研究課題/領域番号 |
21H02129
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38040:生物有機化学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
片岡 宏誌 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (60202008)
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研究分担者 |
永田 晋治 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (40345179)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2022年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2021年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
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キーワード | コレステロール / 植物ステロール / エクジソン / エクジステロイド / ペプチド |
研究開始時の研究の概要 |
昆虫が正常に成長するためには、正しいタイミングで脱皮・変態が行われなくてはならない。そのため、体内では脱皮直前にステロイドホルモンであるエクジソン(化合物群の総称名としてはエクジステロイド)が一過的に上昇する。そこで、本申請課題では、エクジステロイドの血中濃度の制御機構に着目し、ステロイド化合物の昆虫体内の構造変化とその動態、およびその構造変化を調節するペプチド性因子群や酵素類を統合的に解析し、昆虫の脱皮・変態現象の内分泌支配を総括的に理解することを目指す。
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研究実績の概要 |
本課題の目的(1)から(3)に従って、2022年度の研究実績を以下に記す。 1)カイコの腸管には植物ステロールからコレステロールに変換する酵素群が存在することが分かっている。植食性の昆虫において、この変換反応が同様に生じているかを検討した。これまで、In vitroの系で、再構築ができているがその効率が非常に低かった。その後、超遠心分離にてミクロソーム画分に変換活性が認められているものの、カラムクロマトグラフィーに供するとその活性が消失してしまうため、補酵素あるいは複合体を形成している酵素であることが予想できた。一方、コオロギを用いた、同様の植物ステロールの変換活性は、これまでにSbovodaにより推定されていた変換反応は認められなかったものの、別経路での変換を示唆するデータが得られた。 2)2021年度では、LC-MS/MSのトラブルにより研究が進まなかった。2022度では、LC-MS/MSの他にもGCMSの利用ができるかを検討した。感度に差があるものの、GCMSによるステロール化合物を得ることができた。一方、世界的なヘリウムガスの供給不足により、GCMSによる分析も滞っていたが、ヘリウムガスの代替ガスを検討しているところ、窒素による系が比較的安定にデータが得られ見通しが立てられるようになった。 3)分析技術に依存している本研究課題は、これまでのLC-MS/MSやGC-MSなどのデータや先行文献値などをもとに、ステロール化合物の代謝および変換経路の中間体を探索することを試みた。ステロール代謝を予想できるような化合物は見出せなかったが、24メチレンコレステロールなど、有力な候補代謝化合物は見出すことができた。構造変換の上位のペプチド性因子に関してはスクリーニングにはいたらないものの、2021年度のデータをもとにゲノム情報の比較により網羅的に抽出できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本課題の目的(1)から(3)に従って、2022年度の研究実績を以下に記す。 1)植物ステロールからコレステロールに変換する酵素群については新規の代謝経路を発見することができたが、2021年度に引き続き分析系の障壁により精力的には進められなかった。そのような中で、コオロギを用いた新規変換経路は、GCMSによる低感度の分析でも進められることが分かったため、今後この酵素同定に向けて展開できる段階となった。 2)2021年度では、LC-MS/MSのトラブルにより研究が進まず、LCMSMS装置を修理した。さらに窒素発生装置の故障も発覚し、2022年度まで分析の不具合が生じた。一方、2022度では、LC-MS/MSの他にもGCMSが利用できるようになったが、世界的なヘリウムガスの供給不足により、GCMSによる分析も滞った。しかし、年度の終盤にヘリウムガスの代替ガスを検討しているところ、窒素による系が比較的安定にデータが得られ見通しが立てられるようになった。 3)分析技術に依存している本研究課題は、これまでのLC-MS/MSやGC-MSなどのデータや先行文献値などをもとに、ステロール化合物の代謝および変換経路の中間体を探索することを試みた。ステロール代謝を予想できるような化合物は見出せなかったが、24メチレンコレステロールなど、有力な候補代謝化合物は見出すことができた。構造変換の上位のペプチド性因子に関してはスクリーニングにはいたらないものの、2021年度のデータをもとにゲノム情報の比較により網羅的に抽出できた。
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今後の研究の推進方策 |
本課題の目的(1)から(3)に従って、2022年度の研究実績を以下に記す。 1)植物ステロールからコレステロールの変換酵素を主に同定することで展開させていく。同様に、脱皮変態時に認められるエクジステロイドリン酸抱合体の構造同定をはじめ、それに関わる酵素を同定すること目指す。 2)ステロール類の網羅的な体内の構造決定に関しては、様々な昆虫種で進めることとする。それにより、新規なステロール化合物をもとに、昆虫体内でのステロール化合物の代謝経路だけでなく、エクジステロイド、食餌由来のステロイド化合物の消長を網羅的に追跡していくことを目指す。 3)脱皮変態や摂食モチベーションの状態による脳神経系で見出されるホルモン類を明らかにし、それとステロイド化合物の組成変動を経時的かつ組織特異的に追及することとした。 最終年度である2023年度は、これらをもとに総合的に昆虫でのステロール化合物の利用を俯瞰できることを目指す。
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