能が10~100 μmであることから細胞スケールでの観察は困難であった。研究代表者はこれまでにMSIにおけるレーザー光学系を改良し、大気圧下のがん細胞内における色素の分布画像を空間分解能1 μmで得ることに成功した。本研究課題の目的は、大気圧下でのレーザー照射により気化させた試料にエレクトロスプレーで電荷を付与することで検出感度を数桁向上させ、医薬品業界における新薬や新規投薬デバイス開発を高効率化することである。 令和3年度は、レーザーで気化させた試料にエレクトロスプレーで電荷を付与することができるイオン化システムを設計・製作した。質量分析計には、これまでの研究で使用しており、タンデム質量分析(MS/MS)を行うこともできる、四重極-飛行時間型質量分析計(Q-Tof Ultima API, Micromass, UK)を使用した。その結果、薬剤として用いられているカフェイン、およびベラパミルのイオンを安定して検出することに成功した。 令和4年度は、同システムを用いてカフェインのMSIを行い、光学顕微鏡画像と一致するカフェインの分布画像をピクセルサイズ40 μmで、かつマトリックスを用いず得ることに成功した。 令和5年度は、同システムによる検出感度の更なる向上と、それに伴う空間分解能の向上を目指した改良を行い、細胞スケールでのMSIを試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおり、大気圧下でレーザー照射を行うことで気化させた試料にエレクトロスプレーで電荷を付与することができるイオン化システムを設計・製作した。質量分析計には、これまでの研究で使用しており、MS/MSを行うこともできる、四重極-飛行時間型質量分析計(Q-Tof Ultima API, Micromass, UK)を使用した。その結果、薬剤として用いられているカフェイン、およびベラパミルのイオンを安定して検出することに成功し、ピクセルサイズ40 μm、かつマトリックスを用いないMSIも実現した。さらに、上記イオン化システム内におけるイオン輸送部の温度を変更することで検出感度が向上することを明らかにし、ピクセルサイズ30 μmでも安定してイオンを検出することに成功した。 検出感度を更に高めるためにナノ粒子を用いたイオン化についても検討を行った。飛行時間型質量分析計(Voyager-DE PRO, Applied Biosystems, USA)を使用して測定を行った結果、酸化チタンのナノ粒子を用いることで薬剤分子プロトポルフィリンIXのイオン信号強度を9倍に高めることに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画どおり、令和5年度は検出感度の更なる向上と、それに伴う空間分解能の向上を目指した改良を行い、人工的なパターンのイメージングを安定して行えるようになった段階で、生体組織切片や、がん細胞を用いたイメージング実験を行う。 紫外レーザーを用いると1 μm以下の焦点を得ることも容易なため、サブミクロンの空間分解能を得ることも可能と考えられるが、高分子のイオン化に従来用いられてきた有機マトリックスの結晶が数 μm以上になることが空間分解能を制限している。一方、波長3 μm帯の赤外線は回折による制約から焦点を約3 μmより小さくすることが困難であるが、マトリックスを添加しなくても水分子などの分子振動に共鳴した吸収を利用して細胞などの試料をイオン化させることが可能なため、マトリックスによる空間分解能の低下を避けることができる。研究代表者は波長2.94 μmで繰り返し周波数1 kHz、パルス幅100 nsの受動Qスイッチ型Er:YAGレーザーを独自に開発しているため、赤外レーザーとエレクトロスプレーのみを用い、マトリックスやナノ粒子を用いないMSI技術の開発も行う。
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