研究課題/領域番号 |
21H02665
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分48020:生理学関連
|
研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
福原 茂朋 日本医科大学, 大学院医学研究科, 大学院教授 (70332880)
|
研究分担者 |
寺井 健太 京都大学, 医学研究科, 准教授 (20616073)
高野 晴子 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 上級研究員 (40532891)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2022年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2021年度: 6,630千円 (直接経費: 5,100千円、間接経費: 1,530千円)
|
キーワード | 血管透過性 / 血流 / 急性呼吸窮迫症候群 / 低分子量Gタンパク質Rap1 / 腫瘍血管 |
研究開始時の研究の概要 |
血管の内腔でシートを形成する内皮細胞は、Vascular endothelial-cadherinを介した細胞間接着を巧みに調節することで、血管透過性をダイナミックかつ厳密に制御しており、その破綻は様々な疾患の病態と密接に関連する。本研究では、我々が血管透過性制御の鍵分子である可能性を見出してきた低分子量Gタンパク質Rap1に着目し、Rap1が内皮細胞間接着および血管透過性を制御する分子機構を解明する。また、Rap1を基軸とした血管透過性制御機構が、急性呼吸窮迫症候群や癌において如何に変容し、血管透過性の過剰な亢進をもたらすのか解明する。
|
研究実績の概要 |
本研究では、低分子量Gタンパク質Rap1がVE-cadherinを介した内皮細胞間接着を増強し、血管透過性を低下させる機構を解明することを目的としている。本年度は以下の研究成果を得た。 これまでにin vitro実験から、ヒト肺動脈血管内皮細胞(HPAEC)に流れずり応力を負荷すると収縮性アクチン繊維ストレスファイバーが消失し、その一方で、細胞間接着部位に沿ったアクチン繊維束が形成されることで、VE-cadherin接着が増強することを示した。本年度は、siRNAを用いたRAP1遺伝子のノックダウンおよびEPAC阻害剤処理が流れずり応力によるアクチン細胞骨格の再編・VE-cadherin接着増強を阻害することを示した。また、血管透過性測定系を独自に開発し、流れずり応力が血管透過性を低下させること、FRETプローブを用いた蛍光ライブイメージング実験から、流れずり応力がサイクリックAMP(cAMP)産生、Rap1活性化を誘導することを示した。さらに、Pdgfb-iCreマウス、Gs floxedマウスを用いて血管内皮細胞のみでGsを欠損させると、肺および心臓における血管透過性が亢進することを示した。以上から、流れずり応力-Gs-cAMP-Epac1経路がRap1を活性化し、血管透過性を制御していることが示唆された。 昨年度、内皮細胞のRap1シグナルを低下させたマウスでは、リポポリサッカライド(LPS)静脈投与による肺血管透過性亢進が劇的に亢進していることを発見し、Rap1シグナルが炎症による血管透過性亢進に対して保護的に働いていることを示した。本年度、Epac1活性化剤である007の静脈投与が、LPS誘導性肺障害における肺血管の透過性亢進を優位に抑制することを見出し、Rap1シグナルが急性呼吸窮迫症候群など肺血管透過性亢進を伴う疾患の治療標的となる可能性を示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、生体内の血管透過性制御におけるRap1の機能に関する論文を作成し、投稿することができた(現在、投稿中)。また、Rap1による肺血管透過性制御の上流シグナルとして流れずり応力に着目し、流れずり応力-Gs-cAMP-Epac1経路がRap1を活性化し、血管透過性を制御していることを示唆することができた。また、Epac1活性化剤の静脈投与によるRap1シグナル活性化が、肺障害に伴う肺血管透過性亢進を抑えることを明らかにし、Rap1シグナルが急性呼吸窮迫症候群などの肺血管透過性亢進を伴う疾患の治療標的となることを示すことができた。「腫瘍血管ではVEGFが血流によるcAMPシグナルを抑えることで、Rap1を抑制し血管透過性を亢進する」との仮説の検証については、in vitro実験系の確立に取り組んだ。以上を総合的に考え、「おおむね順調に進展している」との自己評価にした。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、現在投稿中の生体内の血管透過性制御におけるRap1の機能に関する論文の早期アクセプトを目指す。また、Rap1による肺血管透過性制御の上流シグナルに関するプロジェクトについては、残された実験をできるだけ早期に終わらせ、「血流による流れずり応力がGs-cAMP-Epac1経路を介してRap1を活性化し、正常組織の血管透過性を低い状態に維持している」との仮説を証明し、論文を作成、国際的学術誌に投稿する。また、これまでの研究から、Rap1による肺血管透過性制御の上流シグナルとして、呼吸に伴うメカニカル刺激が関与している可能性を考えている。今後は、この可能性についても、実験により検証していく。さらに、炎症による血管透過性亢進とRap1シグナルとの関連、腫瘍血管の高い透過性亢進とRap1シグナルとの関連についても、in vitroおよびin vivo実験系を用いて解析していく。
|