研究課題/領域番号 |
21H02037
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分36020:エネルギー関連化学
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
伊藤 良一 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (90700170)
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研究分担者 |
辻口 拓也 金沢大学, 機械工学系, 准教授 (10510894)
高橋 康史 金沢大学, ナノ生命科学研究所, 特任教授 (90624841)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2022年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2021年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
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キーワード | カーボンニュートラル / 電気化学的二酸化炭素還元 / 気体フロー型セル / ギ酸 / 化成品 / 走行型電気化学顕微鏡 / 気体フロー電解セル / グラフェン / 合金 / メタノール / 電気化学的二酸化炭素固定化 / 電解合成 / 二酸化炭素 / 二酸化炭素還元 / 気体フロー型電解合成 / 触媒 / 走行型電気化学セル顕微鏡 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、二酸化炭素に対して高い吸着能力を持つ担体と高活性な金属触媒との複合体を作製することで効率的な電解合成を行える触媒開発とその普遍的な触媒反応メカニズムの解明を目指す。また、走査型電気化学セル顕微鏡を用いて幾何学構造(例えば担体と触媒の界面)と電気化学データを同時計測することで幾何学構造と電気化学データが実空間で対応付けを行い、第一原理計算と合わせて二酸化炭素吸着能力と反応中間体の挙動を理解する。更に、二酸化炭素の吸着能力が高い触媒を用いることで気体の二酸化炭素を直接原料として電解することが可能なフロー型電解合成セルの開発を行う。
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研究実績の概要 |
2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、再生可能エネルギー由来の電力を用いて電気化学的に二酸化炭素を還元し、メタン、メタノール、ギ酸などの有用な化成品やe-fuel(合成燃料)を製造する化学的固定化技術の開発が急務となっている。二酸化炭素の電気化学的還元による化成品電解合成プロセスの中で、化成品の選択合成を邪魔する代表的な副反応の一つである水素分子発生反応があり、ファラデー効率とエネルギー利用効率を著しく下げる副反応として問題視されている。これは、電気化学的に還元された二酸化炭素が触媒表面を占有しているのではなく、多くの水素が触媒表面に存在していることを意味している。本研究の2年目は、水素分子発生に関する副反応メカニズムを検証するために、水素分子発生能力が低いつまり触媒表面に水素吸着しないような触媒(二硫化錫カルコゲナイド)と水素を吸着しやすく水素分子発生が得意な触媒(二硫化モリブデンカルコゲナイド)を比較することで、触媒が持つ水素分子発生能力が電気化学的二酸化炭素還元に与える影響およびその触媒反応メカニズムの理解に重点を置いた。 3極式電気化学測定、走行型電気化学セル顕微鏡測定および第一原理計算結果から、二硫化錫カルコゲナイドは、エッジに触媒活性点が集中している二硫化モリブデンカルコゲナイドとは異なり、触媒表面全体を有効に使っていることが分かった。また、二硫化モリブデンカルコゲナイドのように水素分子発生能力が強すぎると水素分子発生が優先的に起こり、電気化学的二酸化炭素還元は選択的に起こらないことを実験的に明確にした。以上から、水素分子発生能力が低い触媒設計が電気化学的二酸化炭素還元における代表的な副反応の一つである水素分子発生を抑える鍵であることを実験的また理論的に実証することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3極式電気化学測定、走行型電気化学セル顕微鏡および第一原理計算を用いて、そもそも触媒が高い水素分子発生能力を持つと水素分子発生が優先的に起こり、電気化学的二酸化炭素還元は選択的に起こらないことを実験的にかつ理論的に明確にすることができた。このことから、触媒表面上に水素吸着量が少ないもしくは水素吸着力が低い方が化成品生成物の選択性が上がるという触媒設計指針が得られ、水素分子発生能力が低い触媒を中心に電気化学的二酸化炭素還元用触媒の探索を行えば効率的な探索アプローチになるということが分かったからである。本成果は、論文としてまとめ、現在投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の3年目は、高性能な触媒探索および気体フロー型セルの動作検証を重点的に行う予定である。本研究の2年目では、副反応の抑制についてのメカニズムの理解を深め、C1生成物の選択性を向上させる指針の獲得へ繋がった。この指針をC2生成物合成が得意とする触媒へ適応できれば、C2生成物合成の選択性を高められる触媒反応メカニズムへ応用することができる可能性があるため、様々なタイプの触媒を作製して効率的に化成品合成を実現する触媒探索研究を継続する予定である。この触媒探索と並行して、気体フロー型化成品電解合成セルの開発も継続する。1年目と2年目の研究において、二酸化炭素分子を吸着しやすい触媒の開発に成功しており、今後は開発した触媒を用いた気体フロー型化成品電解合成セルへ研究展開する。気体フロー型化成品電解合成セルは、燃料電池セルや水電解セルとは異なり、まだどのようなセル構成をすれば正しく動作するのかわかっていないことが多いため、一つ一つの要素を丁寧に検証する予定である。
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