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マングローブに迫る温暖化起因の枯死の脅威の実態解明

研究課題

研究課題/領域番号 21H02236
研究種目

基盤研究(B)

配分区分補助金
応募区分一般
審査区分 小区分40010:森林科学関連
研究機関九州大学

研究代表者

宮沢 良行  九州大学, キャンパス計画室, 学術推進専門員 (80467943)

研究分担者 渡辺 信  琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 准教授 (10396608)
井上 智美  国立研究開発法人国立環境研究所, 生物多様性領域, 主幹研究員 (80435578)
種子田 春彦  東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (90403112)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
12,090千円 (直接経費: 9,300千円、間接経費: 2,790千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2021年度: 7,410千円 (直接経費: 5,700千円、間接経費: 1,710千円)
キーワード蒸散 / 水利用 / 光合成 / デジタル観測網 / マングローブ / 陰圧 / 潮位 / 自動観測システム / 水分生理 / 塩水 / 水ポテンシャル / 樹液流 / 枯死 / 乾燥 / 通水特性 / 樹液流計測 / 温暖化
研究開始時の研究の概要

常に湛水下の干潟に生きるマングローブだが、近年の温暖化による大量枯死が豪州で報告された。吸える水がありながら高温化で枯死した原因として、光合成で過剰に必要とされた水を供給しようとした根あるいは通水器官である道管に負荷がかかり、機能不全に陥ったことが挙げられる。日本の在来マングローブ林でも、枯死の報告はいまだないものの、厳しい夏の暑さや長い無降雨期間にはその予兆現象が発生している可能性がある。本課題では、従来は少数地点での重点研究で実施されてきた樹木の水利用・水分状態の観測研究を多地点で実施し、捕捉の難しいマングローブの水利用に関連する諸現象を明らかにすることを目的としている。

研究実績の概要

当初設定した、異なる塩分環境および水面高環境にある調査地にセンサーを設置するとともに、定期的な観測を通じて、マングローブの水利用の実態を明らかにした。マングローブは、吸い上げに強い陰圧を必要とする塩水を水源とするものの、日中の大気環境に応じて柔軟に蒸散速度を変化させることが明らかになり、既存研究で議論されたような陰圧起因の通水器官の損傷や、損傷回避のための光合成抑制を行わないことが明らかとなった。日中で最も強化される時間であっても、マングローブの樹体に加わる陰圧はマングローブの限界値よりも低いことが明らかとなり、高い陰圧を発生させて不自由なく水の吸い上げを行えている実態が明らかとなった。この結果は、今後の温暖化により大気がより乾燥したとしても、マングローブは蒸散速度の上昇に対応することが可能であり、陰圧強化の回避を目的とした蒸散や光合成の抑制は限定的になるという結論を示唆している。ただ機器の故障が頻発したことから、年内で最も高くなると考えられる真夏の蒸散の計測は限定的であり、この結論は完全には支持されていない。また塩分濃度が最も高い、マングローブの海側の分布際での観測は、機器故障により限られた日数でしか計測が行えなかった。ここでの観測値では、日中の乾燥に伴う蒸散の抑制は観測されていないものの、晴天の日中であっても蒸散速度が日によって変動する結果が得られている。塩濃度の高い地点に生育することから、樹体にかかる陰圧も高く、潮位や塩濃度の変化次第では、吸水あるいは葉の生理特性が影響を受け、水を吸い上げられない事態が発生しているのかもしれないが、その判明にはさらなる観測データが必要である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

