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細菌膜リン脂質アシル鎖の多様性を生み出す分子基盤と生理機能発現機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 21H02102
研究種目

基盤研究(B)

配分区分補助金
応募区分一般
審査区分 小区分38020:応用微生物学関連
研究機関京都大学

研究代表者

栗原 達夫  京都大学, 化学研究所, 教授 (70243087)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2023年度: 7,410千円 (直接経費: 5,700千円、間接経費: 1,710千円)
2022年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2021年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
キーワード生体膜 / リン脂質 / リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素
研究開始時の研究の概要

生体膜の主成分であるリン脂質の極性頭部と疎水性尾部には大きな構造多様性がある。疎水性尾部として鎖長、飽和度、分岐の有無などが異なる種々のアシル鎖がグリセロール骨格に結合しており、膜流動性保持への必要性という観点だけでは説明できない多様性がある。本研究では、細菌の膜リン脂質アシル鎖の構造多様性の生理的意義と生理機能発現機構の解明を目指す。また、そのような多様性が生み出される分子基盤の解明も目指す。

研究実績の概要

リン脂質のsn-2位にアシル鎖を導入するリゾホスファチジン酸アシル基転移酵素 (LPAAT) の構造と機能の解析に取り組んだ。Escherichia coliが二種のLPAAT(PlsCとYihG)を有し、これらが膜リン脂質のアシル鎖多様性の創出に寄与していることをこれまでの研究で明らかにしてきたが、当該年度においてはこれらを精製し、酵素学的特性を明らかにするとともに、これらの基質特異性の違いが生み出される仕組みを解析した。LPAATは膜タンパク質であり、活性を保持した状態での可溶化には困難が伴うが、検討の結果、スチレン-マレイン酸共重合体を用いることで、周辺のリン脂質とともにPlsCとYihGを生体膜から抽出し、活性を保持した状態でナノディスクとして可溶化できることを見いだした。E. coli C43(DE3) を宿主とし、T7プロモーターを用いて高発現させたHis6タグ付きのPlsCおよびYihGを可溶化後、アフィニティークロマトグラフィーで精製した。これらの基質特異性を解析した結果、PlsCはパルミトレオイルCoA (16:1-CoA) やオレオイルCoA (18:1-CoA) などの不飽和アシル鎖を有するアシルCoAを良好な基質とし、ミリストイルCoA (14:0-CoA) などの鎖長の短いアシルCoAに対する活性はきわめて低いことが見いだされた。一方、YihGは14:0-CoAなど、比較的鎖長の短いアシル鎖を有するアシルCoAに対して高い活性を有することが示された。これらの立体構造モデルをAlphaFold2を用いて作製し比較したところ、アシルCoAの選択性への関与が推定される部位において顕著な違いが見いだされた。この部位に存在するYihGのTyr125を嵩の低いAlaなどに改変したところ、より鎖長の長いアシルCoAに対する活性が上昇した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

E. coliの二種のLPAATを活性を保持した状態で精製し、それらの基質特異性の差異を明らかにするとともに、基質特異性を決定づける部位を明らかにすることに成功するなど、膜リン脂質アシル鎖多様性創出の分子基盤解明において大きな進展があった。一方、種々のアシル鎖を有するリン脂質の分子種特異的な生理機能の解析においては、アシル鎖組成の異なる株間の表現型の比較や比較オミックス解析などにより、生理機能の差異や、機能発現の分子基盤に関する知見が得られつつあるが、機能発現機構に関する作業仮説を裏付ける実験的根拠が不十分であることから、「おおむね順調に進展している」と評価することが妥当と考えられる。

今後の研究の推進方策

これまでの研究によりYihGの欠損によりE. coliのべん毛形成が促進し、運動性が向上することを明らかにしている。また、YihG欠損株と親株のトランスクリプトーム比較解析により、両者で発現量が異なる遺伝子群を明らかにしている。これらの遺伝子の破壊株や高発現株の作製などにより、YihG欠損によるリン脂質アシル鎖組成の変化がべん毛形成促進をもたらす機構の解析を進める。他のLPAATについても、同様のアプローチにより、機能解析と機能発現機構解析を進める。また、PlsCやYihGとは異なる基質特異性を有するLPAATについても基質特異性の違いを生み出す構造基盤の解析を進める。

報告書

(2件)
  • 2022 実績報告書
  • 2021 実績報告書
  • 研究成果

    (8件)

すべて 2023 2022 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Division of the role and physiological impact of multiple lysophosphatidic acid acyltransferase paralogs2022

    • 著者名/発表者名
      Ogawa Takuya、Kuboshima Misaki、Suwanawat Nittikarn、Kawamoto Jun、Kurihara Tatsuo
    • 雑誌名

      BMC Microbiology

      巻: 22 号: 1 ページ: 241-241

    • DOI

      10.1186/s12866-022-02641-8

    • 関連する報告書
      2021 実績報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Biochemical characterization of a novel lysophosphatidic acid acyltransferase YihG from Escherichia coli2023

    • 著者名/発表者名
      Nittikarn Suwanawat、Takuya Ogawa、Jun Kawamoto、Tatsuo Kurihara
    • 学会等名
      第96回日本生化学会大会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [学会発表] Shewanella vesiculosa HM13 の細胞外膜小胞の形成とフラン脂肪酸合成との関連2022

    • 著者名/発表者名
      小川拓哉、中野咲梨、横山文秋、川本純、栗原達夫
    • 学会等名
      第68回日本生化学会近畿支部例会
    • 関連する報告書
      2021 実績報告書
  • [学会発表] 細菌の膜生化学:膜リン脂質・膜小胞研究の新展開2022

    • 著者名/発表者名
      栗原達夫、川本純、小川拓哉
    • 学会等名
      第34回植物脂質シンポジウム
    • 関連する報告書
      2021 実績報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 細菌細胞表層の科学:膜リン脂質・膜小胞研究の新展開2022

    • 著者名/発表者名
      栗原達夫
    • 学会等名
      大隅財団 微生物コンソーシアム定例会
    • 関連する報告書
      2021 実績報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] Multi-omic analysis to assess the physiological changes in Escherichia coli caused by the lack of novel lysophosphatidic acid acyltransferase (YihG)2022

    • 著者名/発表者名
      Nittikarn Suwanawat、Takuya Ogawa、Jun Kawanmoto、Tatsuo Kurihara
    • 学会等名
      第95回日本生化学会大会
    • 関連する報告書
      2021 実績報告書
  • [学会発表] 低温菌Shewanella livingstonensis Ac10におけるβ酸化酵素を介したドコサヘキサエン酸からエイコサペンタエン酸への変換機構の解析2022

    • 著者名/発表者名
      正木翼加、小川拓哉、川本純、栗原達夫
    • 学会等名
      日本農芸化学会2023年度大会
    • 関連する報告書
      2021 実績報告書
  • [学会発表] In vitro characterization of lysophosphatidic acid acyltransferase (PlsC) from Escherichia coli2021

    • 著者名/発表者名
      Nittikarn Suwanawat、Takuya Ogawa、Jun Kawamoto、Tatsuo Kurihara
    • 学会等名
      第94回日本生化学会大会
    • 関連する報告書
      2021 実績報告書

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公開日: 2021-04-28   更新日: 2024-12-25  

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