研究課題/領域番号 |
21H02333
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分41050:環境農学関連
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
足達 太郎 東京農業大学, 国際食料情報学部, 教授 (50385506)
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研究分担者 |
小路 晋作 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (10447683)
新谷 喜紀 南九州大学, 環境園芸学部, 教授 (50389574)
五野 日路子 東京農業大学, 国際食料情報学部, 助教 (80774348)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2021年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
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キーワード | 越境性害虫 / 圃場生態 / 地域景観 / 耐寒性 / 食料安全保障 / アフリカ / 宮崎 / 圃場環境 / アジア・アフリカ |
研究開始時の研究の概要 |
近年、原生息地であるアメリカ大陸から、日本列島をふくむアジア・アフリカに侵入した作物害虫ツマジロクサヨトウについて、各侵入個体群の生理生態学的特性と被害の実状をあきらかにする。本種は大規模単作栽培が主流であるアメリカでは作物に壊滅的被害をおよぼす歴史的大害虫として知られてきたが、比較的小規模な多品目栽培が一般的なアジア・アフリカにおいて、どのような生態的・社会的インパクトをあたえるのか不明である。そこで各侵入地域の在来農業システムが本種個体群の生態にどのような影響をおよぼすのかをあきらかにし、各地域の自然的・社会的環境に適応した害虫管理手法を提言する。
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研究実績の概要 |
原生息地であるアメリカ大陸から近年全世界に分布をひろげているツマジロクサヨトウ(以下、ツマジロ)について、2021年度(コロナ禍による繰越期間をふくむ予算年度)の研究実績の概要は以下のとおりである。 ①侵入個体群の分子系統解析および生理生態学的特性:ガーナ北部およびマラウイ中・北部のトウモロコシ圃場において、ツマジロをふくむと予想される害虫群集の個体群密度を調査した。採集した個体群は現在、現地研究機関の協力のもと分子系統学的解析を実施中である。いっぽう宮崎県に侵入したツマジロの圃場個体群について、捕食寄生性の土着天敵を探索した結果、おもにヒメバチ科の一種による寄生率が高かった。またツマジロの耐寒性をしらべるため、宮崎県内の圃場で冬季に蛹の放飼実験をおこなった。 ②侵入地域における圃場環境と耕作システムが害虫個体群におよぼす影響:ケニア西部に侵入し、トウモロコシを加害するツマジロと在来の主要害虫であるズイムシ類の両個体群のあいだで相互にどのような影響があるのか、また土着の寄生蜂類がツマジロ個体群にどのような影響をおよぼしているのかを解明するため、予備的な調査をおこなった。その結果、害虫個体群の密度はいずれも降雨量に依存し、降雨が少ない時期にはツマジロクサヨトウが、多い時期にはズイムシ類が優占する傾向があることがわかった。 ③侵入地域における害虫管理システムおよび食料安全保障体制:マラウイ中・北部の農村において、トウモロコシを生産する農民に対して聞きとり調査をおこなった。質問項目として作付面積や収量のほか、作物生産の阻害要因としてもっとも重要と思うのものを順にあげてもらった。またインフォーマントが実際に管理している圃場で害虫個体群密度を調査した。その結果、生産阻害要因として上位にあがったのは肥料不足や天候不順であり、害虫による被害を上位にあげる農民は比較的少なかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「①侵入個体群の特性」については、ガーナ・マラウイ・宮崎県などで害虫のサンプルを確保でき、未完了ではあるものの、分子系統解析や耐寒性についての実験を現在おこなっている。「②侵入地域における圃場環境と耕作システム」はコロナ禍により現地調査が当初計画した時期に実施できなかった。しかし一部の調査についてはその後、予算年度の繰越期間に調査を実施することができた。「③侵入地域における害虫管理システムおよび食料安全保障体制」については、やはりコロナ禍により計画どおり実施できなかったが、繰越期間中に予備的な調査をおこない、今後本格的な調査の実施に道筋をつけることができた。 以上のことから、本研究課題全体としておおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
①侵入個体群の分子系統解析および生理生態学的特性:各調査地の圃場で採集したツマジロの各個体群について、先行研究で有効な結果がえられているmtDNAのCOI領域や核遺伝子ゲノム上のTpi遺伝子などをPCRで増幅し、塩基配列を決定して各地域集団間の系統関係を解析する。また温帯地域へのさらなる進出の可能性や害虫としての特性を検証するため、耐寒性や相変異の発現機構について各種の実験をおこなう。 ②侵入地域における圃場環境と耕作システムが害虫個体群におよぼす影響:ケニア西部の3つの調査地にて、耕作システムと気候条件がツマジロおよび在来のズイムシ類と天敵(寄生蜂類)の個体群におよぼす影響について調査することにより、以下の項目についてあきらかにする。1)侵入害虫による在来害虫個体群の競争排除、2)害虫種の種構成に降雨がおよぼす影響、3)寄生蜂の種多様性に耕作システムがおよぼす影響、4)トウモロコシにおける被害と害虫および寄生蜂の多様性との関係。 ③侵入地域における害虫管理システムおよび食料安全保障体制:ガーナ北部およびマラウイ中・北部にて、ひきつづき農民から聞きとりをおこない、侵入害虫と在来害虫とそれらによる作物被害についての認識を調査する。マラウイにおいては、害虫の発生に対処するための事前・事後をふくめた管理体制と世帯および集落レベルでの食料安全保障体制にかんする実態をあきらかにし、ツマジロをふくむ農業害虫のインパクトに対する強靭性を評価する。
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