研究課題/領域番号 |
21H02717
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49030:実験病理学関連
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
石田 靖雅 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (10221756)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2022年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2021年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
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キーワード | PD-1 / 自己免疫 / 肝炎 / 生理機能 / 肝臓 / 変異導入 / Msh2 / ゲノム変異 / neoantigen / autoimmunity / ミスマッチ修復 / 自己免疫病 / 自己-非自己識別 / 肉芽腫 |
研究開始時の研究の概要 |
PD-1は免疫応答を負に制御する。B6マウスでPD-1をノックアウト(KO)しても、生後1年以内の若いマウスに自己免疫病態が出現することはなく、生体でPD-1がどのような免疫応答を負に制御するのか、明らかではない。申請者は、若いPD-1 KOマウスに変異原ENUを投与した場合、その肝臓に多数の肉芽腫様リンパ球集簇巣が出現することを見出した。本研究では、PD-1 KOマウスの肝臓にそのような自己免疫性病態が出現するメカニズムを解明し、PD-1の生理機能に迫る。
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研究実績の概要 |
ENU は、マウスに投与した場合、精子形成細胞や正常体細胞のゲノムに点突然変異を引き起こす。令和3年度にも、生後2ヶ月の野生型 WT マウスと PD-1 KO マウス(ともに遺伝的背景は C57BL/6)を用意し、ENU の投与(85 mg/kg BW)を(1週間の間隔を空けて)二度行った。その後、ENU 投与マウスの主に肝臓に出現する炎症病変を観察し、リンパ球浸潤の程度や肉芽腫性病変の出現頻度が経時的に変化することを確認した。本研究では、DNA 複製後に働くミスマッチ修復(MMR)経路の遺伝子のうち、Msh2 遺伝子のKO マウスを利用して、PD-1 KO マウスの体細胞への変異導入を加速させた。具体的には、PD-1 & Msh2 のダブルノックアウト(DKO)マウスを作製し、肝臓をはじめとする複数の臓器に出現する自己免疫性の病変を病理学的、あるいは免疫組織化学的手法を用いて解析した。しかし、ENU 投与や Msh2 欠失の場合、マウスのゲノムに導入される変異はランダムであり、個々の体細胞ごとにパターンが異なるため、たとえ狙い通り PD-1 KO マウスに自己免疫病態が誘発されたとしても、その原因となった変異を、その他の無数の変異の中から割り出すことは非常に難しい。この問題点を部分的に克服するために、PD-1 KO マウスの肝臓において、既知の非自己タンパク質を発現させる実験も並行させるが、令和3年度には、その準備を開始した。実験手法としては、マウスの尾静脈から Sleeping Beauty (SB) トランスポゾン(外来遺伝子の発現ベクター)とその transposase (SB100X) 発現ベクターを共注入する HTVi 法を活用する。令和3年度には、マウス MHC クラス I 分子(H-2Kd & H-2Kb)を強制発現させるためのベクターを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度に、PD-1-/-, Msh2-/+ マウスが死亡してしまったが、これは想定外の出来事であった。現在でも、その原因は判明していない。この研究の遅れを取り戻すために、PD-1-/- マウスと Msh2-/+ マウス(Msh2 マウスは、ホモ接合体の状態では維持することができない)を交配し、まず、PD-1-/+, Msh2-/+ マウスを樹立した。次に、PD-1-/+, Msh2-/+ マウスと PD-1-/-, Msh2+/+ マウスを交配し、PD-1-/-, Msh2-/+ マウスを樹立した。そして最後のステップとして、PD-1-/-, Msh2-/+ マウス同士を交配し、PD-1-/-, Msh2-/- マウス(PD-1/Msh2 ダブルノックアウト -DKO- マウス)を獲得した。その PD-1/Msh2 DKO マウスには、肝臓をはじめとする複数の臓器に自己免疫性の異常が観察されるため、主に病理学的、あるいは免疫組織化学的手法を用いた解析を実施した。一方、PD-1-/-, Msh2-/+ マウスの維持のためには、PD-1-/-, Msh2+/+ マウスとの間で(バッククロスのような)交配を続けており、これまでのところ、同マウスの安定的な維持に成功している。つまり、令和3年度に PD-1-/-, Msh2-/+ マウスが死亡してしまったため、数ヶ月間の研究の遅れが生じたが、令和4年度のうちに、その遅れを取り戻すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度以降も、生後2ヶ月の野生型 WT マウスと PD-1 KO マウスを用意し、ENU の投与(85 mg/kg BW)を実施し、ENU 投与マウスの主に肝臓に出現する炎症病変を観察し、免疫学的・病理学的な解析を実施する。また、当該年度の研究期間中に、PD-1-/-, Msh2-/+ マウスを再度樹立することができたため、令和4年度以降も、PD-1-/-, Msh2-/+ マウス同士を交配することにより、PD-1-/-, Msh2-/- マウス(PD-1/Msh2 DKO マウス)を安定的に獲得し、そのマウスに現れる病態の免疫学的・病理学的な解析を継続する。令和4年度以降は、PD-1 KO マウスの肝臓において、既知の非自己タンパク質を発現させる実験を実際に稼働させる。実験手法としては、マウスの尾静脈から Sleeping Beauty (SB) トランスポゾン(外来遺伝子の発現ベクター)とその transposase (SB100X) 発現ベクターを共注入する HTVi 法を活用するが、まずは、マウス MHC クラス I 分子(H-2Kd & H-2Kb)と EGFP-2A-luciferase 分子(ポジティブコントロール)をマウスの肝臓で強制発現させる実験の成功率を上げるために、実験者(主に大学院生)のトレーニングを重点的に行う。
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