研究課題/領域番号 |
21H02049
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分36020:エネルギー関連化学
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
立川 貴士 神戸大学, 分子フォトサイエンス研究センター, 教授 (20432437)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2023年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2022年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2021年度: 8,710千円 (直接経費: 6,700千円、間接経費: 2,010千円)
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キーワード | 光触媒 / 光水分解 / 過酸化水素 / 水素エネルギー / 太陽光利用 |
研究開始時の研究の概要 |
独自に開発した世界最高性能のメソ結晶光電極を用いて、高効率かつ高選択的な太陽光水分解を達成するための動作原理と材料設計指針を獲得する。特に、単一粒子レベルのオペランド顕微分光計測から、高効率電荷分離のための駆動力、光電流生成における極めて小さな活性化エネルギーの起源、水の酸化における酸素と過酸化水素の選択性を支配する局所構造と反応経路などを明らかにする。得られた知見を統合して、高効率かつ高選択的な水の酸化反応をつかさどる新しいサイエンスを見いだし、より高機能な光エネルギー変換系を合理設計するための知的基盤を提供する。
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研究実績の概要 |
光触媒作用による太陽光水分解は、化石燃料に頼らないクリーンな水素エネルギーや有用化成品の製造法として注目を集めている。本研究では、従来、過酸化水素の生成には適していなかったヘマタイトの表面をチタンとスズを含む複合酸化物で被覆することで、水素と過酸化水素を極めて高い効率と選択性で生成できることを見出してきた。当該年度は、複合酸化物の局所構造に関する知見を得ることを主たる目的とし、新たに構築した顕微ラマン分光システムを用いた分光測定を行った。ヘマタイトメソ結晶への異種金属ドーピングによって、構造の歪みを示唆する約660cm-1のピーク強度が増大することがわかった。焼成前後のラマンスペクトルを比較したところ、ドーパント偏析による構造歪みの解消を示唆する線形変化がみられたが、新たな複合酸化物に帰属されるラマン信号は検出されなかった。粉末X線回折測定や透過型電子顕微鏡観察の結果を踏まえると、以上の結果は複合酸化物の結晶性が低いことに起因していると考えられる。上記の構造解析に加え、光触媒反応の効率向上を目指し、機械学習を活用した組成探索を行った。その結果、これまで検討していなかった異種金属元素の組み合わせにおいてもオンセット電位などの光水分解特性が向上することがわかった。また、人為的ミスのリスクをより最小化するような実験プロトコールの構築が必要であることがわかった。その他、太陽光水素生成などに適用できる光機能性材料の合成および分光測定を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
幅広い波数領域で観測できる顕微ラマン分光システムを構築・適用し、異種金属ドープヘマタイトメソ結晶の局所構造変化に関する知見を得ることができた。しかし、目標のひとつであった複合酸化物の構造決定には至らず、装置のさらなる高感度化が必要であることがわかった。一方、高効率な光触媒材料の探索において機械学習の有効性が示されるなど、合成面での進展がみられた。以上より、本研究課題の進捗状況は、おおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
複合酸化物助触媒の詳細な構造解析と過酸化水素生成機構の解明に向け、顕微ラマンや赤外領域でのオペランド分光観測を行う。決定された構造に基づき第一原理計算を行うことで、水の酸化反応モデルの構築につなげる。
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