研究課題/領域番号 |
21H02214
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39060:生物資源保全学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮下 直 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (50182019)
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研究分担者 |
滝 久智 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (80598730)
横井 智之 筑波大学, 生命環境系, 助教 (80648890)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
15,080千円 (直接経費: 11,600千円、間接経費: 3,480千円)
2023年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2022年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2021年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
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キーワード | 絶滅危惧種 / 送粉サービス / 草原生態系 / 景観構造 / 生物間相互作用 / 相互作用改変 / 任意共生 / 応答多様性 / 気象変動 / メタ個体群 / 攪乱 / 草原 / 間接効果 / 相補性効果 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、作物生産と生態系保全の両立が急務となっている農地景観を対象に、送粉、害虫防除、希少種保全の3つの機能を同時に向上させる管理体系を構築することを目標としている。具体的には、景観スケールで相互関係にある①ソバの送粉、②イネ害虫(斑点米カメムシ)の防除、③畦畔草地に棲む絶滅危惧の蝶と草本植物の保全、を取り上げる。調査結果をもとに、生態系サービス間のシナジーを導く畦畔管理や林縁管理、空間配置の在り方を探る。
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研究実績の概要 |
①ミヤマシジミと共生者、寄生者との相互作用と気象および植生の影響 希少種の保全には、その種と強く関係する他の生物の影響に加え、環境自体がその関係性に影響を及ぼすかもしれない。本年度は、寄生ハエ・センチュウによるミヤマシジミの寄生が随伴アリの効果と草丈、降水日数から受ける直接的・間接的な影響を明らかとすることを目的とした。その結果、ハエの寄生は降水日数との関係は見られなかったが、センチュウによる寄生は数週間前の降水日数に最も影響を受けることが示唆された。また、草丈が高くなるほど、ハエとセンチュウの両者からの寄生を高まることわかった。また随伴アリはハエからの寄生を減らすことがわかった。これらの結果から、草丈と気象の効果はそれぞれ相互作用の強さを改変しており、クロオオアリやクロヤマアリが多い生息地で草丈を抑える管理を行うことで寄生者からの影響を弱めることができると示唆された。 ① 送粉者群集における気象に対する応答の多様性とソバの送粉サービス ソバには150種以上の送粉者が訪れ、送粉者種間で気象に対する応答が異なることがわかってきた。本年度は、送粉者ごとの気象応答と実際の気象変動様式を結びつけることで、気象変動様式に依存した応答多様性の効果の変化を明らかにすることを目的とした。 シミュレーションにより、応答の多様性が無い帰無モデルと実際の多様な条件下で過去の気象を使って送粉サービスを計算、比較した。その結果、送粉サービス量は帰無モデル下でより高い結果となった。これは、群集で貢献の高い種であるコアオハナムグリの応答が実際の気温変動との適合度が低いことが原因と考えられる。また、気温変動が大きい場合と小さい場合で多様性効果比較したところ、サービス量は応答曲線の形状によって異なる傾向が見られた。応答の多様性の効果は群集の応答曲線の分布と環境変動様式の組み合わせにより決定されることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度も非常に多岐にわたる仮説検証や新発見が相次いだ。ミヤマシジミについては、系統的に全く異なるハエとセンチュウという2種類の寄生者が、気象条件に対して相補的に寄生率を維持していることが分かった。しかも、寄生の効果が植生構造に依存するという大変興味深い現象も発見した。ソバについては、応答多様性と送粉サービスの関係が、環境変動のパターンによって正にも負にもなることが示唆された。これは当該分野における新たなアイディアの提供にもなる。
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今後の研究の推進方策 |
スペースの制約で記せなかったが、ミヤマシジミについては、予備的な再導入実験を行った。その結果をもとに、次年度ではどのような局所環境条件が整えば、再導入後に定着が見込めるかの野外実験を行う予定である。ソバについては、気象条件に対する応答をさらに追加で調べるとともに、実験室で温度環境を変えることで、昆虫の応答を評価し、応答多様性の実体をより明確にしていく。また、ソバ結実率と圃場レベルでの反収を紐づけるために、ドローンによりソバのバイオマス量の評価を行う予定である。
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