研究課題/領域番号 |
21H02603
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47010:薬系化学および創薬科学関連
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研究機関 | 神戸学院大学 (2023) 金沢大学 (2021-2022) |
研究代表者 |
国嶋 崇隆 神戸学院大学, 薬学部, 教授 (10214975)
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研究分担者 |
藤田 光 金沢大学, 薬学系, 助教 (40782850)
松本 拓也 金沢大学, 薬学系, 助教 (40800214)
三代 憲司 金沢大学, 新学術創成研究機構, 准教授 (60776079)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2021年度: 7,410千円 (直接経費: 5,700千円、間接経費: 1,710千円)
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キーワード | カルボカチオン / 求核置換反応 / 官能基変換 |
研究開始時の研究の概要 |
本申請課題では、広くカルボカチオン種に対し可逆的で弱い配位能を有する化合物をテーラーメードに設計・合成し、これを用いて不安定なカルボカチオン種を擬似的な8電子状態の安定種(カルボカチオノイド)に一時的に変換することにより、その分解と発生を制御する。定量的に発生保存したカルボカチオノイドを用いて、不活性種を始めとする様々な求核剤との反応や不斉誘起など、従来の一分子求核置換反応では達成困難な反応を開発する。
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研究実績の概要 |
カルボカチオンは、その高い活性故に不活性化合物の化学変換という観点から極めて魅力的であるが、6電子状態に由来する不安定さが同時にその発生と反応の制御を困難にしており、有機化学の長い歴史の中で未だ広く実用化に至らない最大の原因となっている。そこで本課題では、カチオン種の発生、分解、反応を高度に制御し、従来の一分子求核置換反応では困難であった求核剤の利用や反応条件の適用を始めとする、新たな利用法の開拓を目指す。具体的には、可逆的で弱い結合を形成する化合物(カルボカチオン捕捉剤)や最適な脱離能を有する官能基を利用して、カルボカチオン種を擬似的/実質的な8電子状態(捕捉体や等価体等)として安定化させるための方法論を開発し、さらにその応用研究を推進する。 2年目となる本年度は、前年度に引き続き、以下(1)~(3)の三系統のカルボカチオン種に着目してその発生法、捕捉法/安定化法、並びに反応の検討を進展させた。 (1) アルキルカチオン種:いわゆる一分子求核置換反応の活性種であり、本課題の重要テーマと位置づけられる。カルボカチオン種に対する捕捉能は脱離能と密接に関連しているため、申請者らが以前に開発した高活性アルキル化剤の脱離基である含窒素複素環や関連化合物を中心に、対象とするカルボカチオンに最適な捕捉剤の探索・開発を継続している。今年度はさらに、本方法論を利用した新規官能基変換や立体選択的反応の開発に取り組んだ。 (2) アルケニルカチオン種:ビニル位炭素原子上に強い電子求引性の超原子価ヨウ素官能基を2つ持つアルケニリデンビスヨーダン類が、高活性アルケニルジカチオン等価体となることを期待し、その合成法について検討した。 (3) アリールカチオン種:トリアリールアミンを脱離基とするアリールカチオン発生の可能性を探るため、4つの芳香環が窒素に結合したアンモニウムの合成及びその反応を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要の項で述べた三系統のカルボカチオン種について、以下の研究を行った。 (1) 前年度に確立した方法論を利用し、塩基共存下における低反応性分子のアルキル化や、それを起点に誘起される連続反応を検討し、従来法では実現困難と考えられる官能基変換反応を見出した。さらに、不斉触媒により活性化された求核剤とプロキラルな第二級カルボカチオン種との反応を検討した結果、有意な立体選択性の発現が認められた。また、捕捉されたカルボカチオンを含む溶液の分光分析により反応機構に関する知見を得た。捕捉剤として有用な含窒素複素環に関しては、電子的効果によりその捕捉能を高度に制御するべく、本骨格への効率的な置換基導入を可能にする新規合成法を開発し、その成果を学会で報告した。また、含窒素複素環の脱離能制御研究を応用展開させる中で見出された新規反応剤や新反応についても学会発表を行った。 (2) 前年度に続きアルケニルヨーダン合成法の開発の一環として、アルケニルジカチオン等価体とみなし得るビスヨーダン類の合成法を新たに見出し、その成果を学会にて発表した。さらにこのヨーダンは、高活性でありながら求核剤による置換反応が逐次的に進行しうることを見出した。 (3) トリアリールアミンは、立体的及び電子的影響により極めて低い塩基性を示すため、高活性脱離基として用いればアリールカチオン種をも生成できる可能性がある。そこで、構造的に最も単純なテトラフェニルアンモニウムを合成しその性質を調べたところ、予想外に高い熱的・化学的安定性を示すことが明らかとなった。本化合物は構造的新規性が非常に高く、合成法開拓や反応性解明を行うこと自体の意義も大きいため、本成果の学会及び論文発表を行った。 以上のとおり、当初の研究目的に沿った成果に加え、関連する新たなテーマへの派生的展開にも成功しているため、総合的に判断して順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は順調に進展しているため、当初の計画については大きな変更をすることなく、今後も予定通りに推進する。2023年度は最終年度であることから、得られた研究成果をまとめ上げ、学会報告及び論文発表を行う。アルキルカチオン種に関しては、従来の一分子求核置換反応における制約を克服しカルボカチオンの合成的有用性を引き上げるべく、本方法論を応用した新反応の開発をさらに進展させる。特に、ひずみを有する環状化合物のアルキル化的開環を伴う多官能基化反応や、第二級カルボカチオンを用いたジアステレオ及びエナンチオ選択的アルキル化反応の開発を重点的に推し進める。後者の反応開発では、不斉触媒による求核剤の活性化に加え、捕捉剤へのキラリティー導入により不斉を誘起する新たな戦略も検討する。 ビスヨーダンのアルケニルジカチオン等価体としての有用性を示すため、2つの超原子価ヨウ素基を順次立体選択的に置換する反応条件の探索を継続する。この際、求核剤に対するビスヨーダンの反応に対して、超原子価ヨウ素基のビシナル位の置換基による影響が示唆されているため、当該置換基の電子的・立体的効果の解明と反応制御についても検討する。 テトラアリールアンモニウムはその構造上多様な置換パターンを想定できることから、電子的・立体的効果による反応性の制御が可能と考えられるため、アリールカチオン種を発生し得る分子構造及び反応条件について探索研究を継続する。
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