研究課題/領域番号 |
21H02021
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分35030:有機機能材料関連
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
吉尾 正史 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 高分子・バイオ材料研究センター, グループリーダー (60345098)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2021年度: 8,710千円 (直接経費: 6,700千円、間接経費: 2,010千円)
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キーワード | ソフトアクチュエータ / 液晶 / イオン伝導 / ナノチャンネル / 相分離 / イオン液体 / リチウムイオン / アクチュエータ / ナノ相分離 / 触覚 / ソフトロボット / 電子伝導体 / イオン伝導体 / 液晶高分子 / カラムナー液晶 |
研究開始時の研究の概要 |
高齢化社会、リモート社会を支えるキーテクノロジーとして、仮想空間のモノをあたかも触っているかのような感覚を生み出せるゴム手袋のように柔らかく、軽く、低電力で駆動する触覚伝達デバイスの開発が求められている。本研究では、イオンを高速に流すチャンネル構造と強靭な機械的特性を併せ持った新しい液晶材料を活用して、1Vの低電圧で100Hzの振動を示すソフトアクチュエータの開発に関する研究を行う。パターン化された複数の液晶アクチュエータ素子を独立に振動させる電子回路設計を行い、Society5.0に資するバーチャル空間と実空間を繋ぐソフト触力覚デバイスの創成を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、液晶とイオンの自己組織化を用いて、触覚デバイス等への応用を指向した高速変形と強靭さを両立した低電圧駆動のイオン伝導型高分子アクチュエータを構築することである。以下の新材料開発に成功した。
1)リチウムイオン伝導性低分子液晶を用いるアクチュエータの開発:双性イオン基を有する棒状化合物とリチウム塩との複合化により、室温で10-3 S/cmの高リチウムイオン伝導性を示す層状スメクチック液晶電解質を開発した。2枚の導電性高分子フィルムの間にこの液晶電解質を挟んだシンプルなアクチュエータ素子を作製し、2 V電圧で30 Hz高速振動を達成した。 2)低分子液晶/高分子コンポジットアクチュエータの構築:双性イオン基を有する棒状化合物と非プロトン性イオン液体との自己組織化により、三次元イオン伝導が可能なカラムナー液晶材料が得られた。この液晶電解質とポリビニルアルコールを複合化することにより、伸縮性を有するカラム構造を保持した革新的な高分子エラストマーを構築した。導電性高分子電極と液晶/高分子コンポジットエラストマーからなる三層構造のアクチュエータは、2 V電圧を印加することで高速振動(0.1秒で1 mm振幅)を示すことを明らかにした。さらに、鏡面アルミ蒸着フィルムとアクチュエータを積層することにより、光制御用フレキシブル鏡を世界に先駆けて構築した。 3)三次元伝導パスを有する光架橋液晶高分子アクチュエータの構築と触覚素子・ソフトロボット応用:光架橋性イオン液晶の設計により、高効率な三次元イオン伝導が可能な革新的フィルム電解質を開発した。これにより、超低電圧0.2 Vで駆動し、形状記憶機能を有する省エネルギー性アクチュエータの構築に成功した。電圧による精密な出力制御が可能な微小ピンセット、クラゲ運動を模倣したソフトロボット、プロトタイプの触覚素子を作製した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
21年度に報告した一次元イオン伝導性を示す光架橋液晶高分子電解質を用いたアクチュエータに関する研究を発展させて、三次元イオン伝導性を示す光架橋液晶高分子電解質や新たな概念の低分子液晶/高分子コンポジット電解質を開発することに成功した。三次元的に連結したイオン性ドメインでの高効率イオン伝導を実現することにより、アクチュエータの低電圧駆動化、高速変位、高振幅、高出力化が達成できることを示した。さらに、アクチュエータの新しい応用として、フレキシブル鏡、微小ピンセット、ソフトロボット、触覚素子を作製し、ソフトな有機ポリマーアクチュエータの利点を生かした新機能を実証できた。また、低分子液晶を用いたシンプルなアクチュエータを構築することに成功し、その駆動メカニズムを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
液晶電解質の秩序構造に基づく機械的安定性とイオン伝導パス形成による高速イオン輸送を融合することにより、低電圧駆動のソフトアクチュエータが構築できることを明らかにしてきた。触覚デバイスやソフトロボットへの応用に向けて、アクチュエータの周波数応答性および出力をさらに高めることが鍵であり、100Hz応答、10mNを目標値として設定する。さらに環境に配慮した材料設計を行うことも極めて重要と考えられる。これらの実現のために、次年度は、高イオン伝導性と高弾性を兼ね備えた材料として、液晶と高分子がミクロ相分離した高速リチウムイオン伝導性液晶/高分子コンポジット、キュービック液晶光架橋高分子膜の構築とアクチュエータ機能の解明を行う。さらに、生分解性液晶高分子電解質に基づく革新的アクチュエータの開発を推進する予定である。
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