研究課題
基盤研究(B)
平行進化が短期間に起こる場合,新しい環境での適応に既存変異が利用されることがある.本仮説が成立するには不適合環境においても変異が維持されねばならないが,その維持メカニズムに関する実証研究は乏しい.日本には植物の生育阻害を起こす蛇紋岩土壌が島状に分布し,キク科アキノキリンソウはこの特殊土壌に繰り返し適応している.本研究では,まず蛇紋岩型と一般型のゲノム分析を行うことで土壌適応に関わる変異を特定し,離れた蛇紋岩地で同じ変異が適応に関与しているかを調査する.平行選択されている変異について,一般土壌地における分布を調査することで,本種が新規環境に出会った際の潜在的な適応力を解明する.
本研究では,地理的に離れたストレス土壌における植物の平行適応メカニズムを解明することを目的とした.国内5地域で,蛇紋岩地と一般土壌地に生育する集団ペアの全ゲノム解読を行い,土壌型間で顕著な分化を示す遺伝子を抽出した.抽出された適応候補遺伝子の約90%は地域特異的な分化を示したが,547遺伝子は2地域,41遺伝子は3地域,3遺伝子は4地域で共通して分化していた.共通分化遺伝子には陽イオン輸送に関わる遺伝子が多く含まれ,機能面からしても蛇紋岩地で平行選択されたと考えられる.これにより対象種で起きた蛇紋岩地への平行適応では,祖先集団が保持していた適応変異が一翼を担った可能性が示唆された.
本研究では,野生植物の平行的な環境適応をゲノムレベルで分析した結果,約10%の適応候補遺伝子が複数回の土壌適応に関与していることが明らかになった.生物はしばしば高ストレス環境に短期間で適応することがあるが,本研究では,こうした迅速な適応を可能にする進化的機構として,適応変異の再利用が重要な役割を果たした可能性を示すことができた。本研究で得られた成果は,変動する野外環境に生物がどのように適応するかを予測するのに役立つと考えられる.
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