研究課題/領域番号 |
21H01969
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34020:分析化学関連
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
由井 宏治 東京理科大学, 理学部第一部化学科, 教授 (20313017)
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研究分担者 |
浦島 周平 東京理科大学, 研究推進機構総合研究院, 講師 (30733224)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2021年度: 9,750千円 (直接経費: 7,500千円、間接経費: 2,250千円)
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キーワード | 泡膜 / レイリー散乱 / ラマン散乱 / 粘弾性 / イメージング / 光散乱 / 黒膜 / 顕微鏡 / レオロジー / 動的光散乱 / 単一泡膜 / 局所粘弾性 |
研究開始時の研究の概要 |
泡膜の安定性の起源を、マクロな機械的物性である粘弾性と、ミクロな分子間相互作用を相関づけながら明らかにする。この目的を達成するため、同一点からの弾性・非弾性レーザー散乱光を計測し、イメージングできる装置を開発する。泡膜1枚内における局所粘弾性の不均一な空間分布とその時間発展,さらにその起源となる分子間力を計測分析する。これらの計測・相関解析を通じて、薄膜化した泡膜の構造安定性や最終的な崩壊挙動の支配要因を,分子レベルから実証的かつ定量的に明らかにする。
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研究実績の概要 |
今年度は、泡膜の中での目的空間箇所における粘弾性の時間変化を追跡できるレーザー光散乱顕微計測装置の開発に注力した。顕微鏡下で空間分解的に泡膜を計測し、かつ目的の空間点からの光散乱信号の時間波形を追跡できると、その場所での(局所)粘弾性を見積もることができる。これが実現すると、空間的に不均一、かつ時々刻々変化する泡膜の粘弾性物性変化がリアルタイムで追跡できるようになり、泡膜の安定性制御に直結する粘弾性情報を時空間分解的に得られるようになる。 当初、泡膜からのある特定角度への反射散乱光のみを検出していたが、本来、減衰振動が期待される時間波形信号が検出できず、得られた時間波形信号にフーリエ変換を施しても、特徴的な振動周波数を検知することができなかった。そこで、励起・検波方式を改め、顕微鏡の下側から、光散乱発生用の励起光を泡膜に対して垂直に入射し、顕微鏡の上側から、ある特定角度に反射する参照光を入れ、散乱光と参照光の2つの光のヘテロダイン干渉光の時間変化を追跡できる光学系に切り替えた。 その結果、まだ光学的に厚い干渉色を放つ泡膜、徐々に黒膜化していく過程、黒膜状態で破泡するまでの間のいずれのステージにおいても、粘弾性評価に必要な光干渉信号の時間応答波形を取得することに成功した。とりわけ、ナノメートルスケールで極めて薄く、不安定な黒膜時の減衰振動波形をリアルタイムで捉えることに成功した。 この結果により、これまで空気・水界面での界面張力や粘性、すなわち流体力学の観点からしか推測できなかった泡膜物性の粘弾性に対し、脂質膜のパッキングや流動が抑えられ、内部の水の流動がほぼほぼ抑えられた、黒膜化した泡膜の弾性体(固体)としての弾性率(曲げ弾性)の時間変化を推定できる道筋が出来上がったといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光散乱発生用の主ビーム(励起光)と、目的の散乱光(信号)を増幅検波できる副ビーム(参照光)を分けて、光学顕微鏡下で、泡膜の分析目的箇所に集光照射し、副ビームと散乱信号光とのヘテロダイン干渉光を計測分析した結果、減衰振動する泡膜のダイナミクスをリアルタイムで捉えることに成功した。減衰振動の様子から、黒膜の粘弾性を時空間分解で推定できる道筋が開かれた。
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今後の研究の推進方策 |
顕微鏡下における、泡膜からの光散乱計測によるリアルタイム粘弾性計測ができるようになったので、次年度は、粘弾性が生み出される泡膜内での分子密度やパッキング様式との結びつきの探査を目的とする。このために、同一顕微鏡下でのブリルアン散乱分光とラマン散乱分光を実現する。この目的達成のために、先に導入した励起用の主ビームについて、泡膜透過後にラマン散乱用のエッジフィルターで分離し、反射レイリー散乱光のウイングとして含まれるブリルアン散乱と、透過してきたラマン散乱光を同時に分光検出し、粘弾性の時間変化(物性発現)と、分子密度やパッキング様式の変化(構造起源)を結び付けた理解・制御を目指す。
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