研究課題
基盤研究(B)
細胞の内外を仕切り、細胞内をコンパートメント化する生体膜は、重量にして約50%を脂質が占める。脂質は抗生物質や代謝疾患治療薬の標的であることからも、その機能の理解が求められる。ところが、タンパク質とは異なりゲノムに直接コードされていないため、遺伝学的アプローチのみで機能を理解することは難しい。本研究では脂質に作用して特徴的な表現型を示す生理活性化合物に着目し、それらの作用機序を各種のオミクス解析を基盤に解析することで、生体膜脂質の機能の多面性を明らかにする。
脂質に作用して特徴的な表現型を示す化合物の作用機序を各種のオミクス解析を基盤に解析し、生体膜脂質の機能の多面性の理解を目指した。まず膜ステロールに結合して強力な抗真菌活性を示す海洋天然物セオネラミドの作用解析により、膜ステロールが低分子量GTPaseの活性を制御することを明らかにした。次に抗真菌活性を示す奇数鎖脂肪酸の作用解析から、膜脂質の不飽和度の異常が小胞体の形態異常を引き起こすこと、それは細胞毒性の原因の一つになっていることを示した。さらに、セオネラミドとは全く異なる化学構造を有するがよく似た細胞表現型を示す抗真菌化合物を見出し、膜脂質の機能解析のための新たなツール化合物を取得した。
脂質は抗生物質や代謝疾患治療薬の標的であることからも、その機能の理解が求められるが、脂質分子の化学修飾によるプローブ化は脂質の本来の性質を失わせることが多く、また、タンパク質とは異なりゲノムに直接コードされていないため、遺伝学的アプローチで十分な機能解析を行うことは困難である。本研究では、脂質に作用して特徴的な表現型を示す化合物の作用機序を各種のオミクス解析を基盤に解析することで、生体膜脂質の機能の一端を明らかにすることが出来た。また抗真菌剤として利用されている化合物の新たな生物活性を見出しており、今後、医薬品の作用機序のより深い理解が可能になると期待できる。
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