研究課題/領域番号 |
21H02632
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47040:薬理学関連
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
新田 淳美 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 教授 (20275093)
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研究分担者 |
國井 泰人 東北大学, 災害科学国際研究所, 准教授 (00511651)
有岡 祐子 名古屋大学, 医学部附属病院, 特任講師 (10709497)
望月 貴年 富山大学, 学術研究部教育研究推進系, 教授 (40263933)
高雄 啓三 富山大学, 学術研究部医学系, 教授 (80420397)
浅野 昂志 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 助教 (00884751)
泉尾 直孝 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 助教 (50722261)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2022年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2021年度: 6,630千円 (直接経費: 5,100千円、間接経費: 1,530千円)
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キーワード | 双極性障害 / 躁うつ状態 / 脳波 / 睡眠 / マウス / モデルマウス / 睡眠障害 / 躁うつ / GWAS / 躁状態 / うつ状態 / 動物モデル / うつ / 躁 / iPS / 死後脳 |
研究開始時の研究の概要 |
双極性障害は、原因が不明で、モデル動物が存在せず、新規治療薬の上市も世界的に長年行われていない。発症初期は、うつ病と診断されることも多いが、病状の進行や抗うつ薬の服用中に躁転をし、躁症状となり、衝動的に問題行動を起こし、借金や退職など取り返しのつかないことをし、自殺に結びつくことも多い。モデル動物の作成においても、うつから躁に転じる躁転の分子機構を解明することに重点を置く。双極性障害モデルマウス作成を目指し、躁転の分子機構の解明にチャレンジする。加えて、患者死後脳や患者由来のiPS細胞も利用して、GWASで見出された双極性障害と関連の深い分子群が精神疾患における機能分子であることも明らかにしたい。
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研究実績の概要 |
双極性障害は、躁とうつを繰り返す疾病であり、自殺率も高く、完治も困難である。また、躁転のメカニズムも解明されていない。治療薬の開発が進まない理由として、1個体の中で、躁とうつを繰り返すモデルマウスが確立されていないことがある。大規模遺伝子解析において、双極性障害患者で見出され、他の精神疾患では報告されていない関連変異が存在する遺伝子として、ODZ4がある。ODZ4がコードしているタンパク質はTenm-4である。しかしながら、Tenm-4の生理機能、特に精神神経疾患との関連については、ほとんど分かっていない。そこで、我々は、Tenm-4を脳の特定部位で減少させるマウスの作成を行った。RT-PCR法やウエスタンブロット法で発現量の減少を確認している。また、各種行動実験を行い、1個体の中で、うつ状態と躁状態が表現されることを確認している。また、躁転が、同症の中で、最も深刻な問題であることから、どのような刺激を与えた時に、躁転するかを行動表現型と脳波実験の両面から明らかにすることを予定している。双極性患者の多くで睡眠障害の訴えがあるが、本マウスで脳波を測定したところ、レム睡眠やノンレム睡眠の時間に変化があることが確認されている。本マウスを用いて、双極性障害の治療薬の開発に繋げたいと考えている。また、患者由来のiPS細胞や双極性障害患者死後脳を用いた臨床研究も実施し、基礎研究と臨床研究の両面で、Tenm-4の生理機能を明らかにし、本研究の成果が新しい双極性治療薬の創生に繋がることを期待している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ODZ4の発現減少には、CRISPR-Cas9システムを利用した。AAVベクターへの組み込みを行いマウスの海馬や前頭前皮質への注入を行った。その結果、再現性よく、ODZ4のmRNA量やタンパク質量が脳の当該部位で減少したマウスが得られた。それらマウスを用いて、一連の行動実験を行ったところ、複数の試験方法で、うつ状態が観察された。さらに、2022年度には、脳波測定を行い、睡眠障害が観察されることを見出した。今後は、現在、臨床現場で双極性障害の治療に使用されている医薬品を本モデルマウスへ投与し、これらの表現型への影響を確認したいと考えている。 2022年度は、所属機関の動物実験施設の耐震改修工事があり、脳波測定の実験への環境条件を整えることに時間を要したが、おおむね順調に進展させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
双極性障害モデルマウスの作成がほぼ完了し、表面妥当性(face validity)の結果は得られている。構成妥当性 (construct validity) については、双極性障害の原因が分っていない現状では、基礎実験での追求は困難である。そこで、今後は、予測妥当性 (predictive validity) を追求する予定である。双極性障害の治療薬で、現在、観察されている表現形が抑制されるかの検討を行う。また、本マウスを用いて、躁転のメカニズム解明を行うために、躁転が再現性良く、観察される条件を検討する。さらには、睡眠障害も示されていることから、躁転と睡眠障害のメカニズムについても解明していくつもりである。
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