研究課題/領域番号 |
21H02449
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43040:生物物理学関連
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
朴 三用 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 教授 (20291932)
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研究分担者 |
渡士 幸一 国立感染症研究所, 治療薬・ワクチン開発研究センター, 総括研究官 (40378948)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
2021年度: 8,320千円 (直接経費: 6,400千円、間接経費: 1,920千円)
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キーワード | 新型コロナウイルス / Xタンパク質 / 構造生物学研究 / Nタンパク質 |
研究開始時の研究の概要 |
SARS-CoV-2は2020年3月にWHOによりパンデミックとして認定され世界中に広がり、感染による死亡者は数多く、国内外の製薬社や研究機関により、ワクチンやin-silico手法による創薬開発は活発に行われているが開発までには時間がかかる事とウイルス関する学問的な知見が足りない。本計画班の目指すSARS-CoV-2のNタンパク質の構造やウイルスの増殖機構解明は、それを基に細胞内でのウイルス増殖現象の制御・治療・創薬スクリーニングという広大な新分野の開拓を先導するものであり、かつ学術面で独創的な新領域の研究分野であると言える。
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研究実績の概要 |
人類は21世紀に入り、2002年の重症急性呼吸器症候群(SARS)、2012年の中東呼吸器症候群(MERS)を経験しており、何れもコウモリが原因であると報告されている。その後、2019年末には、SARS-CoV-2は中国の武漢で呼吸器疾患のアウトブレイクを引き起こした。当初は動物からヒトへの拡散が示唆されたが、のちにヒトからヒトへの伝播が発生していることが明らかになった。コロナウイルス(Corona virus: CoV)は一本鎖RNAウイルスで、ヒトへの感染が確認されているCoVは7種類(229E, NL63, OC43, HKU1, SARS, MERS, COVID-19)存在している。これらのCoVに感染すると様々な重症度の呼吸器症状を発症する。初期に発見されたHCoV-OC43とHCoV-229Eは、風邪のような症状を引き起こし、その他の5つのCoVはより重度の呼吸器感染症を引き起こす。現在、世界中で猛威をふるっているSARS-CoV-2は、コウモリが持っているCoVが野生動物を通じて人間にうつったと考えられている。SARS-CoV-2に感染すると、中等度~重症の呼吸器症状がみられ発熱、咳、呼吸苦を起こす。現在、SARS-CoV-2感染症の流行により約600万人(2022年度末)の患者が死に至っているが、未だに有効なワクチンや治療薬の開発は確立されておらず、世界中から強く望まれている。今後、SARS-CoV-2の生物学的な感染機構解明や、合理的で有効な治療薬の開発を急務とされている。 今年度では、ウイルスRNAアセンブリーの安定化に関わっているNタンパク質の構造解明によるウイルスの増殖機構解明を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Nタンパク質はアミノ酸419残基を持つ分子量約50kDa.の一つのペプチドとして、RNA結合や二量体形成ドメインから成り、全長での大量発現系構築には難問とされている。その難問に対し、申請者はタンパク質の大量発現系構築のため、DNA遺伝子コドンを大腸菌優勢コドンで最適化を行なった。その発現系は、大腸菌、酵母、無細胞タンパク質発現系、昆虫細胞(sf9)など様々な発現ベクターで確認を行なった結果、全長(アミノ酸419残基)での大量生産に成功した。その結果、Nタンパク質は8量体として機能している事が分かった。さらに、ssRNA(single-stranded RNA)10残基(ポリU; ウラシル)を合成し、Nタンパク質と複合体の作製にも成功した。Nタンパク質の複合体の分子量は約450kDa.になり、Cryo-EMの単粒子解析には最適な試料である。また、自動結晶化ロボット分注システムによるNタンパク質の複合体での結晶化の条件検討を行った。約1000条件程度の条件検討を行った結果、0.1M-クエン酸ナトリウム pH5.0, 10%(w/v) PEG20K条件で、ポリ微結晶が得られた。この結晶化条件の結晶のシード結晶を用いて、良好な結晶作製を行った。様々な条件化で、結晶の大きさは平均30ミクロンの結晶を得た。今後、これらの結晶の結晶性確認を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
SARS-CoV-2は2020年3月にWHOによりパンデミックとして認定され世界中に広がり、感染による死亡者(2020年7月)は100 万人を超えた。国内外の製薬社や研究機関により、ワクチンやin-silico手法による創薬開発は活発に行われているが開発までには時間がかかる事とウイルス関する学問的な知見が足りない。その中、研究代表者は感染病や関連タンパク質の構造生物学研究を中心として、先駆的に業績を積み上げてきたものであり、構造生物学分野では独壇場である。 本研究はSARS-CoV-2のNタンパク質の構造やウイルスの増殖機構解明を目指しており、それを基に細胞内でのウイルス増殖現象の制御・治療・創薬スクリーニングを目指す。また、今後、感染病のウイルスタンパク質の構造生命科学的解析を基盤とした先端的・先導的な医学・薬学領域の創出と、それに基づく広範で多彩な応用展開に繋がることが期待できる。 今年度で、Nタンパク質と複合体の作製しており、今後、結晶化による構造解明を目指す。単結晶の作製条件が決まった段階で、大型放射光施設SPring8及びPhoton FactoryでX線回折実験を行う予定である。さらに、複合体の試料により、Cryo-EMの単粒子解析にも試みる。
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