研究課題/領域番号 |
21H02351
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42020:獣医学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山崎 淳平 北海道大学, 獣医学研究院, 准教授 (20732902)
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研究分担者 |
木之下 怜平 北海道大学, 獣医学研究院, 特任助教 (30761150)
松本 悠貴 アニコム先進医療研究所株式会社(研究開発課), 研究開発課, 研究員 (40831384)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2022年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2021年度: 9,360千円 (直接経費: 7,200千円、間接経費: 2,160千円)
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キーワード | DNAメチル化 / エピジェネティクス / 早期診断 / 微小残存病変 / 癌 / ゲノム |
研究開始時の研究の概要 |
伴侶動物における悪性腫瘍は完治に至ることは困難であり、治療法そのものの改良では限界がある。そこで本研究では治療指針そのものを刷新するアプローチとして、眼に見えないレベルの腫瘍(微小病変)を検出する。 本研究では、各種腫瘍における異常DNAメチル化を新規に同定し、血漿中DNAを利用した微小残存病変検出および超早期診断法を確立する。 これによる微小残存病変レベルの算定と経時的なフォローアップによる新規治療指針の策定から寛解期間の延長など治療成績向上を目指し、また臨床的な腫瘍診断よりも早期の腫瘍微小レベルを発見する超早期診断を試みることで、伴侶動物の腫瘍フリーライフの達成に挑戦する。
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研究実績の概要 |
イヌの悪性黒色腫における特異的なDNAメチル化の変化を血漿中セルフリーDNAに応用し、次世代シークエンサーを用いて微小な腫瘍細胞を検出することによってイヌの悪性黒色腫の早期発見および治療後の新規方針策定につなげるため、R4年度は以下の項目について検討を行った。
1. 腫瘍症例の臨床的評価・検体収集:北海道大学動物医療センターに来院する犬のリンパ腫および悪性黒色腫の症例、肛門嚢腺癌や移行上皮癌症例を追跡、組織サンプルを採取、また血漿を収集し凍結保存した。2. 解析候補メチル化領域の選抜:前年度の結果から、悪性黒色腫に関しては5か所のCpG配列に絞り込んである。その他の疾患については、特異的CpG配列の同定をすすめている。3. 症例サンプルのバイサルファイトターゲットシークエンス:悪性黒色腫の異なる症例および異なる日付ごとにそれぞれの5か所のPCR産物を混合後、次世代シークエンスによってデータを得た。この結果、各サンプルにおける1つのターゲット毎に数百万リードのデータを得られ0.0001%のメチル化を定量可能であることを確認した。また、クリーンベンチの導入により、2ndステップPCRにおけるコンタミネーションを大幅に減少させることができた。4. 臨床的評価との相関解析:悪性黒色腫8症例における延べ22個の異なる症例かつ異なる日付の血漿サンプルについて、上記5か所のDNAメチル化定量を行った。このうち、数症例において同時に評価した腫瘍の進行度とDNAメチル化レベルとの相関がみ見られ、その変化幅は0.2%-1%ほどであった。これは、本研究で進めている定量感度によって初めて検出可能な微小な変化であり、想定していた仮説が正しいことが示唆されている。現在、同様な相関がより多くのサンプルで見られるかどうかサンプル数を増やしている。5. 超早期診断への応用:一次病院における同一個体の数か月~1年毎の定期健康診断サンプルを経時的に収集中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. 血漿セルフリーDNAを用いた高深度(高カバレッジ)なDNAメチル化定量によって、期待していた病状に相関したDNAメチル化の変化が数症例において認められた。また、サンプルの処理から解析までに渡るプロセスを確立し、環境整備を含めたハイスル―プット系の実現を目指している。 2.一方で、病状との相関が認められた症例がまだ数症例であるため、その一般性を見いだせていない。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果によって、イヌの悪性黒色腫における血漿セルフリーDNAの高感度なDNAメチル化定量が可能となり、同一症例におけるDNAメチル化変動が病状と相関していることが判明した。今後も悪性黒色腫やその他の腫瘍症例の血漿サンプル収集も継続していき、それぞれの腫瘍に特異的なDNAメチル化変化を用いた早期診断、治療後因子の樹立を念頭におき研究を推進していく。
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