研究課題/領域番号 |
21H02118
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38030:応用生物化学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
谷 元洋 九州大学, 理学研究院, 准教授 (20452740)
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研究分担者 |
石橋 洋平 九州大学, 農学研究院, 助教 (90572868)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2021年度: 8,450千円 (直接経費: 6,500千円、間接経費: 1,950千円)
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キーワード | 複合スフィンゴ脂質 / セラミド / 出芽酵母 / 救済機構 / シグナル伝達系 |
研究開始時の研究の概要 |
複合スフィンゴ脂質は、真核生物の生体膜の機能維持において要となる分子であり、その代謝異常は多岐に渡る細胞機能異常を引き起こす。申請者らは最近、出芽酵母において「細胞内の複合スフィンゴ脂質の減少に対し、特定のシグナル系 (HOG経路)が活性化されることで生き延びる救済機構が存在する」ことを見出した。本研究では、このようなシグナリング機構の全容解明を試み、スフィンゴ脂質の代謝異常による細胞機能の損傷とその修復に関して、新しい切り口から研究を展開する。
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研究実績の概要 |
本年度はスフィンゴ脂質代謝異常による生育異常が生じるリスク下において細胞救済に寄与する機構に関して、以下の成果を得た。 (1) 複合スフィンゴ脂質構造多様性破綻酵母で生じる機能異常を補填する救済機構 出芽酵母は、15種類の複合スフィンゴ脂質を持つ。この構造多様性の崩壊によって生じる機能異常を調べるために、複合スフィンゴ脂質の多様性を限定させた11種類の複合スフィンゴ脂質構造多様性破綻ライブラリーを構築した。ライブラリーのストレス耐性能を調べた結果、複合スフィンゴ脂質の構造多様性が限定されればされるほど多面的な環境ストレスに対する耐性能が失われていくことが明らかとなった。複合スフィンゴ脂質が一種類だけになった変異株(csg1Δcsh1Δsur2Δscs7Δ (ccssΔ)株)では、細胞壁関連遺伝子の発現が増大していた。また、細胞壁インテグリティー維持に寄与するMAPキナーゼ Slt2がccssΔ株の高温ストレス高感受性の抑圧に寄与していた。さらに、転写因子Msn2, Msn4がccssΔ株で生じる形質膜物性 (透過性、流動性)の異常の補填に寄与しており、本転写因子はccssΔ株の大部分のストレス高感受性を抑圧していることもわかった。これらの結果より、複合スフィンゴ脂質の構造多様性を限定させていくとストレス耐性能が低下していき、Slt2やMsn2/4がその救済にあたることがわかった。 (2) 複合スフィンゴ脂質合成阻害剤に対する耐性獲得 エルゴステロール合成酵素遺伝子の欠損株が複合スフィンゴ脂質合成阻害剤 (aureobasidin A (AbA))に抵抗性を示すことを見出した。この抵抗性獲得は、Pdr16を介していることがわかり、Pdr16は複合スフィンゴ脂質合成酵素に対するAbAの細胞内におけるアクセシビリティーを制限していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複合スフィンゴ脂質の構造多様性破綻に対する救済機構に関する研究は、Mol Biol Cell誌に掲載され、研究は概ね順調に進行している。またエルゴステロール合成酵素欠損株におけるAbA耐性は、AbAのin vivoでの阻害効果を低減させることで獲得されたものであり、複合スフィンゴ脂質合成酵素の遺伝子発現抑制によって引き起こされる複合スフィンゴ脂質の低下に対しては、エルゴステロール合成酵素欠損株はむしろ高感受性を示すこともわかった。即ちこのことは、複合スフィンゴ脂質合成酵素をターゲットとした薬剤によって引き起こされる複合スフィンゴ脂質代謝異常を未然に防ぐ新しい薬剤耐性機構の存在を示唆しており、本研究計画にさらに幅をもたせることができた (現在、論文投稿中)。以上のことから、本研究課題の進捗状況は概ね順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
複合スフィンゴ脂質の構造多様性破綻に対する救済機構をさらに調べるために、ccssΔ株のストレス高感受性を抑制するサプレッサー変異の探索を行う (すでに有望な遺伝子を複数同定している)。また、セラミド異常蓄積で誘導される細胞死の抑制に関与するMAPキナーゼ経路の存在をこれまでに見出しており、この機構の解明についても重点的に取り組んでいく。さらに、これらの救済機構を応用した有用スフィンゴ脂質高生産系の確立も試みる。一方、AbAとは異なるスフィンゴ脂質合成阻害剤に対して耐性を付与する遺伝子も複数同定しており、スフィンゴ脂質と関連する阻害剤に対する新たな耐性獲得機構の研究にも着手する。
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