研究課題/領域番号 |
21H02524
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44050:動物生理化学、生理学および行動学関連
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研究機関 | 東京医科歯科大学 (2021, 2023) 東京大学 (2022) |
研究代表者 |
清水 貴美子 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, プロジェクト准教授 (50451828)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2023年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2022年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2021年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
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キーワード | 概日リズム / 遠隔記憶 / 空間記憶 / ニューロステロイド / SCOP / 海馬 / 前頭前皮質 |
研究開始時の研究の概要 |
哺乳類の高次脳機能と概日リズムとの連関は長い間示唆されてきたものの、そのメカニズムに関してはあまりわかっていない。研究代表者らは、マウスの空間学習の時刻によって、記憶を維持する能力 (遠隔記憶) に違いがあることを発見した。さらに、この機構には、申請者が発見した概日リズム出力因子 SCOPと、遠隔記憶形成能を持つ7位水酸化ニューロステロイドが関与していることも見出している。これらの事実を基盤に、本研究では、分子レベルから個体レベルまでの統合的な解析(標的分子同定、スパインリモデリング、遠隔記憶解析など)を行い、概日時計が遠隔記憶形成能をリズミックに制御する仕組みを明らかにする。
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研究実績の概要 |
7a-OH-Pregと 7a-OH-DHEA の合成酵素Cyp7b1 の欠損マウスとScop 欠損マウスはどちらも、空間学習はできるが記憶の長期維持能力がないという共通の表現型を示す。記憶の長期維持能力は、海馬や前頭前皮質の神経細胞の樹状突起スパインと関連があるため、Scop 欠損マウスとCyp7b1 欠損マウスの樹状突起スパイン密度の計測をおこなった。Cyp7b1欠損, Scop 欠損ともに海馬歯状回と前頭前皮質のスパイン密度の減少が観察され、Scop とCyp7b1 はともに、Spine 形成に関わる何らかのメカニズムに関与していると考えられた。 また、7a-OH-Pregと 7a-OH-DHEA は遠隔記憶を高める効果があるものの、その作用機序はわかっていない。作用機序の手がかりを得るために、Cyp7b1 欠損マウスの脳内に7a-OH-Preg/7a-OH-DHEA を投与し、海馬および前頭前皮質の RNAseq解析を行ない、WT, Cyp7b1 KO, 7a-OH-Preg/7a-OH-DHEA 投与Cyp7b1 KOの3者の比較を行った。その結果、神経変性疾患と関連のあるいくつかの遺伝子が浮かび上がった。 また、遠隔記憶の学習時刻による違いが、どの脳部位の時計によって制御されているかを明らかにするため、まずは、前脳特異的な概日時計破壊マウス(Bmal1 flox/Emx1-Cre mouse)を作成した。また、関与する脳部位をより限局するため、Cre発現AAV を脳局所(前頭前皮質、海馬)に投与するためのウイルス作成、投与位置決定、Cre発現check など、AAV による脳局所破壊の条件を整えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SCOP 欠損マウスとCyp7b1欠損マウスのスパイン計測、前脳特異的時計破壊マウスの作成、局所脳部位のSCOP等破壊のためのAAV作成や投与条件の設定、ステロイド投与後のCyp7b1欠損マウスを使ったRNAseq など、予定していた研究は全て実施完了できた。
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今後の研究の推進方策 |
Scop とCyp7b1 はともに、Spine 形成に繋がる何らかのメカニズムに関与していると考えられたため、その接点を探るため、Cyp7b1 欠損マウスにおけるScopやその下流分子の変化を検討する。また、RNAseq の結果からいくつかの神経変性疾患関連分子が得られたが、今後さらに、それらの分子が実際にどのように変化しているのか、あるいは海馬と前頭前皮質での応答の違いや共通点などについて詳細な検討および確認を行う必要がある。さらに、作成した前脳特異的な概日時計破壊マウスを用いて、空間記憶の長期維持能力を測定する。また、Cre発現AAVを用いて前頭前皮質特異的に Bmal1やScop を破壊し、記憶維持能力の測定をおこなう。総合的に、Scopとニューロステロイドが関わる遠隔記憶のメカニズムを明らかにしていく。 現在までに、受容体の同定に繋がる情報が得られていないため、7a-OH-Pregと 7a-OH-DHEAを固相化したカラムを作成して脳抽出物より結合するものを単離するなど、7a-OH-Pregと 7a-OH-DHEA の受容体同定に向けて新たな方法を検討する。
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