研究課題/領域番号 |
21H01966
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34020:分析化学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
加地 範匡 九州大学, 工学研究院, 教授 (90402479)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2021年度: 8,580千円 (直接経費: 6,600千円、間接経費: 1,980千円)
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キーワード | 細胞 / 細胞核 / マイクロ流体デバイス / 変形能 / マイクロ流路 / 単一細胞 / 単一細胞核 / バイオ分析 / 細胞変形能 / 細胞核変形能 / 単一細胞分析 / 単一細胞核分析 |
研究開始時の研究の概要 |
細胞の機械的性質を単一細胞レベルで評価した研究は数多く報告されているが、測定精度とスループットの間に大きなトレードオフが存在し、両者を満たす決定的な手法は未だに開発されていない。本研究では、申請者らがこれまで開発してきた非標識・非破壊で細胞の性質をモニターできる細胞変形能計測法を拡張し、細胞全体の変形能と細胞核の変形能を単一細胞レベルかつ細胞が生きた状態(再回収して再培養できる状態)でハイスループットに計測できる分析方法論の開発を行う。
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研究実績の概要 |
細胞の機械的性質を単一細胞レベルで評価した研究は数多く報告されているが、測定精度とスループットの間に大きなトレードオフが存在し、両者を満たす決定的な手法は未だに開発されていない。そこで本研究では、申請者らがこれまで開発してきた非標識・非破壊で細胞の性質をモニターできる細胞変形能計測法を拡張し、細胞全体の変形能と細胞核の変形能を単一細胞レベルかつ細胞が生きた状態(再回収して再培養できる状態)でハイスループットに計測できる分析方法論の開発を目指した。 本年度は、昨年度から引き続いてインタクトな核を抽出・精製する方法の最適化を行うとともに、現手法が物理的な力により細胞に変形が生じると同時に、細胞表面とマイクロ流路壁面との間で生じる化学的摩擦力が生じていると仮定し、マイクロ流路の壁面にシランカップリング剤を経由してメルカプト基・アミノ基・ペプチド鎖を付与することで、細胞の物理・機械的変形能のみでなく、化学的相互作用の測定も視野に入れて開発を行った。さらに細胞表面とマイクロ流路壁面との特異的な相互作用を観察するために、狭窄流路の両側にバイパス流路を設け、そこに細胞表面認識抗体を混合した光硬化性ハイドロゲルを導入することで、細胞が狭窄流路を通過する際の抗原・抗体反応をモニターできるシステムの開発も行った。その結果、それぞれの官能基が十分量導入されていることを確認し、修飾後のマイクロ流路に細胞を導入したところ、通過時間に差異が認められたため、細胞の物理的・機械的強度以外にも化学的表面相互作用の影響を考慮する必要があることを実証できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞核抽出法は、界面活性剤を用いた方法と浸透圧を利用した方法を並行して検討することで、それぞれ最適化に成功した。それぞれの方法で抽出した細胞核溶液は最終的な溶媒組成が異なるため、抽出後に使用する細胞変形能測定方法(イオン電流計測もしくは直接観察など)に応じて使い分ける予定である。また、PDMS性マイクロ流路壁面の化学的修飾に関しては、シランカップリング剤を用いてメルカプト基・アミノ基・ペプチド鎖を導入する試みを行い、接触角測定、XPE、FT-IRを用いて官能基導入のための反応条件最適化を行った。その結果、それぞれの官能基が十分量導入されていることを確認し、修飾後のマイクロ流路に細胞を導入したところ、通過時間に差異が認められたため、細胞の物理的・機械的強度以外にも化学的表面相互作用の影響を考慮する必要があることを実証できた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、細胞老化と多能性の相関にフォーカスし、細胞老化マーカーである炎症性サイトカイン(NF-α、IL-1、IL-6など)と多能性マーカーである細胞膜上の糖鎖(SSEA-1、SSEA-4など)の発現をモニターしながら細胞・細胞核変形能を測定し、非標識・非破壊の幹細胞品質評価につなげる。また、多能性を有するがん細胞が、腫瘍において時空間的にどのように形成されるかを明らかにするため、HT29培養細胞の時空間情報をアサインできる状態で細胞・細胞核変形能、さらにはその生化学的解析も行い、細胞・細胞核変形能計測の方法論確立のみならず、がんの病態生理学分野に新しい知見をもたらすことを目指す予定である。 これら細胞の変形能、細胞核の変形能、さらには単離した細胞核の弾性率測定から得られたデータをもとに、細胞の高分子物理モデルを構築し、細胞の機械的特性と病態などとの相関を、実験・理論の両面から包括的な理解を目指す。粘弾性の代表的モデルであるマックスウェルモデルを用い、細胞が外部力場のない環境でのモデル化を行った後、流体解析シミュレーション(学内共同利用が可能なANSYSを使用予定)にパラメータを入れ込み、流れ場における細胞変形の定量的解析を行う。
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