研究課題
基盤研究(B)
本研究では、これまで独自に開発・応用してきた骨髄・関節の生体二光子励起イメージング技術と、新規に開発する破骨細胞の単離・オミクス解析技術を融合させ、病的な骨・関節破壊に関わる破骨細胞の分化機構・病態生理を解析して、骨・関節破壊の本質を分子レベルで明らかにするとともに、この病的な破骨細胞を標的とした薬剤の開発の実現を目指す。
破骨細胞は、単球系血液細胞から分化・成熟する多核巨細胞で、骨破壊を担う。生理的な環境下では「骨髄」にのみ存在し、骨形成を担う骨芽細胞と協調して働くことによって骨の恒常性維持に重要な役割を果たしている(骨リモデリング)。一方、関節炎などの病的状態では、関節を包む「滑膜」を主座とする慢性炎症が、骨表面の破骨細胞の形成を促し、関節周囲の骨破壊を惹起すると言われている。これまでの破骨細胞研究の多くは、固定した骨・関節組織を切り出して顕微鏡で観察していた。この方法でも、骨が壊されている部位に多数の破骨細胞が集まっている様子は観察されたが、骨髄と炎症滑膜の二つの異なる局在・微小環境で形成された破骨細胞がどのような機能的な違いを持つのかはよく分かっていない。本研究では、これまで独自に開発・応用してきた骨髄・関節の生体二光子励起イメージング技術を活用して、生理的な骨リモデリングに関わる破骨細胞と病的な骨・関節破壊に関わる破骨細胞の動態・機能を比較検討した。その結果、骨髄における生理的環境下では、「破骨細胞には機能的に異なる2種類の細胞が存在すること」、「破骨細胞が覆っている骨の一部だけを溶かしていること」が分かった。一方、炎症関節における環境下では、「破骨細胞が骨びらんを形成し、長時間骨を壊していること」、「破骨細胞が覆っている骨の全体を溶かしていること」が示された。さらに、独自の炎症滑膜の単離プロトコールを活用してシングルセル遺伝子発現解析を行った結果、病的な骨・関節破壊に関わる破骨細胞の分化を制御する因子を同定した。今後、生理的な破骨細胞には影響を与えずに病的な破骨細胞のみを特異的に抑える関節炎治療薬の開発を目指す。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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