研究課題/領域番号 |
21H02601
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47010:薬系化学および創薬科学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
徳山 英利 東北大学, 薬学研究科, 教授 (00282608)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2022年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2021年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
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キーワード | 全合成 / アルカロイド / 酸化反応 / 二量体 / フェノール / 鉄触媒 / 酸化 / 二量化 / カスケード反応 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、複雑な天然物の創薬における重要性が再認識されているが、合成の困難さのためその応用は進んでいない。それに対し、終盤に酸化的修飾を行う合成戦略: Late Stage Oxidative Functionalization (LSOF戦略)の有効性が提唱されている。しかし酸化に敏感なアルカロイドへの適用は未開拓である。本研究では、独自の酸化反応を含むLSOF戦略に基づいた、ディスコハブディン類の網羅的全合成、C-H酸化カスケード反応を鍵とするアトカミンの全合成、生体酵素模倣型鉄触媒を用いた天然・非天然二量体型アルカロイドの網羅的全合成、ユズリハアルカロイドの網羅的全合成、に取り組む。
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研究実績の概要 |
生体酵素模倣型鉄触媒を用いたLate-Sage Oxidative Functionalization (LSOF)戦略による天然・非天然二量体型アルカロイドの網羅的全合成については、既に確立したフェノール類の酸化的二量化をカルバゾールやスチレン単位を有するフェノールに適用し、対象となる基質一般性を拡張した。さらに、ディスペアトリンの収束的合成に取り組み、単量体となるスペアトリンの全炭素骨格の構築に成功した。 LSOF戦略によるユズリハアルカロイドのDivergent全合成については、多様なユズリハアルカロイドの中でも高度に縮環したかご状骨格を有しており、合成難易度の高いユズリミン型アルカロイド、ダフィヒマレニンBの合成研究を行なった。今年度は、ベンゼン環の酸化的脱芳香環を介した分子内Diels-Alder反応により、6,6,5,5員環が縮環した4環性骨格の立体選択的な構築に成功した。これにより、ユズリミン型アルカロイドのもつ高度に縮環したかご状骨格形成に向けて足がかりを築いた。 LSOF戦略による酸化的N、Sアセタール形成を鍵とするディスコハブディン類の網羅的全合成については、不斉補助基を利用したジアステレオ選択的N、Sアセタール形成反応について重点的に検討した。その結果、キラルなα-ヒドロキシ酸より合成した光学活性チオエステルを用いた際に、ジアステレオ選択性を中程度に向上させることに成功し、ディスコハブディンBの不斉全合成への足場を築いた。また、ディスコハブディンBをプラットフォームとした類縁化合物の全合成については、C1位へのマイケル付加を基盤としたカスケード環化反応開発し、ディスコハブディンHおよびKの全合成を達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生体酵素模倣型鉄触媒を用いたLSOF戦略による天然・非天然二量体型アルカロイドの網羅的全合成については、フェノール類の酸化的二量化の一般性の拡張に成功しており、また、別途行っていたモノマー合成にも目処が立っている。したがって、最終目的であるフェノール構造を有するアルカロイドの酸化的カップリングを最終段階で行うルート実現に向けて順調に進展していると考えられる。 LSOF戦略によるユズリハアルカロイドのDivergent全合成については、合成標的として取り上げたダフィヒマレニンBの主骨格の構築に向けて、endo/exo選択性や収率に未だ問題は残しているものの、筋道をつけることができている。 LSOF戦略による酸化的N、Sアセタール形成を鍵とするディスコハブディン類の網羅的全合成については、不斉補助基を利用した合成戦略が功を奏してジアステレオ選択性を向上させることに成功した。さらに、ディスコハブディンB誘導体のC1位へのマイケル付加を基盤としたカスケード環化反応を開発することでディスコハブディンHおよびKの全合成に達成したことは、天然から見出されている様々な類縁体の合成の可能性を開いたことであり、既に予備的な検討によりいくつかの類縁体の合成にも成功していることから、今後のさらなる進展が期待される。 以上のように、研究計画の実現に向けて様々な知見が明らかになっており、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
生体酵素模倣型鉄触媒を用いたLSOF戦略による天然・非天然二量体型アルカロイドの網羅的全合成については、本年度に引き続き、ディスペアトリンの収束的合成を行う。本年度確立した単量体ユニットの骨格構築法の最適化ならびに、その後の官能基変換を行い、スペアトリンの全合成を達成する。その後、既に確立したフェノール類の酸化的二量化を適用し、ディスペアトリンの収束的全合成を達成する。 LSOF戦略によるユズリハアルカロイドのDivergent全合成については、引き続きユズリミン型アルカロイド、ダフィヒマレニンBの合成研究に取り組む。本年度構築法を確立した6,6,5,5員環が縮環した4環性骨格に対し、環内にある二重結合を起点とした環拡大反応により、ユズリハアルカロイドの特徴的な7員環の構築を試みる。その後、渡環反応と官能基変換により、ダフィヒマレニンBの合成を目指す。 LSOF戦略による酸化的N、Sアセタール形成を鍵とするディスコハブディン類の網羅的全合成については、本年度に引き続き、不斉補助基を利用したジアステレオ選択的N、Sアセタール形成反応について検討し、ジアステレオ選択性の向上を目指す。また、ディスコハブディンBをプラットフォームとした類縁化合物の全合成については本年度開発した連続環化反応を基盤に、類縁体十種の全合成に取り組む。その後、触媒的チオラートアニオンの不斉1,4付加を検討しディスコハブディンAの全合成を、また、N,Sアセタールの活性化を起点とする含む連続環化反応の検討により、アトカミンの全合成を目指す。
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