研究課題
基盤研究(B)
近年、複数のユビキチンリガーゼ(E3)や脱ユビキチン化酵素(DUB)が協調的に働くことで、分岐鎖や混合鎖など複雑なユビキチン鎖を生成し、多彩な生理機能を司ることが明らかになった。我々は、ユビキチンのN末端Met1を介する直鎖状ユビキチン鎖を生成するE3酵素(LUBAC)を発見し、LUBACが古典的NF-κBシグナル活性化を導くことを見出している。さらに最近我々は、2種のLUBAC結合性新規E3と、LUBACによるNF-κB活性化を顕著に抑制する1種のDUBを同定した。そこで本研究では、これら酵素間クロストークが炎症・免疫制御にどのように関わるか、分子細胞生物学解析やマウス個体レベルで解明する。
近年、ユビキチン修飾において複数のユビキチンリガーゼ(E3)が協働することで分岐鎖や混合鎖など複雑型ユビキチン鎖を生成することが明らかになり、複雑型ユビキチン鎖生成を介する細胞機能制御機構の解明が重要になってきた。我々は、ユビキチンのN末端を介する直鎖状ユビキチン鎖(M1鎖)を生成するLUBACを見出し、LUBACが炎症や免疫制御に重要なNF-κBシグナル経路を活性化することを突き止めた。さらに、LUBACはTNFシグナルの複合体Ⅰにおいて基質であるRIPK1のM1鎖修飾を介してIKKやNF-κBによる細胞死チェックポイントを活性化し、炎症応答による過剰な細胞死を防ぐとともに、複合体Ⅱやネクロソームに遷移したRIPK1もM1鎖修飾の標的とし、RIPK1依存的なアポトーシスやネクロプトーシスの抑制において極めて重要な役割を果たす。本研究で我々は、LUBAC協働性E3として同定したLAP1(LUBAC-associated protein 1)が、TNF刺激に応答してLUBACに強固に結合し、Lap1欠損MEFはRIPK3依存的にTNF誘導性アポトーシスに対し抵抗性を示す一方、ネクロプトーシスに対しては著明に脆弱性を示すことを見出した。また、LAP1はLUBACと協働して複数の連結型からなるユビキチン鎖をRIPK1に施し、ネクロソーム形成を抑制している可能性が示された。さらに、Lap1欠損マウスはネクロプトーシスが病態形成に関与する炎症性腸疾患や敗血症に高感受性を示すことから、LAP1が重要な生体防御因子として機能していることが明らかとなった。これらの結果から、LUBAC-LAP1軸が細胞の生存(NF-κBシグナル)と死(アポトーシス、ネクロプトーシス)の制御に重要な役割を果たすことが示された。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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