研究課題/領域番号 |
21H02193
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39040:植物保護科学関連
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
鈴木 丈詞 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (60708311)
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研究分担者 |
福原 敏行 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (90228924)
レンゴロ ウレット 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10304403)
田原 緑 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, 助教 (20849525)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 7,540千円 (直接経費: 5,800千円、間接経費: 1,740千円)
2021年度: 7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
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キーワード | RNAi / ハダニ / 農薬 / Dicer / ナノ粒子 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は,ハダニにおけるeRNAiの学理構築と,防除への応用を推進することである. 特に,eRNAiを基盤とした防除標的として最有望である消化細胞に焦点を当て,eRNAiの分子機構の解析に加え,オミクス解析と独自に開発したdsRNA経口投与法を組み合わせた高効率なスクリーニング系を構築し,標的候補遺伝子を選定していく.さらに,効率的なeRNAiを実現するdsRNAの担体開発にも取り組む.
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研究実績の概要 |
持続可能な害虫防除体系を構築するためには、抵抗性問題を繰り返す従来の化学合成農薬とは作用機構が根本的に異なる次世代農薬を開発する必要がある。その作用機構の候補の一つは、経口投与など、外部から導入された二本鎖RNA(double-stranded RNA: dsRNA)によって誘導されるRNA干渉(environmental RNAi: eRNAi)であり、RNA農薬と呼称されて世界的に研究開発が進めらている。 本研究では、抵抗性問題が最も深刻な害虫種であるナミハダニ(Tetranychus urticae Koch)を対象に、eRNAiの最有望標的である消化細胞(中腸上皮由来で、胃や網嚢の内腔で浮遊し、消化・解毒や貯蔵など重要な生理機能を担い、かつdsRNAを取り込む細胞)に焦点を当てて以下の基礎研究を進めた:A)消化細胞のdsRNA取込機構、B)消化細胞内でのdsRNAプロセッシング機構、C)消化細胞のオミックス解析とeRNAiスクリーニング、D)dsRNAの担体開発。 2022年度は、このうち、B)消化細胞内でのdsRNAプロセッシング機構とC)eRNAiスクリーニングの研究を中心に進めた。B)ではdsRNAの経口投与がプロテオームに及ぼす影響をLC-MSを用いて調査した。また、修飾塩基(Pseudo-UTPおよびN1-Methylpseudo-UTP)を含むdsRNAを合成し、応答性の変化も調査した。C)ではシルクタンパク質をコードする2つの遺伝子(Fibroin1およびFibroin2)を標的としたeRNAiを実施した。その結果、eRNAiを施したハダニが産生する糸には粘着性が低下する傾向が見られた。また、オクトパミン受容体をコードする遺伝子のeRNAiによって誘導される表現型(生存率の低下、産卵数の減少、摂食量の減少、移動運動の活性化)について、論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
A)消化細胞のdsRNA取込機構について、昨年度に続き、受容体媒介型エンドサイトーシス関連遺伝子の機能解析を進めた。B)消化細胞内でのdsRNAプロセッシング機構について、修飾塩基(Pseudo-UTPおよびN1-Methylpseudo-UTP)を含むdsRNAを合成し、dsRNA認識およびタンパク質レベルでの応答の調査まで進めることができた。C)消化細胞のオミックス解析とeRNAiスクリーニングでは、Fibroin1およびFibroin2遺伝子の他、既存殺虫剤の標的でもあるオクトパミン受容体の機能解析を実施し、後者については、その成果を論文としてまとめ、Entomologia Generalis誌で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
A)消化細胞のdsRNA取込機構について、今後は受容体媒介型エンドサイトーシス関連遺伝子の機能解析に注力する他、その他の候補経路についても阻害剤を利用して研究を進める。B)消化細胞内でのdsRNAプロセッシング機構について、dsRNA(陰性対照)に応答して発現量が大きく変化する遺伝子に着目し、その機能解析を実施する。C)消化細胞のオミックス解析とeRNAiスクリーニングでは、消化細胞の採取法として、消化細胞由来の糞球を用いた解析を試みる。eRNAiスクリーニングでは、オクトパミン受容体のように、既存殺虫剤の標的として判明している遺伝子の機能解析を進める。D)dsRNAの担体開発については、他の項目よりもやや進展が遅れているため、dsRNAの負電荷特性を利用し、正電荷かつナミハダニが摂食可能なナノオーダーサイズ(直径500 nm以下)の環境低負荷物質を材料とし、dsRNA-ナノ物質の複合体を作製に注力する。
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