研究課題/領域番号 |
21H02271
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40030:水圏生産科学関連
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研究機関 | 福井県立大学 |
研究代表者 |
杉本 亮 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 教授 (00533316)
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研究分担者 |
小森田 智大 熊本県立大学, 環境共生学部, 准教授 (10554470)
山田 誠 龍谷大学, 経済学部, 准教授 (50434981)
鈴木 啓太 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 助教 (80722024)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2021年度: 9,100千円 (直接経費: 7,000千円、間接経費: 2,100千円)
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キーワード | 海底湧水 / 一次生産 / 二次生産 / 沿岸海域 / 地下水 / 沿岸域 / 河口 |
研究開始時の研究の概要 |
沿岸海域の生態系サービスの持続性を高めるために、生態系機能の現状を診断し、統合的な修復・管理策を検討することが喫緊の課題である。地下水が供給する栄養塩量が河川水に匹敵することが近年明らかになっているが、地下水による栄養塩輸送量から二次生産を含む生物生産量までの物質フローを実証した研究はない。本研究は、環境特性が異なる有明海と丹後海を対象に、陸域視点から進める地下水動態研究と海域視点から進める生物生産研究を実施し、地下水の影響を含めた沿岸浅海域の生物生産機構を統合的に解明する。
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研究実績の概要 |
本年度は、若狭湾西部海域の丹後海において重点的にフィールド調査を実施し、有明海東部に位置する緑川河口域では、次年度以降のための予備的調査を行った。 【若狭湾】若狭湾西部海域の丹後海奥部(由良川河口域)において春季から夏季にかけて2週間ごと計8回の船舶観測を実施し、ヒラメ仔稚魚とその餌生物を採集するとともに海底湧水指標を含む環境データを同時に入手した。その結果、5月上旬(水温約16℃)から6月上旬(水温約20℃)にかけてヒラメ仔稚魚が比較的多く採集されたが、同時期にアミ類密度は急低下し、後期に出現したヒラメ仔稚魚は高水温・低餌料という成長・生残に不適な環境に遭遇していた。一方、同時期のクロロフィルa濃度に明瞭な変化は認められず、アミ類の食物となる植物プランクトンは減少していなかった。したがって、アミ類密度の急低下は、ヒラメ仔稚魚による捕食圧の増加やアミ類優占種ニホンハマアミの生理・生態の変化により引き起こされたと考えられた。一方、地下水トレーサーである222Rnは溶存態の無機窒素およびケイ素と有意な正の相関関係、塩分とは負の相関関係が認められた。丹後海奥部でも淡水性地下水が湧出しており、アミ類の食物となる植物プランクトン動態に対しても少なからず影響を及ぼしている可能性が示唆された。 【有明海】緑川河口干潟において係留系を用いた連続観測と室内実験を組み合わせ、植物プランクトンと底生微細藻類の高精度な基礎生産量の定量システムを構築した。また、詳細な二次生産量を求めるために、有明海では潮流が強いことから、移流による影響を推定する必要がある。そのため、被覆網を用いた流出防止実験に着手した。さらに、海底湧水の発生場所について現地視察を実施し、複数の調査定点において目視レベルで湧水が発生していることを確認するとともに、観測対象地域の地理的・地学的情報の収集を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【若狭湾】新型コロナウイルスの感染拡大を予防しながら、丹後海奥部におけるヒラメ仔稚魚の出現期間を通し月2回の頻度により合計8回の観測を計画通り実施することができた。ヒラメ仔稚魚については、計数、測長、個体識別までの処理を、餌生物については、計数までの処理を済ませることができた。環境分析については、アルカリ度の分析を除き、概ね終了した。 【有明海】初年度のうちに、生産量を定量するためのシステム構築および現地視察での情報収集から、海底湧水の湧出現象を捉えるための観測に使用する機器の検討を行なった。
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今後の研究の推進方策 |
【若狭湾】ヒラメ仔稚魚については、耳石日周輪解析により成長率と生残率の時間変化を、また、胃内容物分析によりアミ類摂食量の時間変化を明らかにする。アミ類優占種ニホンハマアミについても、胃内容物分析により植物プランクトン摂食量の時間変化を調べる。さらに、丹後海周辺での地下水の栄養塩環境等の観測を追加で実施し、地下水湧出量およびそれにともう栄養塩輸送量を定量することで、丹後海奥部におけるアミ類とヒラメ仔稚魚の生産動態を海底湧水と関連づけて解析していく。 【有明海】生物調査を継続しつつ、海底湧水の影響をより明確に把握するため、電気探査調査やラドン・ラジウム等を用いた観測を展開していく。
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