蒸散のための水の吸い上げに強い樹体内陰圧を必要とする汽水・海水域に生育する日本在来のマングローブが、真夏の高温化で強化される陰圧による損傷や、損傷回避のための蒸散抑制を行うのか、という本課題の大きな疑問について進展があった。マングローブ群落の中心部では、この地域の陸上他種では見られないほどの強い陰圧が観測されたものの、陰圧への強い耐性をもつことで損傷を回避し、日中の乾燥状態でも高い蒸散速度およびそれに必要な陰圧を発生させている実態が明らかになった。限られた種での計測結果ではあるものの、従来報告のあった、マングローブは大気の乾燥が強化される日中には蒸散を取りやめるという報告が、計測の人為的影響を強く受けていることを示唆し、生育条件下のマングローブの挙動を解明した貴重な知見を得られた。だがより塩分濃度との高い地点に生息する他種の挙動については、より強力な陰圧の発生や大気乾燥以外に起因する蒸散の抑制が観測されたものの、機器故障により限られた期間のデータしか収拾することができず、観測された現象の詳細を解明することができていない。こうした種では、温暖化に伴う成長の抑制や枝葉あるいは個体や群落レベルでの枯死が発生する可能性もある。在来のマングローブでの温暖化に伴う枯死の危険を評価する上で、こうした種の知見は不可欠であり、さらなるデータの収集が必要とされている。

今後の研究の推進方策

調査地のうち、海沿いのマングローブ分布域の際に設置した調査地での観測を実施する。故障したセンサーについては昨年度に新規センサーを設置しており、知見が必要とされている真夏の待機乾燥下での蒸散の実態を解明するための準備は整っている。また付近の気象データについても、これまで取られてきた大気環境のデータに加え、吸水域である海面について、水位高や塩分濃度のセンサー、また乾燥下で葉の陰圧を軽減する可能性のある葉面水の状態の指標である葉面濡れセンサーを設置する。また春先に一度しか観測できていない、この地点の葉の陰圧および陰圧への体制について、陰圧が最も強まる真夏のデータの収集を行う。これまでの観測で十分にデータが集まっておらず、また温暖化に伴う大気乾燥が蒸散や陰圧による樹体への損傷など、影響が最も顕著になると考えられるこの地点での観測を行うことで、日本に生きるマングローブの温暖化による枯死リスクの評価を行う。

報告書

(2件)
  • 2022 実績報告書
  • 2021 実績報告書
  • 研究成果

    (7件)

すべて 2024 2023 2022

すべて 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件)

  • [学会発表] 植物観察へのデジタルデバイスの導入2024

    • 著者名/発表者名
      宮沢 良行
    • 学会等名
      日本生態学会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [学会発表] Transpiration and plant hydraulics of mangrove along the land-sea gradient2023

    • 著者名/発表者名
      Yoshiyuki Miyazawa, Shin Watanabe, Haruhiko Taneda
    • 学会等名
      Annual meeting of American Geophysical Union 2023
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] Transpiration and plant hydraulics of mangrove in a brackish bay2023

    • 著者名/発表者名
      Yoshiyuki Miyazawa, Shin Watanabe
    • 学会等名
      2023 Ecological Society of America Annual Meeting
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] 「マングローブは水ストレス状態」の検証2023

    • 著者名/発表者名
      宮沢良行、渡辺信、種子田春彦
    • 学会等名
      日本マングローブ学会シンポジウム
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [学会発表] 干潟のマングローブの蒸散特性2023

    • 著者名/発表者名
      宮沢良行
    • 学会等名
      日本森林学会
    • 関連する報告書
      2021 実績報告書
  • [学会発表] 萌芽枝整理が行われたアラカシ株立ち個体の樹 液流速の変動2023

    • 著者名/発表者名
      渡部颯太・作田耕太郎・宮沢良行
    • 学会等名
      日本森林学会
    • 関連する報告書
      2021 実績報告書
  • [学会発表] Transpiration by estuary mangrove trees under changing evaporative demand2022

    • 著者名/発表者名
      Yoshiyuki Miyazawa, Shin Watanabe
    • 学会等名
      American Geophysical Union Annual Fall meeting 2022
    • 関連する報告書
      2021 実績報告書
    • 国際学会

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公開日: 2021-04-28   更新日: 2024-12-25  

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