研究課題/領域番号 |
21H02253
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40020:木質科学関連
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
船田 良 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20192734)
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研究分担者 |
梶田 真也 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (40323753)
半 智史 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40627709)
渡邊 宇外 千葉工業大学, 先進工学部, 教授 (70337707)
堀川 祥生 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (90637711)
山岸 祐介 北海道大学, 農学研究院, 助教 (80770247)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2023年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2022年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2021年度: 9,100千円 (直接経費: 7,000千円、間接経費: 2,100千円)
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キーワード | 木質バイオマス / 植物細胞壁 / 細胞骨格 / 樹木培養細胞 / 植物生体イメージング解析 / 生体イメージング解析 / 樹木細胞壁 / 管状要素 / セルロース / 細胞壁修飾構造 / リグニン |
研究開始時の研究の概要 |
再生可能な資源である木材など木質バイオマスの高度有効利用は、循環型社会を構築しSDGsの達成やパリ協定の遵守に貢献する。本研究では、複雑な細胞壁三次元構造を有する二次木部様細胞を樹木の培養細胞から直接誘導する新規モデル系を確立し、木材の材質を制御する細胞壁構造の形成や細胞壁成分の堆積・沈着機構を生体イメージング技術により明らかにする。得られる成果により、木材の形成機構に関する新規モデルを提唱する。
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研究実績の概要 |
再生可能な資源である木材など樹木が生産する木質バイオマスの高度有効利用は、循環型社会を構築し、SDGsの達成、パリ協定の遵守、バイオエコノミーの推進などにも貢献する。木材の高度有効利用のためには、材質特性を決定する樹木の二次木部細胞の分化過程、特に複雑な三次元構造を有する細胞壁の多様性の発現機構を解明することが不可欠である。本研究では、厚い二次壁と有縁壁孔やせん孔など修飾構造を有し、道管要素や仮道管などに形態が類似した二次木部様細胞を樹木の培養細胞から直接誘導する新規モデル系を確立し、細胞壁構造の形成機構や細胞壁成分の堆積・沈着機構を明らかにする。特に、細胞壁三次元構造の多様性、細胞骨格やセルロースの局在、細胞壁合成関連遺伝子の発現などを生体イメージング技術を駆使して解析する。ドロノキのカルスから管状要素への誘導率の向上や細胞壁構造の制御のため、培地の植物ホルモン条件を網羅的に検討し、誘導される管状要素は集団で存在し、高濃度のブラシノステロイドが管状要素の誘導に効果的であること、他の樹種とは異なる細長い管状要素が形成されることを明らかにした。また、広葉樹のトチノキにおいて、オーキシンとブラシノステロイドを組み合わせることにより、培養細胞からせん孔を有する管状要素を誘導することが出来た。トチノキの培養細胞は、複雑な細胞壁構造を有する二次木部様細胞を直接誘導出来ることから、細胞壁構造の制御機構を解析する上で優れた新規モデル系であるといえる。本研究の成果から、樹木の培養細胞から管状要素を直接誘導し、形態や構造を制御する際の植物ホルモンの有効性が明らかになった。一方、ポプラの培養細胞にGFP融合タンパク質を発現させて微小管の挙動を連続的に解析したところ、管状要素の分化に伴い微小管の配向・局在が大きく変化したことから、微小管が複雑な細胞壁構造のパターン形成を制御していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の主目的は、異なる樹木の未分化の培養細胞から形態や細胞壁構造が複雑で多様性を有する二次木部様細胞を直接誘導する新規モデル系を確立し、セルロースの堆積・局在機構など細胞壁3次元構造の発現機構を解析することである。現在までの研究により、交雑ポプラ、ドロノキ、トチノキなど広葉樹、スギ、トドマツ、イチョウなど裸子植物の培養細胞から、細胞全体に堆積した厚い二次壁や有縁壁孔、らせん肥厚、せん孔など複雑な修飾構造を形成する管状要素を安定的に誘導することに成功している。また、共焦点レーザ走査顕微鏡と蛍光抗体染色法を組み合わせたイメージング解析法やGFP融合タンパク質の発現系などを開発し、培養細胞内の細胞骨格の配向・局在の動的変化に関する知見も得られている。これまでに得られた成果は国内や国際学会で多く発表し、国際誌に論文として公表または投稿中である。また、教科書の執筆も行い成果を広く公表していることから、順調に研究が進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
広葉樹や針葉樹など系統が異なる樹木の培養細胞から、複雑な形態や細胞壁構造を有する二次木部様細胞を直接誘導する条件をさらに検討する。特に、モデル植物でありゲノム解析が進んでいるポプラの培養細胞からせん孔や有縁壁孔など複雑な構造を形成する新規誘導系を確立する。一方、トチノキにおいては、せん孔の形成の誘導に成功したので、複雑な細胞壁修飾構造の出現率がさらに増加する条件を確立する。一方、ポプラの培養細胞を用いてGFPで標識した細胞骨格の変化を解析し、セルロースミクロフィブリルの配向・局在の制御機構を動的に明らかにする。二次木部様細胞に沈着するリグニンの局在については、各種蛍光染色法と共焦点レーザ走査顕微鏡法を組み合わせたイメージング技術を確立し、さらにリグニン前駆体のプローブを駆使した生体イメージング技術によりリグニンの細胞壁中での動的な制御機構を明らかにする。さらに、培養細胞において分化特異的に発現するセルロース合成関連遺伝子の解析を進める。以上の研究結果から、樹木細胞壁の複雑な三次元構造の多様性の発現機構を明らかにし、木材の材質の制御機構を明確にする。得られる成果は、国内や国際学会等で発表するとともに、論文として広く公表する。
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