研究課題/領域番号 |
21H02076
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分37030:ケミカルバイオロジー関連
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
藤本 健造 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (90293894)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2023年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2022年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2021年度: 7,540千円 (直接経費: 5,800千円、間接経費: 1,740千円)
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キーワード | RNA光クロスリンク / DNA編集 / ゲノム編集 / 超高速RNA光架橋 / RNA編集 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、対合塩基認識能を有する新規光応答性人工核酸開発を通して正確なRNA操作を創り出すとともに、アップコンバージョン用ナノ粒子を用いた近赤外光励起によるRNA操作を組み込むことで、最終的に細胞内での時空間制御可能な光化学的RNA編集法の確立を目的とする。
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研究実績の概要 |
本研究では、新規光応答性人工核酸開発を通して正確なRNA操作及びDNA操作を創出し、アップコンバージョン用ナノ粒子を用いるなど長波長励起による操作を組み込むことで、最終的に細胞内で時空間制御可能な光化学的RNA編集法及びゲノム編集法の確立を目的とする。酵素特有の制約条件の影響を受けずに時空間制御可能なRNA編集、ゲノム編集に向けた新規化学反応開発をおこなった。高次構造を有するRNAならびにゲノムDNAに対する化学分子を用いた各種操作はその高次構造に起因するプローブ核酸のアクセスがそもそも難しいことが最大の障壁となっていた。たとえばゲノムDNA操作であれば、その基質となるDNA2本鎖が非常に安定な2重らせん構造を有することから、オリゴ核酸(ODN)がDNA2本鎖に対して相互作用しようとしてもすぐ押し出されてしまうため、DNA2本鎖に対して配列選択的に相互作用する人工核酸の報告例が殆どなかった。そこで、DNA2本鎖に対してCNVKを埋め込んだ人工核酸プローブをそれぞれ片側のDNA鎖に同時に相互作用させることでdoubule duplex invasion (DDI)という安定な構造を構築できるのではと考えた。まず、CNVKの架橋位置に自己架橋抑制素子となる塩基を4種類(チミン (T)、5-cyanouracil (CNU), Spacer, dSpacer)検討し、CNUがDDI構築の際に副反応として考えられる光応答性プローブ同士の架橋反応を最も抑制することを見出した。次にこのCNVKとCNUを併せもつプローブを400塩基対の長鎖ODNに対して相互作用させ385 nm光照射を1秒おこなったところ、70%以上の高収率でDDI構造が構築できることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は酵素特有の制約条件の影響を受けずに時空間制御可能なRNA編集、ゲノム編集に向けた新規化学反応開発をおこなった。高次構造を有する核酸に対する化学操作はその高次構造故に、プローブ核酸のアクセスがそもそも難しいことが最大の障壁となっていた。実際、ゲノムDNA操作であれば、その基質となるDNA2本鎖が非常に安定な2重らせん構造を有することから、オリゴ核酸(ODN)がDNA2本鎖に対して相互作用しようとしてもすぐ押し出されてしまうため、DNA2本鎖に対して配列選択的に相互作用する人工核酸の報告例が殆どなかった。そこで、我々はdoubule duplex invasion (DDI)という構造に着目した。これまでPNAやLNAなどの人工核酸を用いたDDI構造構築に関する報告例があるものの、PNAやLNAによって誘起されたinvasion構造は水素結合に依存しているため熱的に不安定という問題があった。そこで、DNA2本鎖に対して光架橋核酸プローブをそれぞれ片側のDNA鎖に同時に相互作用させることができれば、doubule duplex invasion (DDI)という安定な構造を構築できるのではと考えた。本年度、新たに設計した光応答性核酸プローブを400塩基対の長鎖ODNに対して相互作用させ385 nm光照射を1秒おこなったところ、70%以上の高収率でDDI構造が構築できることを見出した。この結果は細胞内での核酸類操作に向け有意な結果と考えられるため、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度(~2024年3月31日)は、これまでの研究成果を統合し光化学的RNA編集法を用いた生細胞内BFP→GFP変換に取り組む。核酸分解酵素耐性を付与するため、ホスホロチオエート化したPR-DNA csUCNPを準備する。青色蛍光タンパク質BFPを恒常的に発現するHEK細胞 (BFP-HEK細胞)を用いて細胞内光RNA編集を評価する。BFPのRNAを編集(BFP mRNAの199番目のCをピンポイントでUに編集)するとBFP mRNAがGFP mRNAと変換され、緑色蛍光タンパク質GFPが発現する。PR-DNA csUCNPをBFP-HEK細胞に電気的に導入後、1064 nmの光照射、1時間インキュベート、930 nmの光照射をおこなう。その後、共焦点顕微鏡およびフローサイトメーターを用いて解析する。またRT-PCR、cDNAのシーケンシングによりRNA編集効率を定量的に評価する。一方、細胞内RNA塩基編集に伴うオフターゲット効果の評価のため、ゲノム編集時のオフターゲット効果を評価する際に用いられるGOTI法の改良版を用いる。光化学的核酸塩基編集をおこなった細胞、おこなっていない細胞それぞれからcDNAライブラリーを構築し、その配列解析を行う。配列解析から各塩基の個数分布を解析し、光化学的核酸塩基編集前後での塩基分布に違いからオフターゲット効果を正確に評価する。また、細胞生存率を評価(MTT assay)し、これらの結果を統合することで細胞内光化学的RNA編集の実証・評価をおこなう。
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