研究課題/領域番号 |
21H02312
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分41040:農業環境工学および農業情報工学関連
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
小川 幸春 千葉大学, 大学院園芸学研究院, 教授 (00373126)
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研究分担者 |
齋藤 高弘 宇都宮大学, 農学部, 教授 (50221990)
田村 匡嗣 宇都宮大学, 農学部, 助教 (60750198)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 9,230千円 (直接経費: 7,100千円、間接経費: 2,130千円)
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キーワード | 消化性 / 機能性 / 収穫後調製 / 加工 / バイオアベイラビリティ |
研究開始時の研究の概要 |
農作物収穫後の調製・加工には多くの場合,構造変化や熱的な操作を伴う.それらの操作条件は,例えば精米の程度が米飯の消化性に影響を与えることが知られている通り,最終製品の品質や消化性に関与する.本研究では,様々な農作物収穫後の工学操作およびその条件が,抗酸化活性など健康機能に関わる成分の消化特性に及ぼす影響の解明を目指す.本研究によりポストコロナ時代に対応した健康機能を有する食品の開発が期待できるようになる.
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研究実績の概要 |
農作物収穫後の調製・加工には多くの場合物理的な操作,特に熱的な操作を伴う,その結果,大小の物理的な構造変化や含有成分の変化が生じる.それら操作時の条件も,例えば精米の程度が米飯の消化性に影響を与えることが知られている通り,最終製品の品質や消化性に関与する.本研究では,in vitroの模擬消化系を用いた植物性食品含有成分の動的な消化性評価法(バイオアベイラビリティ評価)により,ポストハーベスト工学操作の方法や条件が植物性食品の健康機能性に関わる含有成分の変化および消化性に及ぼす影響の解明を目的とする.2022年度は実際の調製,加工工程を経た事例として,収穫された生モミに対する湿熱加熱操作が炊飯後の糖質消化性に及ぼす影響,梅干しの加工工程における機能性成分の変化,茶葉の機械製茶工程における操作条件が緑茶飲料の機能性に及ぼす影響を調査,検討した.コメの乾燥調製に関する課題では,乾燥調製前の生モミに湿熱加熱操作を加えると炊飯後の糖質消化性が変化し,温度や処理時間などの操作条件が変化の程度に関与することを明らかにした.梅干しの加工工程に関する課題では,梅果実の塩漬けのみ,およびシソ漬を加えた場合それぞれの健康機能に関わる属性を調査,検討した.一方,機械製茶工程に関する課題では,茶葉の乾燥を促すための粗揉操作および揉捻操作の操作条件が緑茶飲料の健康機能に及ぼす影響を調査した.また,製茶機械の処理サイズが茶葉の品質および緑茶飲料の健康機能性との関係についても調査,検討した.いずれの課題も収穫後の調製・加工条件がそれぞれの最終製品の健康機能性に影響を及ぼすことを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
①収穫後の生モミに対する湿熱加熱操作が炊飯後の糖質消化性に及ぼす影響に関する研究:収穫後の生モミに対して高温高湿空気あるいは温湯による湿熱操作を付加したのち,定法に従って乾燥,脱ぷ,精米,炊飯して得られた米飯は,通常乾燥した米飯と比較して糖質消化性は抑制されることが明らかになった.その抑制効果は,湿熱加熱の温度条件が60℃以上の場合にのみ確認された. ②梅干しの加工工程における機能性成分変化に関する研究:梅の実から梅干しを加工する際,果実の乾燥,塩漬け,再乾燥により得られる白干梅干し,および塩漬けした赤シソジュースを白干梅干しに添加した赤梅干し,それぞれの機能性成分を分析し,それらを模擬消化した場合の抗酸化活性変化も調査,検討した.その結果,赤シソが含有するロズマリン酸およびカフェイン酸が梅干しの抗酸化活性に関係することが明らかとなった.さらに模擬消化試験によって機能性成分の変化を調査した結果,梅干しの抗酸化活性には梅果実のバイオアベイラビリティよりも赤シソの含有成分の方が大きく関与していることが明らかとなった. ③機械製茶による茶葉の乾燥加工が緑茶茶葉および緑茶飲料の機能性に及ぼす影響に関する研究:緑茶茶葉の収穫後乾燥調製工程で茶葉の性質により大きな影響を及ぼしていることが判明した粗揉および揉捻工程の処理条件を段階的に変更して茶葉を乾燥加工し,試験的に得られた茶葉の熱湯に対する成分溶出性を調査検討した.その結果,粗揉工程における処理温度,および揉捻工程の処理時間は,乾燥後の茶葉の熱湯抽出による成分溶出性に影響を及ぼすことを明らかにした.日本の製茶では一番茶以外にも二番茶,秋冬番茶など収穫時期の異なる茶葉を利用することがあるため,それら収穫時期の違いが茶飲料の健康機能性に及ぼす影響についても引き続き調査,検討する.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は以下の通り. ①米飯の糖質消化性に関する研究:収穫後の乾燥調製加工操作,特に加熱処理条件が炊飯後の糖質消化性に及ぼす影響を検討する.具体的には収穫後の生モミをマイクロ波などで熱処理し,付加温度と加熱時間をパラメータとして精米,炊飯された米飯の糖質消化性を調査する.これにより生モミに対する熱負荷と糖質消化性の関係を明らかにする. ②発酵処理と食品のバイオアベイラビリティの関係に関する研究:甘酒や糠漬けなど発酵食品を加工する際の温度や時間などの発酵条件をパラメータとし,発酵過程における糖質消化性や抗酸化活性の変化を解析する.これにより加工操作としての発酵処理が食品の健康機能性に及ぼす影響を明らかにする. ③カット野菜の保蔵条件と模擬消化時の機能性の関係に関する研究:カット野菜の保蔵条件が模擬消化過程における抗酸化活性変化に及ぼす影響を検討する.特に,保蔵日数の経過に伴う野菜組織の軟化や変色が,消化過程における抗酸化活性変化などのバイオアベイラビリティに及ぼす影響を評価,検討する. ④茶飲料の機能性とバイオアベイラビリティの関係に関する研究 模擬消化試験系を適用して,機械製茶による各工程での操作条件が茶葉および茶飲料の抗酸化活性変化に及ぼす影響を検討する.特に機械製茶の粗揉および揉捻工程における操作条件が茶飲料のバイオアベイラビリティに及ぼす影響を評価,検討する.また栽培・収穫時期の異なる茶葉の機械製茶による健康機能性変化についても併せて検討する.
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