研究課題
基盤研究(B)
新型コロナウイルスの迅速な診断のため、本研究ではPCR産物の迅速な検出のための新規なDNA補足チップの構築を目指す。DNAの固定化には環状ナフタレンジイミド(cNDI)、DNA検出にはフェロセン化ナフタレンジイミドを用いる。PCR産物の検出のため、cNDIと二本鎖DNAとの相互作用解析と、電気化学的PCR産物検出のための条件の最適化を行う。RNAの逆転写反応を含め60分以内で検出することを目指す。
本研究の目的は、cNDI固定化電極によるPCR産物検出チップの創成である。アミノ化cNDIは金表面に修飾したジチオプロピオン酸と縮合することでcNDI固定化チップを作成する。DNAとcNDIとの結合速度は、他のcNDI誘導体の速度論解析結果から数秒だと思われるため、cNDI固定化チップにPCR産物を振りかけると、わずか1分後にはDNAがチップ上に捕捉される。DNAとcNDIはカテナン構造で結合していると予想している。DNAの「呼吸」は、25°Cでは1.4 sに1回起こるが、cNDIが結合するとこの呼吸は抑制される。cNDIは数塩基置きにDNAに結合するため、電極には複数のcNDIでDNAを固定化していると考えている。このため、一部のcNDI-DNAカテナン構造が解離しても、ほかの部分でDNAは固定化されていると考えているが、これらのダイナミクスを解析できれば、薬剤等への応用が期待できる。また、DNAの「呼吸」を利用したDNA検出システムの例はなく、独創性が高い研究概念である。令和4年度は以下の研究を遂行した。1) cNDI-gluとして、cNDI-pip-gluを合成した。2) 電気化学測定において、cNDI-pip-gluがDNAを固定化すること、2本鎖および1本鎖オリゴヌクレオチドを用いて、その定量性を明らかにした。3) 120塩基対のPCR産物を用いて、濃度依存性を確認したところ、 0.1-20 ng/μLで定量的に変化した。4) コロナウイルス検出キットによりRNAより逆転写したサンプルを調整した。PCR10サイクルの産物で、100RNAコピー以上で電流増加が観察された。
2: おおむね順調に進展している
PCR産物の検出および逆転写産物の検出まで達成できたため。
1) 電気化学検出の精度向上のため、電解液の組成検討を行う。2) PCR産物のサイクル数依存性を評価する。3) cNDI-DNAカテナンプローブ固定化電極で、ハイブリダイゼーションアッセイへの応用を検討する。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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