研究課題/領域番号 |
21H02463
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43050:ゲノム生物学関連
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
川上 浩一 国立遺伝学研究所, 遺伝形質研究系, 教授 (70195048)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2023年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2022年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2021年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
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キーワード | ゼブラフィッシュ / 遺伝子トラップ / トランスポゾン / 脳神経機能 / 遺伝学 / 神経科学 / 光遺伝学 / 終脳 / エピソード記憶 / 空間学習 / 神経毒素遺伝子 / Gal4-UAS法 |
研究開始時の研究の概要 |
ゼブラフィッシュは、モデル脊椎動物として基礎生物学研究から医学・創薬研究まで、世界中でさかんに用いられている。我々は、ゼブラフィッシュにおいてトランスポゾン転移技術、遺伝子トラップ法、Gal4-UAS法等の重要な方法論の開発に成功してきた。本研究では、それらの方法論を駆使し特定の脳神経回路にGal4を発現するトランスジェニックフィッシュ系統を樹立し、神経回路の活動イメージング、機能阻害実験等を行うことにより、脊椎動物に共通して重要な記憶・学習行動を司る機能的神経回路を解明することを目的とする。また、遺伝子トラップスクリーニングを継続して実施し、国際的研究拠点の構築を目指す。
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研究実績の概要 |
発生過程において哺乳類の終脳の外套は神経管の膨出(evagination)により形成されるが、魚類の終脳の外套は外翻(eversion)により形成される。このため、対応する機能領域の形態・配置は異なったものとなる。魚類終脳において、形態学的考察によって情動学習や空間学習に重要とされている哺乳動物脳の扁桃体や海馬に対応する領域が推定されてきたが、神経回路レベルでの機能的解析はなされてこなかった。本研究では、未知であるゼブラフィッシュ 終脳のエピソード記憶および空間学習を司る(哺乳類脳の海馬機能を担うと考えられる)神経回路を明らかにすることを目的とした。 (1)我々が独自に開発してきたトランスポゾンを用いた遺伝子トラップ法を用いてスクリーニングを実施し、特定の神経細胞を可視化あるいは操作できるトランスジェニックフィッシュ系統を約100系統以上開発した。これらを活用して共同研究を推進した。 (2)ゼブラフィッシュ終脳の背側側方部の神経細胞でGal4を発現するトランスジェニックゼブラフィッシュを得ることに成功した。このトランスジェニックフィッシュ系統とUASの下流に神経毒素遺伝子をもつトランスジェニックフィッシュをかけあわせ、二重トランスジェニックフィッシュを作製し、行動解析実験を行なった。 (3)エピソード記憶を必要とする『トレース』恐怖条件付けアッセイシステムの開発を行った。また、空間学習をアッセイするためのシステムを開発した。 (4)終脳の背側側方部の神経細胞でGal4を発現するトランスジェニックゼブラフィッシュとUASの下流に神経毒素遺伝子をもつトランスジェニックフィッシュをかけあわせて得た二重トランスジェニックフィッシュは、これらの学習アッセイシステムにおいて欠損を示した。すなわち、このGal4発現神経細胞群がエピソード記憶および空間学習を司っていることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の研究に成功したので、研究はおおむね順調に進展していると考えている。 (1)我々が独自に開発してきたトランスポゾンを用いた遺伝子トラップ法を用いてスクリーニングを実施し、特定の神経細胞を可視化あるいは操作できるトランスジェニックフィッシュ系統を約100系統以上開発した。 (2)ゼブラフィッシュ終脳の背側側方部の神経細胞でGal4を発現するトランスジェニックゼブラフィッシュを得ることに成功した。このトランスジェニックフィッシュ系統とUASの下流に神経毒素遺伝子をもつトランスジェニックフィッシュをかけあわせ、二重トランスジェニックフィッシュを作製し、行動解析実験を行なった。 (3)エピソード記憶を必要とする『トレース』恐怖条件付けアッセイシステムの開発を行った。また、空間学習をアッセイするためのシステムを開発した。 (4)終脳の背側側方部の神経細胞でGal4を発現するトランスジェニックゼブラフィッシュとUASの下流に神経毒素遺伝子をもつトランスジェニックフィッシュをかけあわせて得た二重トランスジェニックフィッシュは、これらの学習アッセイシステムにおいて欠損を示した。すなわち、このGal4発現神経細胞群がエピソード記憶および空間学習を司っていることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
(1)ゼブラフィッシュ終脳の背側側方部の神経細胞でGal4を発現するトランスジェニックゼブラフィッシュにおけるGal4発現神経細胞の形態学的解析を行い、神経ネットワークを明らかにする。 (2)ゼブラフィッシュ終脳の背側側方部の神経細胞でGal4を発現するトランスジェニックゼブラフィッシュにおけるGal4発現神経細胞の組織化学的解析を行い、神経細胞の種類を明らかにする。 (3)ゼブラフィッシュ終脳の背側側方部の神経細胞でGal4を発現するトランスジェニックゼブラフィッシュにおけるGal4発現神経細胞のRNA-seqによる分子生物学的解析を行い、その性質を明らかにする。
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