研究課題/領域番号 |
21H01973
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34030:グリーンサステイナブルケミストリーおよび環境化学関連
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研究機関 | 東京大学 (2022-2023) 北海道大学 (2021) |
研究代表者 |
小林 広和 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (30545968)
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研究分担者 |
福岡 淳 北海道大学, 触媒科学研究所, 教授 (80189927)
佐川 拓矢 東京理科大学, 工学部工業化学科, 助教 (90829582)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2022年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2021年度: 7,410千円 (直接経費: 5,700千円、間接経費: 1,710千円)
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キーワード | キチン / 含窒素バイオマス / 触媒 / ポリマー / バイオマス / 活性炭 / 有機窒素化合物 |
研究開始時の研究の概要 |
年間推定発生量1000億トンという極めて豊富な海洋バイオマスであるキチンを原料に用いることにより、ハーバー・ボッシュ法に依存しない窒素循環を可能とする新たなバイオリファイナリーを構築する。そのために、まずキチンを分解して単量体であるN-アセチルグルコサミンを効率的に合成できる触媒反応を開発する。次に、N-アセチルグルコサミンを高付加価値かつ需要が大きい有機窒素化合物へと転換する反応経路を提案するとともに、それを実現する触媒反応を開発する。本研究を通じて、窒素を含む糖化合物の反応を制御する学術を構築する。
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研究実績の概要 |
ボールミル処理の機械的な力の存在下、含酸素官能基を有する炭素によってキチンを課す分解できることを見出している。本反応ではキチンオリゴ糖が収率66%、選択率>90%で得られ、しかも3~4量体に収率のピークを持つことが分かった。一方で、一般的な液体酸を用いた溶液系での加水分解反応では、キチンオリゴ糖はごく低収率に留まり、しかもNAGから分子量が上がるにつれて単調減少する。そこで、加水分解のモンテカルロシミュレーションプログラムを自作して検討したところ、キチンの分子量に関係なく、すべてのグリコシド結合が同程度の確率で切断されることが分かった。したがって、例えばグリコシド結合を1つだけ持つ2量体に比べて、グリコシド結合を9つ持つ10量体は9倍速く加水分解されることになる。これがキチンオリゴ糖が高収率で蓄積する理由である。このような反応が可能になるのは、炭素が大きなキチン分子を容易に吸着できることと、機械的な力が大きいキチン分子にも均等にかかることが原因であると考えた。また、ここで得られたキチンオリゴ糖は単なる中間体ではなく、植物の免疫を活性化するエリシターとして有効であることが分かってきた。 キチン加水分解物であるNAGから有用な化合物を合成するための中間体として、2-アセトアミド-2-デオキシイソソルビド(ADI)を提案している。ADIの変換反応を検討するためには多量のADIの供給が必要であるが、現在のところNAGからADIをグラムスケールで得ることは容易でない。そこで、市販の試薬であるイソマンニドから3段の変換反応を経て、ADIのフリーアミン体をグラムスケールで合成する方法を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
活性炭触媒によってキチンオリゴ糖を高選択率・高収率で合成できることを示し、そしてその生成物分布について理解を与えることができた。しかも、その生成物に重要な用途があることも分かった。本研究はAngew. Chem.誌でVery Important Paperに選出され、表紙に採択された。さらに、複数社の新聞にも掲載され、重要性を理解してもらえたと考えている。 また、キチン由来化学品を合成するために報告者らが提案している中間体ADIを簡便かつ多量に合成する方法を確立した。これによって、ADIを利用した研究が大幅に進めやすくなった。
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今後の研究の推進方策 |
NAGからADIを合成する場合、中間体である2-アセトアミド-2-デオキシソルビトール(ADS)の脱水反応によってADIを得る反応の収率が低い。そこで、本反応を効率的に促進できる新触媒開発を行う。報告者らは、亜リン酸を触媒に用いるとエステル中間体を経た新反応経路によって脱水反応を実現できることを見出しており、この知見を応用する。 また、ADIやそのフリーアミン体を合成し、そこから各種化学変換を行い、ポリマーなどの有用な化学品合成を目指す。特に、ADIは5員環が縮合した剛直な構造を持つため、その特異性に由来した物性発現を期待する。
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