研究課題/領域番号 |
21H02098
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38020:応用微生物学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
丸山 潤一 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任教授 (00431833)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2023年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2022年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2021年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
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キーワード | 糸状菌 / 麹菌 / 多細胞 / トランスグルタミナーゼ / タンパク質架橋 / 細胞間連絡 |
研究開始時の研究の概要 |
糸状菌は多細胞生物であり、菌糸状に連なる細長い細胞どうしが、隔壁にあいた隔壁孔と呼ばれる小さな穴を介して細胞間連絡を行っている。この細胞間連絡は、同じく多細胞生物である動物のギャップ結合、植物の原形質連絡と共通する性質である。本研究では、タンパク質どうしを架橋するトランスグルタミナーゼを対象として、細胞間連絡を制御する分子ネットワークの解明を目的とする。動物の血液凝固や皮膚表皮形成でのタンパク質どうしを架橋する機能が知られるトランスグルタミナーゼについて、本研究は糸状菌の細胞間連絡における新しい生理機能を提起する。
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研究実績の概要 |
糸状菌は、菌糸状に生育し、隔壁により仕切られた細長い細胞が連なる多細胞生物としての形態的特徴を有する。隔壁には隔壁孔と呼ばれる小さな穴があき、これを介して隣接した細胞どうしで連絡を行っている。この細胞間連絡は、動物のギャップ結合・植物の原形質連絡のような多細胞生物として共通する性質であり、真核生物でもっとも単純な構造で始原的な細胞間連絡である。 本研究では、研究代表者らが大規模局在スクリーニングから見いだした、糸状菌の細胞間連絡の制御因子のなかより、タンパク質の架橋反応を担うトランスグルタミナーゼを対象として、細胞間連絡を制御する機能の解明を目指す。トランスグルタミナーゼの基質同定により、細胞間連絡制御の分子ネットワークの解明を行う。動物で血液凝固や皮膚表皮形成でのタンパク質どうしを架橋する機能が知られるトランスグルタミナーゼについて、本研究は糸状菌の細胞間連絡における制御メカニズムからの新しい生理機能を提起する。 2022年度は、細胞間連絡の制御においてトランスグルタミナーゼ活性が、「トランスグルタミナーゼ様タンパク質」に依存するかを調べた。蛍光顕微鏡による酵素活性の局在解析を行った結果、トランスグルタミナーゼ活性に同タンパク質が関与することを明らかにした。さらに、研究代表者らが大規模局在スクリーニングで見いだした隔壁孔蓄積タンパク質(Mamun et al., Nat. Commun., 2023)について、その局在が「トランスグルタミナーゼ様タンパク質」に依存することがわかった。以上のことから、隔壁孔での細胞間連絡の制御において、トランスグルタミナーゼ活性による作用機序の解明につながる結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者らは、糸状菌特異的に存在する機能未知遺伝子からのスクリーニングより、細胞間連絡の制御因子を数多く発見した(Mamun et al., Nat. Commun., 2023)。そのなかから、タンパク質の架橋反応を担うトランスグルタミナーゼが、糸状菌の細胞間連絡を制御する可能性を初めて見いだした。 2022年度は、溶菌時に隔壁孔に現れるトランスグルタミナーゼ活性について、「トランスグルタミナーゼ様タンパク質」との関係を調べた。人工基質として5-(ビオチンアミド)ペンチルアミンを使用して、トランスグルタミナーゼ活性で基質タンパク質がビオチン化されることから、蛍光物質で標識されたストレプトアビジンによって蛍光顕微鏡で観察した。遺伝子破壊株を用いた実験の結果、溶菌時に隔壁孔に現れるトランスグルタミナーゼ活性に、「トランスグルタミナーゼ様タンパク質」が関与することを明らかにした。 さらに、研究代表者らが大規模局在スクリーニングで見いだした隔壁孔蓄積タンパク質について、その局在が「トランスグルタミナーゼ様タンパク質」に依存するか調べた。その結果、「トランスグルタミナーゼ様タンパク質」をコードする遺伝子の破壊株において、一部のタンパク質で隔壁孔への蓄積が減少することがわかった。また、トランスグルタミナーゼの阻害剤で処理したところ、上記のタンパク質の隔壁孔への蓄積が同様に減少した。したがって、「トランスグルタミナーゼ様タンパク質」およびトランスグルタミナーゼ活性が、隔壁孔蓄積タンパク質の局在に関与することがわかった。 以上の成果より、「トランスグルタミナーゼ様タンパク質」が、隔壁孔でのトランスグルタミナーゼ活性、および隔壁孔蓄積タンパク質の局在に関与することを示したことから、次年度で細胞間連絡の制御におけるトランスグルタミナーゼ活性の作用機序の解明が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、研究代表者らが大規模局在スクリーニングで見いだした隔壁孔蓄積タンパク質(Mamun et al., Nat. Commun., 2023)について、一部のタンパク質が「トランスグルタミナーゼ様タンパク質」に依存して隔壁孔に蓄積することがわかった。そこで2023年度は、この隔壁孔蓄積タンパク質について、トランスグルタミナーゼの基質として架橋反応を受けるかを調べる。 溶菌を誘導したのちに抽出したタンパク質から、ビオチンが付加された人工基質によってトランスグルタミナーゼの架橋反応で基質タンパク質がビオチン化されることを利用し、ストレプトアビジン結合ビーズを用いて精製する。この際に、隔壁孔蓄積タンパク質についてタグを付加しておき、これを指標に架橋反応を受けたタンパク質に含まれているかを調べる。もしくは、精製したタンパク質をトリプシンによって消化し、ペプチドをLC/MS/MSで解析する。その質量データをもとにタンパク質配列データベースを参照して、隔壁孔蓄積タンパク質がトランスグルタミナーゼによる架橋反応を受けているかを調べる。 また、トランスグルタミナーゼ基質の細胞間連絡における作用機序を解析する。上記のLC/MS/MS解析の結果をもとに、トランスグルタミナーゼ基質において架橋反応を受けるアミノ酸を特定し、これに対する変異導入により、細胞間連絡の制御機能、溶菌時の隔壁孔への蓄積における影響を調べる。また、機能予測が可能なものは細胞間連絡制御との機能的関連を検証するとともに、相分離のような細胞間連絡の状態変化に関連する構造タンパク質としての観点でも作用機序の解析を進める。
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