研究課題/領域番号 |
21H02306
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分41030:地域環境工学および農村計画学関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
澤田 豊 神戸大学, 農学研究科, 准教授 (60631629)
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研究分担者 |
中澤 博志 静岡理工科大学, 理工学部, 教授 (20328561)
竹川 尚希 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究員 (20828157)
小野 耕平 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 講師 (30804166)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,030千円 (直接経費: 13,100千円、間接経費: 3,930千円)
2023年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2022年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2021年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
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キーワード | ため池 / 豪雨 / 土石流 / 模型実験 / 数値解析 / ため池の廃止 |
研究開始時の研究の概要 |
豪雨が頻発化する近年,農村ではため池の決壊で,人命が奪われるなど甚大な被害が後を絶たず,ため池を廃止(堤体を撤去)する事例が増えている.一方,過去の豪雨では,上流からの土砂がため池に一時貯留された事例も報告されており,ため池の廃止による治水機能の低下も危惧されている.そこで,廃止を検討しているため池を治水施設として有効活用することを考え,貯留水による土石流の減勢と底泥土を用いた堤体補強を考案した.本研究は,ため池への土石流の流入と堤体への衝突挙動を解明するとともに堤体の安定性を検証し,廃止ため池を治水施設として有効活用するための設計法を確立することで,地域の防災・減災に貢献するものである.
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研究実績の概要 |
本研究は廃止するため池を治水施設として利用する方法を確立するため,土石流がため池内に流入した際の挙動ならびに堤体への衝突荷重を明らかにするものである.令和4年度には,実際の条件に近いため池貯水部を再現する目的で新たな実験水路および模型を作製した.前年度からの変更点として,貯水部の幅を拡大するとともに,流入傾斜部の勾配を45度から30度に緩くした.さらに前年度の直壁模型から斜面模型に変えるとともに,土石流の模擬材料として従来のセラミックビーズに加え,流木を模擬するため丸棒を使用した.実験では,斜面上部から模擬材料を流下させ,堤体模型に作用する圧力,水圧およびビーズの越流重量を計測した.また,貯水池内での土石流挙動や水位変化を観察するため,高速度カメラで撮影した.実験結果より,貯水により,堤体への衝撃が緩和され,土砂の越流量が抑制されることが示された.一方,貯水位に対して土石流の規模が大きい場合,貯水位の約2.5倍の孤立波が発生する可能性が示された. 上記実験ケースに加え,令和4年度には,廃止ため池を模擬するため,堤体をV字に開削した模型を対象とした実験を行った.基礎地盤まで開削した条件に加え,堤体を底上げした条件での実験を実施した.その結果,開削部の底上げにより,堤体への衝撃は増加するが下流への土砂流出を抑制できることが明らかとなった.また,開削された堤体上流側の貯水は,流木の流出抑制という面で効果は認められるものの,土砂の流出範囲の拡大や越水の可能性が示された. 上記土石流実験に加え,令和3年度に実施した基本実験を対象に3次元数値シミュレーションを実施した.その結果,土石流の流下および貯水池内への流入,流入後の移動の一連のプロセスを計算できたものの,流入後の移動距離について,実験と異なる結果となり,解析パラメータおよび条件の見直しの必要性が示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の実績報告書の推進方策で掲げたより現実的な条件での土石流実験については,上述の研究実績の概要に示す通り,概ね遂行することができた.この実験により,実際のため池貯水部に近い条件での土石流流入挙動を把握するとともに堤体への衝撃圧を定量的に示すことができた.また,廃止ため池を想定した模型実験を通して,ため池の開削が土石流の下流側流出に及ぼす影響を明らかにするとともに,開削部の底上げおよび貯水の残存が減災効果に与える影響を検討するなど,土石流実験については当初の計画以上に進展したと言える.一方,土石流実験を再現した数値シミュレーションについて,土石流の流入から水中での移動過程まで一連のプロセスを計算することはできた.しかしながら,流入後の土砂の移動距離について実験と異なった.このことから,数値シミュレーションについては,やや遅れていると言える.以上より,実験と数値シミュレーションの総合的な進捗状況として,おおむね順調に進展していると評価した.
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度に実施した廃止ため池を対象に行った土石流実験では,堤体が土石流の流下部直下の位置で一定の勾配で開削された場合について実施した.流下部から左右岸方向(堤体軸方向)にずらした位置に開削部を設けた場合や異なる開削勾配の場合,土石流の流出挙動は変化する可能性が考えられる.また,令和4年度の実験から,開削部の底上げにより土石流の流出量が抑制されることが明らかとなった.しかしながら,底上げ高さを一定(5cm)としており,底上げ高さと流出量の関係は明らかではない.そこで,令和5年度には,開削型の廃止ため池に着目し,開削部の位置,勾配,底上げ高さを変えた条件での追加実験を行う.これらの実験結果から,土石流を想定した場合についての最適な廃止ため池の開削方法を提案する. さらに,令和4年度に引き続き,土石流実験の数値シミュレーションを行う.解析パラメータおよび条件を変えた計算を行い,令和3年度の簡易な土石流実験との比較を行う.ある程度再現ができた段階で,より現実的な条件や廃止ため池に対する計算を行い,流入挙動の検討および減災効果の評価を行う. また,令和5年度は本研究課題の最終年度にあたるため,ため池の廃止方法について,減災効果やコストを含めた全般的な見地から評価および提案を行う.これに際しては,各自治体における現状のため池廃止に関して調査を行う予定である.
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