研究課題/領域番号 |
21H02062
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分37010:生体関連化学
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
三好 大輔 甲南大学, フロンティアサイエンス学部, 教授 (50388758)
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研究分担者 |
川内 敬子 甲南大学, フロンティアサイエンス学部, 准教授 (40434138)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2023年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2021年度: 7,930千円 (直接経費: 6,100千円、間接経費: 1,830千円)
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キーワード | 液液相分離 / 核酸 / ペプチド / 核小体 / 四重らせん構造 / ドロップレット / RNA / 天然変性タンパク質 |
研究開始時の研究の概要 |
核酸とタンパク質は細胞内で相分離してドロップレットを形成し、様々な生体反応を制御することが明らかになりつつある。本研究では、ドロップレットに環境応答性と形成可逆性をもたらす分子機構の解明を目指する。 そのために、オリゴ核酸とペプチドからなる相分離モデルシステムを構築する。これを用いて、分子環境や化学修飾に依存した核酸の構造―相分離能の相関を検討し、相分離が進行するために必須の因子を同定する。
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研究実績の概要 |
核酸とタンパク質は細胞内で相分離して多種多様なドロップレットを形成する。相分離の環境応答性と形成可逆性はドロップレットの生物学的役割の要であるが、その分子機構は未知である。本研究では、ドロップレットに環境応答性と形成可逆性をもたらす分子機構の解明を目指し、先行研究で注目されることのなかった核酸構造に着目してこの問いを化学的に解明することを試みる。 そのために、①相分離最小モデルシステムを構築する。次にこれを用いて、②分子環境と化学修飾に依存した核酸の構造―相分離能の相関(Structure-Phase separation Ability Relationship: SPAR)を検討し、核酸とペプチドの配列、構造、化学修飾、分子環境における相分離の必須因子を同定する。さらに、③相分離必須因子や核酸構造結合化合物を用いて相分離制御技術を構築する。 これまでに、上記①モデルシステムの構築については、オリゴ核酸とオリゴペプチドを混合するだけで相分離が誘起される世界最の小モデルシステムを構築した。②の核酸の構造―相分離能の相関については、グアニンに富んだ核酸鎖が形成する四重らせん構造が、この構造と選択的に結合するArgに富んだペプチド鎖との相分離を惹起することを発見した。引き続き、他の核酸構造についても検討すると同時に、化学修飾や細胞内環境因子と相分離能の相関について検討する予定である。③の相分離制御技術については、①のモデルシステム内で四重らせん構造を形成する相補鎖を添加することで、四重らせん構造を破壊することで、配列選択的に相分離を阻害、相分離によって形成されたドロップレットを破壊することができた。その阻害能・破壊の程度を、熱力学的に制御できることも見出した。今後は、低分子化合物など、他の方法を用いても相分離の阻害、ドロップレットの破壊を試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の目的である、①相分離最小モデルシステムを構築、②分子環境と化学修飾に依存した核酸の構造―相分離能の相関の解明と相分離の必須因子の同定、③相分離必須因子や核酸構造結合化合物を用いた相分離制御技術の構築において、それぞれ計画通りに研究が進展している。モデルシステムの構築と相分離制御技術については、発表論文掲載誌の表紙として特集されるなど、注目を集める成果であるといえる。このように、研究計画以上の進展が見られた。 一方で、モデルシステムの多様化や、環境因子と相分離能の相関、さらには低分子化合物など多様なモダリティを用いた相分離の制御技術の構築などに関して、今後さらなる検討を進める必要があるといえる。 また2022年度に開始した、細胞内相分離観察や細胞内での核酸の構造―相分離能の相関の解明についても計画に沿った進展が見られた。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに当初の研究計画通りの進展が見られたことから、本年度においても当初の研究計画の内容を中心に、三点の要素技術充実化を図るそれぞれの要素技術における研究推進の方策を次に述べる。 ①相分離最小モデルシステムを構築:モデルシステムは計画通り完成したが、現在でも次々と核酸の相分離が関与する細胞内反応が解明されている。そこで、さらなるモデルシステムの構築にも継続して取り組む。 ②分子環境と化学修飾に依存した核酸の構造―相分離能の相関の解明と相分離の必須因子の同定:核酸構造と相分離能の相関の一端が解明された。そこで今後は、他の核酸構造や、化学修飾(エピジェネテック修飾)、細胞内環境因子と相分離能の相関についても検討し、相分離の可逆性の本質に迫る。③相分離制御技術の構築:核酸鎖を用いた配列特異的相分離制御が達成できた。今後は、核酸構造選択的な低分子化合物や、細胞内環境因子の摂動によっても相分離制御技術を構築する予定である。 以上のような取り組みにより、細胞内の相分離における核酸構造の重要性や、細胞内環境因子に依存した相分離の可逆的制御技術を構築することを試みる。
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