研究課題
基盤研究(B)
チラコイドは、光合成細菌(シアノバクテリア)と葉緑体が持つ扁平で円盤状の膜構造体である。ここが光合成明反応の場であり、チラコイド膜に内在する光化学系複合体の機能解明が進んでいる。チラコイド における膜形成は、内包膜からの小胞形成、あるいは内包膜と連結したコンタクトサイトの関与が顕微観察により提唱されているが、膜自体の発生や、分裂・傷害・修復による膜維持の詳細な分子機構は明らかでない。本研究では、分子構造が明らかになったVIPP1とその他の膜機能分子(リモデリング分子)に焦点を当て、膜の変形・融合・修復によりチラコイド膜の分化・恒常性を保ち、光合成を最適化する根本現象を明らかにする。
本研究では、チラコイド膜ホメオスタシスと光合成の環境適応を明らかにするため、最近機能が明らかになりつつある膜リモデリング分子VIPP1に着目した。VIPP1タンパク質の精製、また、VIPP1-GFPによるシロイヌナズナvipp1ノックアウト変異体の相補系により、VIPP1複合体形成と膜リモデリング活性の詳細な解析を行なった。葉緑体型HSP70がVIPP1と相互作用することも明らかにした。VIPP1のチラコイド膜リモデリング機能は、シアノバクテリアとシロイヌナズナではヌクレオチド結合部位などの違いがわかり、維管束植物におけるダイナミックなチラコイドホメオスタシスに適応した機能が明らかになった。
植物の環境適応には光合成機能の調節が重要であり、本研究が対象とするチラコイド膜ホメオスタシスは、光合成反応の足場を支える重要な生存戦略機構でもある。植物の光合成反応が変動する環境に適応して生存する生理作用の理解は、気候変動による温暖化と地球環境の保全、あるいは作物生産による食糧供給にも新たな技術開発につながる基盤研究である。
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