研究課題/領域番号 |
21H02202
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39050:昆虫科学関連
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
伊藤 克彦 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80725812)
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研究分担者 |
横山 岳 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (20210635)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
15,210千円 (直接経費: 11,700千円、間接経費: 3,510千円)
2023年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2021年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
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キーワード | カイコ / 突然変異 / 致死 / 寿命 / ゲノム編集 |
研究開始時の研究の概要 |
長い養蚕の歴史の中で、カイコの致死や寿命に関わる突然変異体は数多く発見されているものの、遺伝子レベルで明らかになった例は少ない。これらの変異体の解析は、昆虫の生命維持に直結する重要な遺伝子の解明につがなるとともに、チョウ目害虫の防除のための基礎研究にもつながる。我々はこれまで、「幼虫の孵化直後の致死」および「成虫の寿命」に関わる2つの変異体の解析を進め、これらがBmNRF6遺伝子ファミリーに所属する遺伝子によって制御されていることを発見した。本研究では、これらの変異体と正常個体の代謝や遺伝子発現を比較することで、カイコの寿命に関わるBmNRF6遺伝子群の昆虫生理機能の解明に取り組む。
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研究実績の概要 |
カイコにおいて致死や寿命に関わる突然変異体は数多く発見されているものの、遺伝子レベルで明らかになった例は少ない。我々はこれまで、「幼虫の孵化直後の致死」および「成虫の寿命」に関わる2つの変異体の解析を進め、これらがそれぞれBmNRF6遺伝子ファミリーに所属する遺伝子によって制御されていることを発見した。NRF6遺伝子は、線虫とショウジョウバエで薬剤応答や成虫寿命等に関わることが報告されているが、これら以外には詳細な報告はない。またカイコのゲノム上には、我々が明らかにしたこれら2つの遺伝子の他に16種類のBmNRF6遺伝子が存在するが、それらの機能も未知である。そこで本研究では、BmNRF6遺伝子ファミリーがカイコの生理機能へ及ぼす影響を調べることで、チョウ目昆虫の生存にとってのNRF6遺伝子の役割を明らかにすることを目的とする。 「幼虫の孵化直後の致死」に関わる変異体“死蟻蚕”の原因遺伝子は脂肪体で高発現していることから、エネルギー代謝異常により生命活動を維持できなくなることで致死 (飢餓)しているという仮説を立てた。そこで変異体と正常個体間のエネルギー代謝関連物質 (グリセロール量およびトリグリセリド量)の定量法の確立し、比較検討した。その結果、両者におけるエネルギー代謝関連物質の経時的変化をモニタリングすることに成功した。「成虫の寿命」に関わる変異体“成虫短命”においては、ゲノム編集により候補遺伝子の欠損系統を作出することに成功した。また、“他のBmNRF6遺伝子群”の解析においては、これまで4種類のBmNRF6に着目し、それらの様々な組織 (脳、神経、絹糸腺、精巣、卵巣、脂肪体、マルピギー管、前腸、中腸、後腸)における遺伝子の発現パターンを明らかにすることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、(1) 死蟻蚕と命名された「幼虫の孵化直後の致死」に関わる遺伝子 (l-nl遺伝子)、(2) 成虫短命と命名された「成虫の寿命」に関わる遺伝子 (sli遺伝子)、そして(3) 新たに見出されたBmNRF6遺伝子群の表現型解析と生理機能の解析を行い、これらの遺伝子産物が生体内のどのような生命現象に関わっているのかを明らかにする。 (1) 死蟻蚕の解析:虫体内におけるグリセロールおよびトリグリセリドの定量に成功した。一方で、初年度に作製したペプチド抗体では免疫染色による目的タンパク質の検出が難しいことが示されたため、新たに別の抗体を作製する必要があることがわかった。 (2) 成虫短命の解析:成虫個体におけるグリセロールおよびトリグリセリドの定量法の確立し、変異体と正常個体間の違いを検出できた。また、ゲノム編集により候補遺伝子の欠損系統を作出することに成功した。 (3) BmNRF6遺伝子群の解析:4種類のBmNRF6に着目し、様々な組織別 (脳、神経、絹糸腺、精巣、卵巣、脂肪体、マルピギー管、前腸、中腸、後腸)における遺伝子の発現パターンを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 死蟻蚕の解析:引き続きエネルギー代謝関連物質の定量を行い、変異体と正常個体の比較解析を行う。また初年度に作製したペプチド抗体の代わりとなる抗体を、リコンビナントタンパク質を抗原として作製する。それを用いて死蟻蚕の原因遺伝子がコードする膜タンパク質の組織内における局在を調査する。 (2) 成虫短命の解析:作出に成功した候補遺伝子の欠損系統を用いて、表現型の観察を行う。また、性状解析として、遺伝子欠損系統のエネルギー代謝関連物質や体内水分量、生育の変化等をモニタリングする。 (3) BmNRF6遺伝子群の解析:残り10種のBmNRF6の組織別およびステージ別の遺伝子発現を調査する。また、ゲノム編集により、特にフォーカスしている4種類のBmNRF6のノックアウト系統を作出し、それらがどのような表現型に関わるのかを調査する。
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