研究課題/領域番号 |
21H02679
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分48040:医化学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
鍔田 武志 日本大学, 歯学部, 客員教授 (80197756)
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研究分担者 |
岩井 佳子 日本医科大学, 大学院医学研究科, 大学院教授 (90362467)
赤津 ちづる 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (60735984)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2022年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2021年度: 7,410千円 (直接経費: 5,700千円、間接経費: 1,710千円)
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キーワード | CD22 / シアル酸 / レクチン / B細胞 / LFA-1 / Siglec / シスリガンド / Glycocalyx / 細胞接着 |
研究開始時の研究の概要 |
細胞表面には特定の糖鎖を認識する種々のレクチンが存在し、同じ細胞の表面に発現する糖鎖修飾された種々の膜分子(シスリガンド)と結合することで、レクチンを起点とする分子ネットワークを形成するものと想定されるが、その実体はほとんど不明である。我々は、Proximity labeling法により、Bリンパ球(B細胞)に主に発現し、α2,6シアル酸を特異的に認識するレクチンCD22のシスリガンドを網羅的に同定することに成功した。そこで、本研究では、CD22がこれら新規CD22シスリガンドを糖鎖依存的に制御するか、さらにこの制御が重要な生命機能を担うかを明らかにする。
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研究実績の概要 |
CD22は主にBリンパ球に発現する抑制性の受容体で、細胞外領域でα2,6シアル酸を特異的に認識するレクチンである。我々は、Proximity labeling法を用いてCD22のシスリガンドを網羅的に同定し、これまでにシスリガンドであることが示唆されていたIgM, CD45,CD22の他にLFA-1を新規のシスリガンドとして同定した。LFA-1は細胞の接着や移動に関わり、チロシンキナーゼであるFAKはLFA-1を介するシグナル伝達で重要な役割を果たす。本研究では、CD22が新規シスリガンドであるLFA-1の機能を制御するか、さらにその制御が重要な生命機能を担うかを明らかにする。昨年度は、CD22がシアル酸を介してLFA-1と会合することで、LFA-1と会合するチロシンキナーゼFAKの活性を抑制し、FAKによって制御されるB細胞の進展を負に制御することを明らかにした。本年度は、CD22およびα2,6シアル酸によるLFA-1を介した細胞接着の制御の解明を行なった。まず、B細胞の接着をフローサイトメトリーで解析したところ、CD22欠損B細胞およびα2,6シアル酸の合成に必須のシアル酸転移酵素ST6Gal1を欠損するB細胞で共にB細胞どうしの接着が顕著に減弱していることが明らかとなった。次いで、Static adhesion assayによる解析を行なったところ、CD22欠損B細胞およびST6Gal1欠損B細胞の両方でLFA-1を介したB細胞の接着が顕著に減弱していることが明らかとなった。これらの結果は、CD22がLFA-1をシスリガンドとして認識することで、LFA-1の接着活性が増強することを示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、我々がCD22の新規のシスリガンドとして同定したLFA-1 の機能がCD22によっ本研究では、我々がCD22の新規のシスリガンドとして同定したLFA-1 の機能がCD22によってシアル酸依存的に制御されるか、制御される場合には、そのメカニズムやその生命機能を明らかにすることを目的とする。CD22はチロシンホスファターゼSHP-1を活性化することで、B細胞の活性化を負に制御することが明らかにされているが、本研究によりCD22およびα2,6シアル酸がLFA-1の中心的な機能である細胞接着に必要であることが明らかとなった。この結果から、CD22がLFA-1をシスリガンドとして認識することがLFA-1を介した細胞接着に関与することが強く示唆される。今回の我々の研究成果から、CD22がLFA-1をシスリガンドとして認識し、同じ細胞上で会合することでLFA-1の機能を制御するという生命現象の存在が確実となった。これまでCD22が他の細胞上のCD22とhomotypicな結合をすることで細胞接着に関わることが示唆されていたが、CD22のリガンドとの反応のoff-rateは極めて早く半減期が0.04秒とされており、CD22そのものが接着分子として機能することには疑問もあった。今回の我々の結果により、これまで知られていたCD22による細胞接着が、CD22の直接的な作用によるものよりは、むしろLFA-1の活性化によることが示唆され、これまでの謎が解けたものと考えられる。したがって、本研究の進捗状況は概ね順調と判断される。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究でCD22がLFA-1をシスリガンドとして認識し、同じ細胞上で会合することでLFA-1の機能を制御するという生命現象の存在が明らかになった。昨年度はLFA-1を介した細胞伸展をCD22とα2,6シアル酸がおそらくFAKの活性化を抑制することで負に制御することを明らかにし、今年度は、CD22とα2,6シアル酸がLFA-1を介した細胞接着を誘導することを明らかにした。したがって、CD22がLFA-1をシスリガンドとして認識することでLFA-1の活性を負または正に制御することが明らかとなった。今後は、CD22がどのようなメカニズムである場合にはLFA-1の機能を増強し、ある場合には抑制するのかを明らかにする。そのために、SHP-1の阻害剤を用いたり、あるいはSHP-1のdominant negative 変異体をB細胞に発現させることで、CD22がLFA-1の機能を増強する際にSHP-1を介するかについて明らかにし、さらに、チロシンリン酸化依存的にLFA-1の活性を抑制することが知られているCrkLIIのリン酸化がCD22のLFA-1認識により制御されるかを明らかにする。さらに、CD22によるLFA-1の制御がどのような生命機能の制御に関わるかを明らかにする。CD22はシアル酸依存的にB細胞の増殖を制御することが知られている。そこで、LFA-1のアゴニスト抗体やアンタゴニスト抗体、さらにLFA-1欠損マウスB細胞を用いてB細胞の増殖制御でのLFA-1の役割を明らかにし、CD22によるB細胞増殖制御にLFA-1がCD22のシスリガンドとして関わるかを明らかにする。
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