研究課題
基盤研究(B)
硫酸化コレステロール(Cholesterol sulfate: CS)はRac活性化因子DOCK2の内因性阻害因子として働き、免疫細胞の遊走をブロックすることで眼の組織特異的免疫回避(免疫特権)に寄与している。CSを産生する酵素SULT2B1bは様々ながん種で高発現していることから、CSは腫瘍の免疫回避にも寄与する可能性が高い。本研究は、CSを介した腫瘍免疫特権の全容を解明すると共に、新たな抗がん剤シードとしてCS産生阻害剤を開発することを目的とする。本研究の成果は、腫瘍免疫をターゲットにした新しい治療薬の創出につながることが期待される。
がん免疫療法に対する抵抗性獲得の一因となる新たながんの免疫回避機構として、コレステロール硫酸(CS)とその産生酵素SULT2B1を同定した。CSはSULT2B1を発現するがん細胞から放出され、腫瘍微小環境において免疫抑制性の化学的バリア(免疫特権)を形成し、T細胞の腫瘍内浸潤を阻止している。ヒト臨床データの解析から、SULT2B1遺伝子発現は複数のがん種において患者予後不良や免疫機能低下と高い相関を示すことを見出した。独自のスクリーニングで得られたSULT2B1阻害剤はがんのCS産生を抑制し、免疫療法抵抗性を解除し、腫瘍免疫を賦活化することを実証した。
本研究は、がん細胞によって産生されるコレステロール代謝産物が腫瘍微小環境において免疫抑制性の化学的バリア(免疫特権)を形成し、がんの免疫逃避に働くことを初めて明らかにした。独自のスクリーニングで見出したCS産生酵素SULT2B1の阻害剤は、がん免疫を賦活化し免疫チェックポイント阻害や抗原特異的T細胞療法に対する抵抗性を解除した。臨床データ解析によって複数のがん種ではSULT2B1発現と患者の予後不良や免疫機能低下の間に高い相関が示された。すなわち、本研究によって新たながんの免疫逃避機構の一つが解明され、がん免疫療法に対する抵抗性を解除する手法の一つとしてSULT2B1阻害の有用性が示された。
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