研究課題/領域番号 |
21H02348
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42010:動物生産科学関連
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
有原 圭三 北里大学, 獣医学部, 教授 (00175994)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2022年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2021年度: 9,490千円 (直接経費: 7,300千円、間接経費: 2,190千円)
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キーワード | プロテオリシス / メイラード反応 / ペプチド / 香気成分 / 食肉 / 嗜好性 / 保健的機能性 / メタボローム解析 |
研究開始時の研究の概要 |
食肉の熟成中に、タンパク質から保健的機能を有するペプチドが生成する。さらに、食肉の加熱(加工・調理)時には、メイラード反応によりペプチドから好ましい香気成分が生成する。このような香気成分中には、食欲増進等の生理的作用をもたらすものがある。本研究では、家畜(牛・豚)の飼育段階から食肉の加工・調理に至るまでを俯瞰し、食肉の美味しさと保健的機能性の両者に迫る。とくに、骨格筋プロテアーゼ活性と要因解析、食肉中ペプチドの定性・定量、熟成条件とペプチド生成の関係解明、生成ペプチドのメタボローム解析、ペプチド生成・嗜好性・保健的機能性の関連解析、ペプチド由来の加熱生成香気の機能解析の6項目を中心に検討する。
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研究実績の概要 |
食肉の熟成では、筋肉タンパク質のプロテオリシスにより、ペプチドが生成する。このとき生成するペプチドの中には、保健的機能を有するものが少なからず存在する。また、食肉中に生成したペプチドからは、加熱調理・加工に伴うメイラード反応により、好ましい風味成分ももたらされる。このようにして生成される香気成分の中には、嗜好性向上に寄与するもの以外に、生理機能を有するものがある。一連の研究成果を背景として、本研究では、牛肉や豚肉といった食肉の嗜好性と保健的機能性を向上させる技術の開発を目指している。 家畜の筋肉(骨格筋)から、食品としての食肉への過程において、とくに重要である熟成過程に注目した結果、熟成程度と生理活性ペプチドの生成の間には、明確な関連があることを明らかにした。このような関係は、長期熟成ハムのような食肉製品においても見いだされた。得られた検討結果から、とくに、Leu-Lys、Lys-Leu、Ala-Trp、Leu-Tyrといった食肉タンパク質由来のジペプチドに注目し、抗酸化作用を中心とした機能の解析を進めた。とくに、線虫(C. elegans)を用いた実験系により、興味深い作用を見出した。ジペプチドは、発酵法による合成が比較的容易であるため、産業的な利用可能性も高いと考えている。 一方、食肉の調理や加工における加熱過程において重要な化学反応であるメイラード反応には、プロテオリシスにより生じたアミノ酸やペプチドの存在が大きな影響を及ぼす。メイラード反応により生成する食肉由来の化合部は多岐にわたるが、申請者らはとくに香気成分に注目して検討を進めてきた。その結果、2,5-dimethyl-4-hydroxy-3(2H)-furanoneを中心に、リラックス作用など興味深い生理機能を有することを見出している。このような成果に基づき、現在、香りの機能性食品の開発を目指している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、①筋肉タンパク質のプロテオリシスにより生成するペプチドと、②メイラード反応により生成する香気成分に注目し、嗜好性と保健的機能性の向上技術確立を目指したものである。現在までの進捗状況を概観すると、これらの2点に関して貴重な研究成果をあげることができたと、自己評価している。研究計画の細部においては、やや遅れている部分もあるが、一方で、予想外の好結果を得ている部分もある。とくに、線虫(C. elegans)を用いたアッセイ系による抗酸化・抗老化作用の評価は、当初の研究計画には記載しなかったが、注目に値する成果が得られ、学術論文として公表することもできた。
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今後の研究の推進方策 |
1年目および2年目に得られた食肉タンパク質由来のペプチドとペプチドからメイラード反応により生成する香気成分に関する情報を基に、ペプチドや香気成分の抗酸化作用などの保健的機能解明に関して、多角的にアプローチしたいと考えている。そのうえで、すでに一定の成果が得られている部分については、学術論文としての公表を進めたい。
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