研究課題/領域番号 |
21H02706
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49020:人体病理学関連
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
黒田 雅彦 東京医科大学, 医学部, 主任教授 (80251304)
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研究分担者 |
梅津 知宏 東京医科大学, 医学部, 准教授 (40385547)
須藤 カツ子 東京医科大学, 医学部, 兼任講師 (50126091)
大野 慎一郎 東京医科大学, 医学部, 講師 (90513680)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2022年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2021年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
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キーワード | Docer1症候群 / miRNA / 肝腫瘍 / DICER1症候群 / 胆管癌 / 肝間葉性過誤腫 / miR-5p / miR-122 / Dicer1症候群 / lncRNA / non-coding RNA / miRNA-5p / miRNA-122 / DICER1 |
研究開始時の研究の概要 |
microRNA (miRNA) やlncRNAなどの、non-coding RNA (ncRNA) の異常は、がんをはじめとした様々な疾患の発生に深く関与する。これらのRNAを標的とする治療戦略は、次世代の医薬品として期待されている。しかし、単一のncRNAの解析は行われているものの、その制御異常と疾患のメカニズムは不明な点が多い。そこで、本研究は、DICER1症候群の発がんメカニズムを解明することで、ncRNAが関与する未知の腫瘍発生のメカニズムの解明を目指し、臨床応用につなげていく。
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研究実績の概要 |
本研究において、DICER1症候群の患者の遺伝子型を肝臓特異的に再現する遺伝子改変マウス(DICER1症候群モデルマウス)を作製した。このDICER1症候群モデルマウスは、肝臓において内在性の正常Dicer1を欠失し、RNaseⅢb ドメインにミスセンス変異を有する変異体Dicer1のみを発現する。これまでの研究から、変異体Dicer1を発現したマウスの肝臓において、過誤腫様の腫瘤形成から胆管癌および多発性肝嚢胞が認められた。これらの結果は、ヒトDICER1症候群に類似するものであり、本モデルの有用性が示された。一方で、変異体Dicer1が原因となるこれらの肝病変の分子メカニズムは不明であった。そこで、本年度は、肝臓特異的にヒトのDICER1症候群の遺伝子型を再現するDICER1症候群モデルマウスから肝臓を摘出し、肝臓のTotal RNAを用いて、次世代シーケンス解析を行った。その結果、DICER1症候群モデルマウスで発現が減少する遺伝子群として、胆管の発生に関与する一次繊毛関連遺伝子の減少が確認された。胎生期から小児期にかけての、胆管一次繊毛の発達障害が、DICER1症候群における肝病変の誘因となる可能性が示された。また、その中でも特にMapk15の発現が有意に低下していることが明らかとなった。この結果は、DICER1症候群の発生に関しての、初めての分子メカニズムの解明となり、治療法の選択肢が広がることとなる。今後は、Mapk15の発現減少のメカニズムの解析も行い、現在開発中のDICER1症候群におけるmiR-122の補充療法の研究開発も同時に行っていくことで、DICER1症候群の制圧を目指して行く。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、DICER1症候群のモデルマウスの作製と、その発症のメカニズムを解明することになる。令和4年度においては、DICER1症候群モデルマウスで発現が減少する遺伝子群として、胆管の発生に関与する、一次繊毛関連遺伝子の同定に成功した。腫瘍の発生段階で、これらの遺伝子発現に異常が観察され、嚢胞化に関与する可能性が示唆された。DICER1症候群の分子メカニズムのこの発見は、今後の治療開発に繋がることが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
今後は以下の3つの項目の研究を行う。 項目1:DICER1症候群の腫瘍モデルマウスの樹立 これまでは、ROSA26遺伝子領域にCAGプロモーターの下流でRNaseIIIbドメインが欠失したDICER1変異体をCre依存に発現するマウスとCre依存性に内在性DICER1遺伝子を欠失するマウス、さらに臓器特異的にCreを発現するマウスの3系統のマウスを交配し、モデルマウスを作製してきた。今後は、マウスの内在性DICER1のRNaseIIIbドメインを欠失したマウスの作製を行う。 項目2:ヒトDICER1症候群における胆管一次繊毛関連遺伝子の発現解析 これまでのDICER1症候群の腫瘍モデルマウスのRNA発現解析から、胆管の発生に関与する、一次繊毛関連遺伝子の発現低下が確認された。そこで、次年度は、これらの遺伝子の発現を、DICER1症候群の検体を用いて確認を行っていく。 項目3:マウスモデルにおける肝疾患に対するmiRNA補充療法の検討 DICER1変異の機能解析からは、RNaseIIIbドメインの欠失により、miRNA-5pタイプのmiRNAの発現低下及びループ構造を維持した異常なmiRNA-5p armが蓄積することが明らかになった。一方、ヒトおよびマウスの肝臓で発現するmiRNAを網羅的に解析すると、miR-122-5p等の一部のmiRNAの発現が突出して高い。このことから、miR-122の補充療法の検討を行う。具体的には、DICER1症候群で、成熟したmiRNAが発現できるようにmiRNA-5pとmiRNA-3pの位置を入れ替えたmiRNA前駆体を発現するアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを作製し検討を行っていく。また、アセロラエクソソームを用いた経口投与の系も開発していく。
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