研究課題
基盤研究(B)
樹状突起基幹部から樹状突起棘(スパイン)への移行部の細胞膜直下に集積するセプチン集合体には、膜蛋白質の拡散障壁として上記2領域を区画化する機能が提唱されてきたが、生理的意義は不明なままである。本研究では、「拡散障壁仮説」とは別に、独自の作業仮説を検証する。即ち、①「スパイン基部のセプチン集合体は、シナプス活動に応じてリン酸化で活性化されることにより、第2、第3の分子機能を有するサブユニットを遊離するデポとして機能する」 ②「遊離サブユニットはPSD凝集相をリモデリングする」 ③「遊離サブユニットはスパイン内アクトミオシン系と協調して滑面小胞体をスパイン内へと伸展させ、Ca2+反応を増強する」
SEPT7T426のリン酸化の生理的意義は不明であったが、膜局在におけるSEPT7 C末端12残基の必要性、SEPT7T426Dの脱局在傾向とSEPT7より高い可動性、膜局在と可動性のMYH10との類似を示すFRAPデータから、SEPT7は膜骨格のMYH10と会合し、神経過活動によるT426のリン酸化が膜骨格からの遊離シグナルとなるモデルが支持された。記憶のモデル系として電気刺激で過活動を誘発したマウス脳を3D電顕解析すると、スパイン近傍のER膜上のSEPT3とMYO5Aが増加した。野生型でみられた電気刺激によるER含有率の増加はSept3欠損型では認めなかったこともこのモデルを支持する。
本研究では、学習・記憶の基盤となるシナプス近傍の膜骨格のリモデリング機構の一端を明らかにした。過活動したシナプス近傍の小胞体膜上にSEPT3とMYO5Aが集積することは、「強いシナプス活動がSEPT3のリン酸化による遊離とMYO5Aの活性化を誘発し、両者がシナプス近傍のER膜上で会合してスパイン内へER を牽引する」という独自の作業仮説を支持する。本研究の結果に基づき、長期記憶のシナプス基盤と想定されるスパイン内ER伸展の分子メカニズムの解明と、他の長期記憶障害モデルにおいてもスパイン内ER伸展障害がみられるかの検証を進めている。
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Life Science Alliance
巻: 5(12) 号: 12 ページ: e202101205-e202101205
10.26508/lsa.202101205