研究課題/領域番号 |
21H02572
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45050:自然人類学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
古市 剛史 京都大学, 野生動物研究センター, 教授 (20212194)
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研究分担者 |
戸田 和弥 総合研究大学院大学, 統合進化科学研究センター, 日本学術振興会特別研究員(PD) (20881931)
橋本 千絵 京都大学, 野生動物研究センター, 助教 (40379011)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2022年度: 7,670千円 (直接経費: 5,900千円、間接経費: 1,770千円)
2021年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
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キーワード | ボノボ / 集団間移籍 / 身体的発達 / 性的発達 / メスの集団間移籍 / チンパンジー / bonobo / Pan paniscus / female dispersal / development / sexual maturity / chimpanzee / Wamba / Luo Reserve |
研究開始時の研究の概要 |
集団で生活する哺乳類では、近親交配の回避や繁殖成功の追求のため、雌雄のいずれかあるいは双方が出自集団を離れて他集団へ移籍する。移籍の過程で生存や繁殖にかかわる様々なコストを被るため、ほとんどの種で妊娠・出産・育児を担うメスが出自集団にとどまり、母系集団が形成される。ところが霊長類にはメスが集団間を移籍する種も多く、とくにクモザル亜科とヒト亜科では、全ての種でメスが移籍する父系集団が形成されている。本研究では、父系集団を形成しながらもメスの移籍年齢が大きく異なるチンパンジーとボノボを対象に、メスの身体的・性的発達を比較し、メスの移籍に関わる至近要因とその背景にある適応的意義を解明する。
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研究実績の概要 |
コンゴ民主共和国ルオー学術保護区に生息する14頭の野生ボノボのメスを対象に、性的受容性の指標となる性皮(小陰唇と肛門周囲)の腫脹の程度、成熟したオスとの交尾行動、集団間移籍の時期を記録するとともに、収集した尿サンプルを用いて性ホルモン(E1CおよびPdG)の濃度を測定した。ボノボのメスは、出自集団からの移出が近づくと、性皮の腫脹を示しはじめた。尿中E1C濃度と交尾の頻度は、移出前にわずかに増加し、他集団への移入後に大きく増加した。性ホルモンの動態から推定される排卵または妊娠の兆候は、移籍後1~2年まで検出されなかった。これらの結果は、ボノボのメスが排卵サイクルが確立する前の思春期の早い段階で集団を移籍することを示す。チンパンジーに比べても早い時期におけるボノボのメスの移籍は、ボノボでは集団間の出会いが平和的で若いメスの移籍が容易なこと、移籍先で年長のメスからの攻撃を受けることが少ないことなどに起因すると考えられた。このように早い時期に移籍することで、新しい集団に慣れるまで生殖に関わるエネルギーコストを低減したり、定着する前に複数の集団を渡り歩いて将来的な繁殖に適した集団を見つける時間を稼ぐことができる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
すでに収集していたデータや試料を分析することで論文出版は順調に進んだが、新型コロナ感染症の流行により、2021年度の野外調査が実施できなかったため、当初の計画はやや後れている。
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今後の研究の推進方策 |
予算を繰り越して、2022年度に野外調査を開始した。現在まで順調に行動観察と試料収集が進んでいる。
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