研究課題/領域番号 |
21H02267
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40030:水圏生産科学関連
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
斎藤 大樹 愛媛大学, 南予水産研究センター, 准教授 (90396309)
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研究分担者 |
三井 一鬼 岡山理科大学, 獣医学部, 助教 (20844773)
後藤 理恵 愛媛大学, 南予水産研究センター, 教授 (70399997)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2023年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2022年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 7,410千円 (直接経費: 5,700千円、間接経費: 1,710千円)
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キーワード | 不妊化 / 生殖細胞 / 海産魚 / 始原生殖細胞 / スマ / 生殖細胞質 / 紫外線照射 / 胚発生 / 分離浮性卵 |
研究開始時の研究の概要 |
海面養殖魚に「借腹生産技術」を導入し効率的な生産を行うためには、効率のよい不妊化・低任化技術の開発が急務である。本研究では、分離浮性卵を生むマグロ類のスマを主なモデルとし、「紫外線照射」による安全で効率的な不妊化・低任化誘導技術の確立を目指す。スマは、種苗生産から全生活史において、高度な養殖技術が要求されるデリケートな魚種である。この魚で不妊化・低任化技術が確立されれば、その技術は容易にその他の分離浮性卵性の養殖魚に展開可能である。
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研究実績の概要 |
本年度は、昨年度に引き続いてスマ生殖細胞質の詳細な解析および胚発生過程の観察を継続した。この研究では、透過型電子顕微鏡を使用してスマ受精卵の発生過程を詳細に観察した。その結果、生殖細胞質と考えられるミトコンドリアに富む電子密度の高い構造を発見した。これにより、スマにおいても母性的に供給された生殖細胞質が始原生殖細胞の形成に関与していることが示唆された。したがって、この特定の構造をターゲットにして紫外線照射を行うことで、生殖細胞を破壊する可能性があるというアイデアの妥当性が再び明らかにされた。
この結果を受けて、我々は生残率を高めつつ生殖細胞質のみを破壊できる紫外線照射装置の試作を行行った。核にダメージを与えることなく胚盤に照射できる複数の装置パターンを試作し、スマ胚に対して実際に照射を行った。さらに、RFP-nos3 3'UTR mRNAの顕微注入により始原生殖細胞を可視化することで、不妊化率および生残率の検証も行った。その結果、特定の条件下では目標とする効果が得られたと考えられる事例もあったものの、今年度の段階では安定した結果を得ることはできなかった。この結果はおそらく、胚と照射装置の位置関係の微妙な差が生じることにより、胚によって生殖細胞質や核への紫外線照射の程度にばらつきが発生したものと考えられた。
また、スマを用いた実験では産卵可能な時期が夏季に限定されるため、ゼブラフィッシュを用いた紫外線照射実験も同時に実施することとした。これにより、季節の制約を受けずに実験を進めることができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
天然環境や気象装置内でのスマ胚発生の解析、および生殖細胞質や生殖細胞の電子顕微鏡による解析など、スマの始原生殖細胞の発生過程の理解に関しては予定通り進展している。また、紫外線照射により始原生殖細胞数の減少を引き起こすことが可能であることをすでに示しており、装置の試作も継続していることから、研究は概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
スマの受精卵は夏季の繁殖期にしか得られないことから、より効率的に研究を行うために、淡水魚であり周年採卵が可能なゼブラフィッシュや、環境制御により年に2回採卵が可能なマダイの受精卵を研究に用いることを検討している。これらの魚種で効率的な不妊化条件を開発し、スマの実験にくわえて不妊化・低妊化個体の健全性の確認や成長特性解析を行う予定である。
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