研究課題/領域番号 |
21H02195
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39040:植物保護科学関連
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
中屋敷 均 神戸大学, 農学研究科, 教授 (50252804)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
17,030千円 (直接経費: 13,100千円、間接経費: 3,930千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2021年度: 10,270千円 (直接経費: 7,900千円、間接経費: 2,370千円)
|
キーワード | いもち病菌 / エピジェネティクス / ヒストン修飾 |
研究開始時の研究の概要 |
植物病原菌は、宿主の「寄生者」であるが、多くの場合、枯葉のような植物遺体を利用して「腐生的」に生育することもできる。本研究では、この病原菌の「寄生」と「腐生」の二つのモードがどのように制御されているか解き明かすことを目的としている。近年、同じ遺伝子を持つ細胞が、異なった機能を持つようになる機構として、ヒストン修飾やDNAのメチル化など、DNAの配列情報を変えずに、遺伝子の働きを調節するエピジェネティクスという機構が注目されている。本研究では、イネ科植物いもち病菌を材料に「寄生」と「腐生」のモード変換にエピジェネティックな制御が関与していると考え、その機構の謎に迫る。
|
研究実績の概要 |
いもち病菌は栄養条件が良ければ腐生的に生活することが可能であり、また植物病原菌として寄生的に生きることも可能である。本研究では、このいもち病菌の「寄生」と「腐生」という生理的に異なった二つのモードをスイッチングする重要な機構として、エピジェネティックなクロマチンの状態に注目している。昨年度は各種のヒストン修飾のうち「寄生的」な状態を規定するものはどれか探索することを行ったが、本年度はその中でもH3K4me2とH3K27me3による制御に注目して研究を進めた。 感染葉におけるChIP-seqやHi-C解析を昨年取り組んだが、技術的に難しいことが判明したため、本年度はそれを培養条件を工夫してそれを模した状態を作ることを試みた。寄生的な条件は貧栄養状態であり、植物由来の成分に接することから、最少培地に植物抽出液を加えたMinPS培地を考案した。この培地で培養した菌糸のRNA-seqを行った所、感染葉で特異的に発現している遺伝子の約45%が発現誘導されており、近年注目されているエフェクター様遺伝子に限れば、その50%以上が誘導されていた。 これらのRNA-seq解析の結果は、MinPS培地により細胞の状態は「寄生モード」に近づいていいることが判明したため、これを用いてまずChIP-seq解析を行った。その結果、Min-PS培地では「腐生モード」で遺伝子発現が活発なコア染色体でH3K27me3のレベルが上昇しており、エフェクターなどが多く座乗するサブテロメアなどの条件的ヘテロクロマチン領域でH3K27me3が減少するという傾向があることが判明した。この変化は、数十万~百万塩基対といった染色体の領域を単位として変化しており、グルーバルなヒストン修飾の変化が「腐生」と「寄生」を規定している可能性が示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
いもち病菌の「寄生モード」を模倣することができるMinPS培地を見出し、研究を進展させる目処をつけることができた。また、この系を用いた「寄生」と「腐生」モードの規定にH3K27me3が重要な役割を果たしていることを示唆する結果を得ることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度構築された系を用いた他のヒストン修飾の動向やHi-C解析によるより高度なクロマチン状態の変化についても検討を行いたい。
|