研究課題/領域番号 |
21H02458
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43050:ゲノム生物学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
中山 啓子 東北大学, 医学系研究科, 教授 (60294972)
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研究分担者 |
舟山 亮 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (20452295)
細金 正樹 東北大学, 医学系研究科, 助教 (30734347)
中川 直 山陽小野田市立山口東京理科大学, 薬学部, 講師 (30707013)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2022年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2021年度: 7,150千円 (直接経費: 5,500千円、間接経費: 1,650千円)
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キーワード | SETD5 / 抗癌剤 / 細胞増殖 / エピゲノム / 膵臓癌 |
研究開始時の研究の概要 |
抗癌剤によって癌細胞は増殖を停止するが、長期投与によって耐性を獲得しその有効性が失われる。抗癌剤の一種である MEK阻害剤で膵臓癌細胞株を処理すると増殖が抑制され、長期間処理により増殖能の回復が観察されるが、その時SETD5が活性化していることが報告されている。そこで、私たちは、MEK阻害剤によるSETD5の活性化メカニズム、SETD5の活性化による増殖能回復のメカニズムを明らかにしたい。この研究によって、抗癌剤の耐性獲得の分子基盤を明らかにすることができると考えている。そして耐性が生まれないような抗癌剤の開発につなげたい。
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研究実績の概要 |
膵臓がん由来のRAS活性化型変異細胞(以降 PancCAと記載)のMEK阻害薬処理によって得られる阻害薬耐性細胞では、SETD5のタンパク質発現量が著しく増加することが報告されていた。 この報告の再現性と汎用性の確認を行うために、マウス膵臓がん由来のRAS活性化型変異細胞(KPC・AK4.4)を用いて実験を行った。MEK阻害薬またはHDAC3阻害薬を添加し3日から12日間培養した。形態の変化や増殖の低下が観察されたものの、その時のSETD5タンパク質蓄積を誘導することができなかった。これまでの報告では、MEK阻害薬耐性はSETD5タンパク質の蓄積に伴うエピゲノム変化によると報告されていたがその現象が認められていない。実験条件が多少異なっていたが、一般論としてRASの変異により増殖が活性化している腫瘍においてMEK阻害薬抵抗性獲得に、SETD5の発現量の変化は貢献してはいないとの結論に至った。 そこで、SETD5のRAS活性化型変異細胞における機能を調べるためにCRISPR-Cas9システムを用いて、SETD5を持たないRAS活性化型変異細胞を作製した。In vitro の培養系では、これらの細胞に明らかな増殖の違いや、MEK阻害薬に対する感受性の違いを見出すことはできなかった。次にそれらの細胞を同種移植することによって、in vivo での腫瘍の増殖能を調べた。腫瘍の増殖能、病理学的な解析に加えてトランスクリプトーム解析を行い、SDTD5欠失による腫瘍増殖に対する影響を細胞増殖とアポトーシスの観点から解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膵臓がん由来のRAS活性化型変異細胞のMEK阻害薬処理によって得られる阻害薬耐性細胞では、SETD5のタンパク質発現量が著しく増加することが報告されていた。しかし膵臓がん由来のRAS活性化型変異細胞(KPC・AK4.4)を、MEK阻害薬またはHDAC3阻害薬を濃度をいくつか調整して添加し3日から12日間培養し、MEK阻害薬またはHDAC3阻害薬に抵抗性のある細胞の取得を試みた。これらの細胞では増殖の低下を観察することができたもののSETD5タンパク質蓄積を誘導することはできなかった。この時点で、当初の研究計画を大幅に見直すことが必要となった。 そこで、SETD5のRAS活性化型変異細胞における機能を調べるために、CRISPR-Cas9システムを用いて、SDTD5を持たないRAS活性化型変異細胞を作製した。In vitro の培養系では、これらの細胞に明らかな増殖の違いや、MEK阻害薬に対する感受性の違いを見出すことはできなかった。それらの細胞を同種移植することによって、in vivo での腫瘍形成能力を検索した。腫瘍形成能は、体外より経時的に腫瘍を計測し、一定期間ののちに、腫瘍サンプルを取得して、病理学的検査を行うことに加えて細胞増殖能やアポトーシスを調べた。さらにトランスクリプトームを行うことで、SDTD5欠失による表現型の探索を行うこととして、堅実にデータの取得を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、昨年度得られたトランスクリプトームデータの解析と、その結果得られるSETD5が調節している転写のメカニズムを明らかにすることを目標とする。SETD5の野生型と欠失細胞との比較に加え、in vitro培養下のSETD5欠失細胞とin vivoの差を調べる。In vitro での培養と3D腫瘍内では、細胞外の増殖シグナル強度が異なることが予想される。そのことを念頭に増殖シグナル下流で制御されている分子の発現に注目して解析を進める。 腫瘍増殖に効いていることが予想されるシグナルパスウェイが想定されれば、それらのパスウェイを遺伝学的または薬理学的に制御することで、その因果関係の検証を行う。また、今回の研究は膵臓がんを中心に行っているが、他の癌腫についても得られた知見を拡張することで、SETD5の腫瘍における機能の一般性についても検討する。今後は、昨年度得られたトランスクリプトームデータの解析と、その結果得られるSETD5が調節している転写のメカニズムを明らかにすることを目標とする。SETD5の野生型と欠失細胞との比較に加え、in vitro培養下のSETD5欠失細胞とin vivoの差を調べる。In vitro での培養と3D腫瘍内では、細胞外の増殖シグナル強度が異なることが予想される。そのことを念頭に増殖シグナル下流で制御されている分子の発現に注目して解析を進める。 腫瘍増殖に効いていることが予想されるシグナルパスウェイが想定されれば、それらのパスウェイを遺伝学的または薬理学的に制御することで、その因果関係の検証を行う。また、今回の研究は膵臓がんを中心に行っているが、他の癌腫についても得られた知見を拡張することで、SETD5の腫瘍における機能の一般性についても検討する。
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