研究課題/領域番号 |
21H02550
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45030:多様性生物学および分類学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
鈴木 智也 京都大学, 地球環境学堂, 特定研究員 (30739503)
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研究分担者 |
大庭 伸也 長崎大学, 教育学部, 准教授 (20638481)
東城 幸治 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (30377618)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2023年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2021年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
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キーワード | 昆虫 / 繁殖戦略 / 父育 / コオイムシ / 進化 / Paternal care |
研究開始時の研究の概要 |
父親が単独で仔育てをする行動は「父育」と呼ばれる。父育行動が進化し得る背景として、「父育は世話のコストが掛かる一方で、確実に自身の仔を育てることで適応度が高まる」というトレードオフの関係が考えられてきた。しかし、研究代表者がコオイムシ類の父性を検証したところ、定説に反して父性が低いことが確認された。そこで本研究は、コオイムシ類を対象に、①野外集団での父性検証、②行動遺伝学的アプローチ、③次世代シーケンサーを駆使した父育に関するオスの行動決定遺伝子探索を実施することで、父育システムを遺伝子レベルで解明し、これまで考えられてきた動物の父育進化・維持機構の定説を覆す、重要かつ新規的な知見を提供する。
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研究実績の概要 |
DNAは生物の設計図であり、個々の生物にとってDNAを次世代に受け渡すことは最も重要な生命の根源的な役割であると言える。多様な繁殖戦略の中でも「子育て行動」は直接的に仔の世話を行うことで適応度を高める行動であり、とくに少産の動物種群で進化してきた。子育て行動を行うのは多くの場合がメスのみであり、また、オスが子育てに参加する場合であっても、メスとの共同作業であるケースがほとんどである。これは、オスとメスでは配偶子形成に掛かるコストに差があり、オスの方が圧倒的に低コストで大量の配偶子 (精子) を形成することができるため、多くの場合において、オスは仔の世話に投資するよりも出来るだけ多くのメスと交尾するための投資をする方が適応的であるためだと考えられている。しかし、そのような状況下であってもオス単独での子育て行動が進化した分類群もあり、この行動は「父育」と呼ばれている。本研究では、父育を行う昆虫・コオイムシを材料にして父親が単独で仔育てを行う特殊な亜社会性システムの進化・維持機構を追究する。 研究代表者らは、コオイムシの「オスによる托卵行動」という極めて興味深い現象を発見し、この成果については論文を投稿している。また、コオイムシ類はメスがオスの背に産卵するため、産卵場所を巡るメス間競争が生じると考えられる。これについても飼育・行動実験で追究したところ、近縁種であるコオイムシとオオコオイムシの間でもメス間競争の激しさに差異があり、オオコオイムシでより激しいメス間競争が生じていることが明らかとなった。これは、オオコオイムシのオスは背中のスペースに余裕があっても追加産卵をさせない一方で、コオイムシのオスは背中のスペースがなくなるまで産卵させるという行動の違いに起因すると考えられる。この結果についても既に投稿論文の準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画2年目は、コオイムシの「オスの托卵行動」についてハイインパクト・ジャーナルでの掲載を目指して投稿を行った。まだ原稿の受理までは到達できていないものの、原稿のブラッシュアップも行いながら着実に原稿の受理に近づいている。また、原稿投稿作業と並行してメス間競争の種間差についても明らかにした。同じ父育 Paternal care 行動でも種間でオスの行動パターンが異なるため、オスの背中という限られた産卵場所を巡るメス間競争の激しさにも差異が生じるという興味深いデータが得られている。本研究成果についても、現在、論文投稿の準備を進めており、順調に成果を挙げることができている。また、昨年度も進めていたコオイムシのゲノム解読については、韓国の研究者と協力しながらアノテーション作業を進めている。アノテーション作業が完了し次第、父育行動に関連する遺伝子の発現解析なども着手できるようになると考えている。さらに、日本列島に生息しており、種間で父育行動に差異があるコオイムシとオオコオイムシについて、その種分化起源を探るためにゲノムワイドな一塩基多型による系統解析も実施した。その結果、コオイムシでは日本列島系統と大陸系統間でミトコンドリアDNAの浸透が生じた可能性が考えられるデータが得られ、当初の計画の成果を挙げながらプラスアルファの成果も挙げることができている。以上のことから、本研究課題は当初の計画以上に進展しているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、コオイムシのゲノム解読・アノテーション作業を実施するとともに、コオイムシ類の雌雄の行動解析および遺伝子発現解析を実施していく予定である。また、コオイムシ類の父育行動進化を探る上で重要となるタガメ類のゲノム解読や行動解析・集団構造解析にも着手する。
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